第648話 僕がここに来た理由
ミニガンによる掃射は高レベルの騎士にもある意味では通用すると判明した。
行けるとは思っていたけれど、ちょっと賭けだったよね。
原理は単純だ。
化学的燃焼を利用した攻撃は極端にダメージが減衰されるのがこのゲームのルールだ。
簡単に言うと銃の類いではあまりダメージが与えられない。
だけどこのゲームは物理演算がしっかりとしている。
少なくともゲーム化前と後で物理法則が変わった、ということはない。
銃弾というものが持つエネルギーは高レベルの相手にダメージは与えられない。
けれど銃弾の持つエネルギー自体が消えてなくなるわけではない。
弾き返された弾丸が壁や窓、調度品を破壊したのがいい例だ。
しかしダメージを与えられないという制限があるため、本来であれば貫通するはずの銃弾が貫通せずに、そのエネルギーが全て衝撃として伝わることになるのでは?
と、僕はそう考えたのだ。
ミニガンの弾薬は7.62×51mm NATO弾だ。
その発射レートは極めて高く、毎秒百発にも及ぶ。
それだけの弾幕を衝撃として浴びたらどうなるか?
例えダメージを受けなかったとしても、その場に立っていられるはずがないのだ。
この騎士が立ったまま壁際まで下がったことですら、僕は敬意を表するよ。
普通なら後ろに倒れ込むもん。
つまり自衛隊や米軍など各国の軍隊がダンジョンを一般の探索者より早く攻略しているカラクリがこれだ。
銃器は浅い層のモンスター以外には役に立たない、と言われている。
しかも銃器でモンスターを倒しても経験値が入らないからね。
探索者は保険として銃を持つことはあるけれど、基本的には使わない。
だけど十分な威力のある火器はモンスター相手でもその動きを阻害したり、釘付けにするのに役に立つのだ。
2人目、3人目と銃弾の雨を降らせると、彼らは最初の騎士のように踏ん張ることができずに転倒した。
そこに僕に協力してくれた騎士が駆け込んで魔石式処刑斧を振り下ろす。
ボッ! と半密閉された中での魔石の爆発音がして、魔石式処刑斧の刃が騎士の体を両断し、床にまでめり込んだ。一方で破損した魔石式処刑斧の構造金属が爆発的に撒き散らされる。
上から下への攻撃だったため、広く室内にその熱された金属片が舞い散った。
魔石式処刑斧は魔石の爆発がレベルが高い者にもダメージを与えられると聞いて僕が考案した武器だ。
いわゆる炸薬で推進力を得る武器の、魔石バージョンということ。
斧の頭部分には魔石が仕込まれていて、斧を当てた衝撃で魔石が割れると、その爆発が斧に推進力を与えて、一気に相手を叩き切るという構造になっている。
急造なので武器自体が爆発の威力に耐えられず破損してしまうけど、元々仕込んだ魔石が失われたら、もう武器としては使えない設計のため、耐久性を今回は無視した。
まあ、結果的には金属片を爆発的に飛散させるショットガンみたいになってるけど。
僕は左手で持っていた魔石式処刑斧を騎士に投げ渡す。
彼も二度使える武器ではないとわかったのだろう。
速やかに魔石式処刑斧を持ち替えて、転倒したもう一人にトドメを刺した。
ちょうどそのタイミングでエインフィル伯爵を守っていた騎士団長のスキルが効果時間を終える。
僕はそちらにミニガンを向けて言った。
「ちょっとお話をしましょうか」
「ふざけるな! この狼藉者が! 自分が何に向かって盾突いたのかわかっているのか! 現時点でエインフィル伯爵閣下はルリュール王国の貴族だ。貴様はルリュール王国を敵に回したのだぞ!」
「いや、そうはならんやろ」
思わず素の関西弁が出てしまう。
なんで異界言語理解さんは関西弁まで翻訳できてしまうの?
「閣下はルリュール王国からの独立を目論んでおられるのであろう! であれば、私たちの行動はルリュール王国から責められる謂れはあるまいよ」
「まあ、正直僕はそんなことはどうでもいい。僕がここに来たのはエインフィル伯爵の叛乱を止めるためでも、ルリュール王国への忠義を示したかったからでもない」
別にルリュール王国に今後狙われることになっても構わないよ。
ただしその場合は徹底的に抵抗させてもらうけれど。
僕はエインフィル伯爵にミニガンを向ける。
「ヴィーシャさんをあそこまで傷つけたヤツらを生きたまま僕の前に引きずってこい。僕の望みはそれだけだ」
国とか、独立とか、そういうのは僕のいないところで勝手にやればいい。
ただ僕の仲間を傷つけたその礼はしなければならない。
心からの礼を、たっぷりと。




