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GAMELIZATION ~ゲーマライゼーション~ 世界はゲームに変わり、僕は異世界へ行ける  作者: 二上たいら
第10章 抵抗は燃え上がる

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第655話 性犯罪は表に出にくい

 部屋に入ってきたメルを見て僕はホッとした。


 ニーナちゃんを応援に送ったものの、メルのパーティはそれまでたった四人の回復役(ヒーラー)無しで騎士団に立ち向かっていた。

 地球の道具を山盛り持たせてあったとは言え、遥かにレベルが高く数も多い相手と戦うのは非常に危険な行為だ。

 かと言って助っ人である緋美子さんたちに任せきりにするわけにもいかず、メルたちを危険だと知りながら戦いに送り出さなければならなかった。


 事実、メルの防具や衣服には多くの傷が刻まれている。

 ニーナちゃんが回復済みのようだけど、[回復(ヒール)]や[強制再生(リジェネレーション)]も万能ではない。

 ヴィーシャさんがそうだったように、古傷になってしまったものや、心の傷は治せないのだ。


「無事で良かった」


「ん~、これくらいで済んだらお得だよ」


 メルは自分の体を動かしながら検分して言う。


「ガチンコにやり合うことはほとんどなかったし、平気へっちゃら」


 とは言え、[地術]が使えるメルがこれだけ傷を負うということは、動きを捉えられていたということで、やはりレベル補正は大きいな。


「それでそっちの人がヴィーシャさんの?」


 メルがパトリックを見て首を傾げる。


「うん。生かして捕らえるとヴィーシャさんに約束した。彼女がどんな目に遭ったのかはっきりとはわからないけれど……」


 あの額への焼き印だけではないのだろう。

 それだけでヴィーシャさんが自死を選ぶとは思えない。

 つまりもっと深く尊厳を踏みにじられ、穢されたのだ。


「どーどー、ひーくん、敵意ヘイトが漏れすぎだよ。だいたいわかった。それじゃ、っと」


 メルはパトリックに腰から引き抜いた道具を向けた。

 一瞬だけ遅れて閃光が走る。


「うっ、これは!」


 携帯型のストロボライトだ。

 閃光音響手榴弾(フラッシュバン)と比べると効果は薄いけれど、バッテリーが残っている限り何度も使えるなど利点も多い。

 効果は薄いって言ったけれど、軍用品だからスマホについているフラッシュライトなんかとは比べものにならないよ。


 (まばゆ)い光に視力を奪われたパトリックは立っていることができずにその場に膝を突いた。


「はい。ひーくん、拘束して」


「僕も持っておくべきだったな。ストロボライト」


「いやー、騎士の人にはあんまりって感じだったし、何人もまとめてってできないし、あんまりかなあ」


「そっか」


 僕はBOLA WRAPのカートリッジを交換して、今度こそパトリックを拘束する。


「うわっ!」


 ケブラー繊維に絡め取られたパトリックはまだ目が見えていないようで、体勢を崩して床に転がった。


「さて、伯爵閣下、他にヴィーシャさんへの加害に加わった人はいませんか?」


「それは間接的な加害者も含むということかな?」


「直接的な加害者だけで結構です。ただしあなたは父親なので特別枠ですよ」


「そういう意味ではパトリック一人であろう。こやつは自分の楽しみを人に譲るような男ではないからな」


 うーん、縁を切ったとは言え実の子にこの物言い。

 そういうのも子どもの性格が歪んだ原因なんじゃないですかね?


「終わった、のか?」


 そこに駆けつけてきたのはセドリックさんだ。騎士団の人たちはお揃いの全身甲冑だから見分けがつかないんだけど、声でなんとか。

 メルが慌てて武器を構えるが、それを制する。


「彼はアルブレヒトさんと同じ……のようなもので、僕ら側に付いてくれた人だよ」


「副団長と俺の扱いの差に思うところがあるが、仕方あるまい。それよりもあの状態で放置していかないでくれよ」


 セドリックさんは閃光音響手榴弾(フラッシュバン)の影響が抜けてなかったから、惨劇の場と化した会食会場に置きっぱなしだったんだよね。


「待つ理由も特にありませんでしたし」


「なんか俺に当たり強くない?」


「エインフィル伯爵の子どもの一人なのでしょう? いきなり仲良くできるわけがないじゃないですか」


「それはそうだが、俺はあんたらの側に付いたんだ。それは忘れないでくれよ」


 まだ閃光音響手榴弾(フラッシュバン)の影響が残っているのか、扉があった場所で、壁に肩を預けながらセドリックさんは言う。


「恩を売るような言い方をされても困ります。あなたはあなたで益があると思ったから騎士団を裏切った。そうですよね」


「そこなんだよなあ。その二人、あんたはどうするつもりだい?」


 交渉の始まる臭いがした。

 セドリックさんは僕らに対してなにか自分の要求を通したいのだ。


被害者(ヴィーシャさん)の気持ち次第ですね」


「もし被害者が無罪放免を望んだら?」


「示談、ということですか」


 誰かの権利を侵害したことで訴えられた時に、裁判を待たずに金銭で解決を行う場合がある。

 いくら払いますから、訴えを取り下げてください。

 というこれを示談という。


「そういうことではない。俺は父上や、兄上のために示談金を用意するつもりはない」


 あ、違うんだ。


「そうではなく、被害者が加害者に罰を望まない場合だってあるだろ」


「可能性としてはありますね」


「その場合、そうでなくとも刑罰を与えた後の二人の身柄をどうするつもりなのか聞いておきたい。というか、こちらに引き渡してもらいたいんだ」


 あ、そういうことか。

 僕はヴィーシャさんの処刑装置としてこの場にいるけれど、エインフィル伯爵は王国へ叛乱を起こそうとしていたという罪が別にある。


 冒険者が王都に向けて急報に走っているし、エインフィル領はなんらかの回答を出さなければいけない。


「とりあえず王都に向けて叛乱は鎮圧されたと早馬を出したい。エインフィル領自体は存続させたいからな」


「独立は目指さないんですか?」


「冒険者ギルドを壊滅させてしまった上に、騎士団が壊滅したのなら、エインフィル領はルリュール王国の力を借りなければ結界装置の維持に支障をきたす。魔石の自力調達が難しくなるからな」


 エインフィル伯爵は下を向いたまま口を挟んでこない。


「こちらから注文できることではないとわかっているが、父の顔は損傷させずに残しておいてもらいたい」


「こっちのパトリック(ゴミ)はどうするんですか?」


「あんたらが無罪放免にしたとしても事故がおきることになる。そんなのでもエインフィル家の正当な後継者だからな」


 どちらにしてもこの二人は命を失うということか。


「わかりました。この二人はいったんこちらで保護しておいてもらえますか? 地下牢とかあるんでしょ。どうせ」


「あるのが当然みたいに言われても困るが、あるにはある」


 やっぱりあるんじゃないか。

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