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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第3章 アーリアのダンジョンに挑もう

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第72話 防具を買いに行こう

 レザスさんはインスタントコーヒーを自分のカップに入れると、テーブルに置かれたヤカンからお湯を注ぐ。どうやら気に入ったようだ。


「このコーヒーはチョコレートとも合いそうだな」


 そう言われて僕はチョコレートを買い忘れていたことに気付いた。


「すみません。チョコレートは今回ちょっと手に入らなくて……。反応はどうでしたか?」


「ウチの開発部門で色々と弄ってみたが、意外と加工が難しい。熱すると溶けるのは溶けるが、焦げてしまう」


「ああ、それは湯煎という手法があるんですよ。お湯を張ったお椀の中に薄い金属製のお椀を浮かべて、その中にチョコレートを入れるんです。これなら焦がさずに溶かすことができます」


「そう言うことは先に教えてくれ。預かったチョコレートの大半をそれで無駄にしてしまった。1枚はエインフィル伯のところの料理人に預けたが、まだ反応は聞けていないな」


「次回はなんとか手に入れてきます」


「こんなところか? 今回も面白い商いだった。次回も楽しみにしているぞ」


「流石にびっくりさせるようなタマはもう無いですよ」


「ハッハッハ! 鏡が10枚も届いたらエインフィル伯は度肝を抜かすだろう。前回の鏡の装飾もまだできていないからな」


「まあ、ほどほどに上手く儲けてください」


「なに阿漕なことはしないさ。あの鏡にはその価値があるんだ。実際のところ、分解して構造が分かれば作れると思うか?」


「無色透明なガラスを作る技術が無いのでしょう?」


「職人はあの手この手を尽くしているが、今のところは空振りだな」


「ならそれまでの間はこの鏡の優位性は薄れませんよ」


「確かにそうだ。作れるようになったところで採算が取れるかどうか分からんしな」


 まあ実際のところ100円ショップの鏡には透明なプラスチックか何かが使われているだろうから、その解析はほとんど不可能だろう。再現となると尚のことだ。


「では精算しよう。鏡を売った販売額が金貨100枚、手数料の3割を引いて金貨70枚に、ボールペンを20本で銀貨10枚。今回の支払いは以上で間違いないな?」


 レザスさんが革袋から金貨をざらりと出して、後は机から銀貨10枚を足す。


 僕は慎重に金貨を数えていった。


「確かに、間違いありません」


 僕はリュックサックに金貨と銀貨を詰める。


「予定では7日後にまた来ます」


「ああ、楽しみにしている」


 コーヒーを飲みながらレザスさんが手を振る。僕らは席を立った。レザス商会を後にする。


「うーん、思ったよりも稼げちゃったな。僕の防具だけでも揃えるかな。メル、どう思う? おーい、メル?」


 隣を歩くメルはしかめっ面で僕の声に反応しない。僕はその肩に手を置いた。


「メル?」


「ひゃっ! あ、ひーくん。もう我慢しなくていい?」


「なにを?」


「びっくりするのをだよー!」


 と、メルは大声で叫ぶ。道行く人が何事だとこっちに目線を向ける。


「え? 今日私たちいくら稼いだの? 砂糖で金貨10枚、鏡で70枚、ボールペンで銀貨10枚だよね」


 慌ててひそひそ声になってメルが言う。


「合わせて金貨80枚と銀貨10枚だね。1人金貨40枚と銀貨5枚」


「さっき日本でちょっとお買い物してきたものを売っただけだよね」


「それを言われると僕もちょっと心苦しい」


 一歩間違えれば転売だと後ろ指を指されてもおかしくない。だけど少なくとも僕は商品を買い占めて不当に値上げをしているわけではない。過剰にある商品を、希少なところに持って行って、その差で儲けているだけだ。


「だけど基本的に値付けはレザス商会の人に任せているよ。彼らはそれだけの価値があると思ったから買ってるんだ」


「そっか、日本はなんでもあるけど、とても遠いんだよね。ひーくんのスキルがないと持って来れないんだもの。そういうものなのかな」


「そうだね。輸送費だと思ってありがたく頂いておこう。そこで僕は防具を買おうと思う。防具があれば4層で稼げるんじゃないかと思うんだ」


「んー、確かにそうかもね。私もそろそろ小型盾バックラーくらいは持つべきかなあ」


「そうしてくれると僕も安心してみていられるよ」


「まあ現物を見てからだね。行ってみよー!」


 武器や防具を買うには新品が欲しければ職人街、中古で良ければ冒険者ギルドの近くで店を探すのがいいらしい。僕らは現在位置から近い職人街にまずは向かうことにした。


「ジルさんの店は刃物専門なんだっけ?」


「ジルさんところは鍛冶屋さんだから、武器屋さんとはまた違うよ。武器をオーダーメイドしてもらうなら鍛冶屋に行ってもいいけど、基本的には武器屋さんで買うものだね」


「なるほど」


 ということは僕らは防具屋に向かえばいいというわけだ。


 防具屋は盾のマークの看板が出ていてすぐに分かった。とりあえず店内に入る。


「らっしゃい」


「あのー、初心者向きの防具を探しているんですけど、いいものありますか?」


「オタク、レベルはいくつ?」


「4です」


「それなら冒険者ギルドの近くに行ったほうがいいよ」


 若い女性の店員は商売っ気が無いのか、単に僕が客と見なされていないのか。後者寄りな気がする。


「防具は中古じゃなくて新品のほうが安全性能が高いと思うんですけど、違いますか?」


「そりゃあね。だけど値段も相応だよ。ウチでアンタ向けに防具を見繕ったら、ま、金貨10枚からというところかな」


 払えないでしょ? と声が聞こえてきそうだ。


 確かにレベル4の冒険者であればダンジョンの第3層がせいぜい。1日に稼げるのは銀貨5枚くらいだろうか。もっと少ないかも知れない。生活費もあるから、金貨10枚を貯めるのは難しい。というか、その間にもっとレベルが上がるだろう。普通に考えたら金貨10枚を払えないという見立ては正しい。


「武器も見たところ数打ちの安物でしょ。使い込み具合からして中古品。銀貨10枚くらいだったんじゃない?」


 態度は悪いが、目利きはできるようだ。確かにこのショートソードは中古で銀貨10枚だった。なるほど、武器からこちらの懐具合を探っていたんだな。だとしたら冷やかしだと思われても仕方ない。


「手持ちのお金で買えるものから揃えていきな。初心者は盾から買いがちだけど、部分鎧で急所を守ったほうがいい。男なら特に、ね。冒険者ギルドの近くの店なら中古品で銀貨10枚くらいで買えるのもあるはずさ」


 うーん、むしろこの人は良い人なのでは?

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