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GAMELIZATION ~ゲーマライゼーション~ NPCの生存戦略  作者: 二上たいら
第10章 抵抗は燃え上がる

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第630話 【エリス】は合流する

 空の光とメルのお陰で誰にも見つからずにヴィクトルの隠し倉庫まで戻ってくることができた。

 符丁通りに扉を叩いて、鍵が開いたところで中に滑り込む。


 外が明るかったせいで倉庫の中はやたら暗く見える。

 そのうち慣れてくるだろうけどな。


「エリスさん、それは!」


 ロージアが珍しく戸惑った声をあげる。


「下手打っちまって騎士にやられたんだ。安心しろ。殴る蹴るだけだよ」


「すぐに回復しますね!」


 ニーナが[回復]魔法をかけてくれる。

 メルの[中回復]魔術でかなりマシにはなっていたが、やはり[回復]魔法のほうが効果が早くて高い。あっという間に痛みが引いた。


 エルセリーナが荷物の中から女物の服を持ってくる。


「男性陣は別のほうを向いててください!」


「あたしゃ気にしないが」


「気にしてくださいよ」


 というわけで防具を脱いで、ぼろ切れになった服を脱ぐと、エルセリーナが持ってきた服に着替える。

 いいんだけど、ちょっと体格差がありすぎてぴっちりしちゃってんな。

 上から防具を着けるから、まあいいか。


「似合ってねえ」


 シャノンがあたしを指差してプークスクスと笑っているが無視。

 正直、あの場にいたのがあたしじゃなくてシャノンだったらどうなっていただろうか。意味の無い仮定ではあるけれど、シャノンだったら死ぬまで抵抗して、メルが来る前に死んでいたんじゃないだろうか。

 だからあたしが行って正解だったな。


「えっと、この場をまとめているのは誰?」


 メルが聞いた。


「ロージアさんだな」


 ヴィクトルが言う。


「じゃあロージアさん、どうなっているのか教えて欲しいんだ。なにがどうしてこんなことになってるの?」


「それが私たちにもよくわかりません。ヴィーシャさんのパワーレベリングを20まで終えて、ダンジョンを出たところで騎士たちに待ち伏せをされていました。彼らはヴィーシャさんを連れて行くだけで、特に私たちをどうこうするつもりはないようでしたが、事が事ですのですぐにヴィクトルさんに連絡しに行ったんです」


 いくらか端折っているが、大体ロージアの説明通りだ。


「ヴィーシャがさらわれたのは、エインフィル伯に婚約破棄の件を伝えたからだと思う。首謀者はエインフィル伯ではなく、息子のパトリックのほうだろう。だがこうなると私がのこのことエインフィル邸に顔を出すことはできない。エインフィル伯に鏡の製法について詳しく説明していないことだけが救いだ」


「つまりですね、領主様はまだ鏡の製法を知らない。それ故にヴィクトルさんとヴィーシャさんは命の保証がある。けれどこの状態を打破する方法が思いつかない、というのが現状ですね。空から落ちてきた紙のお陰でこうしてメルさんと合流できましたが」


「うまく行って良かったよ」


「よく私たちがこの辺に潜伏しているとわかりましたね」


「ううん。わからなかったよ。だからメッセージはアーリア全体に撒いたんだ」


 事もなげにメルは言うが、あの量の紙切れをアーリア全体に撒いただって?

 いったいどうやったらそんなことができるんだよ。


「なんだかね、空飛ぶ道具にビラを載せたらうまくばら撒くようにセットできるんだって。よくわかんないけど、そんな感じ」


 まあ、メルに詳細な説明は誰も求めてないか。


「つまりカズヤってことだな。あの空の光も?」


「うん。ひーくんがアーリアの外から照明弾って言うのを飛ばしてるんだ。ちょっと連絡してみるね」


 メルは通信の道具を手にして、そこに呼びかける。


「もしもし、ひーくん、聞こえますか? どうぞ」


 すると機械からなんか変な感じのカズヤの声が聞こえてくる。


『そっちは無事? こっちも騎士が来たけど、なんとかやりすごしたよ。どうぞ』


「ひーくんこそ大丈夫だったの? どうぞ」


『あっちに逃げたから平気だよ。今はこの辺にはいないみたいだね。そっちの状況を教えて欲しい。どうぞ』


「こっちはね、ええと、パーティメンバーとヴィクトルさんとエルセリーナさん、それからニーナちゃんの家族も合流してる。そのヴィーシャさんは連れて行かれちゃったみたい。どうぞ」


『……わかった。とりあえず僕もそっちに向かう。[潜伏]もあるし、閃光音響手榴弾もある。不意打ちさえ食らわなければ対処できるはずだ。[鷹の目]も常に使っていくから安心してほしい。それで僕はどこに向かえばいい? どうぞ』


「ええっと説明が難しいな。北区はあんまり道の名前とかないから。いまアーリアの東側の外だよね。北区の市壁を越えられる? どうぞ」


『わかった。そっちに回り込むよ。状況を見てまた連絡する。どうぞ』


「了解。以上通信終わり!」


 メルは道具を腰にすちゃっと取り付けた。


「今のは、いったい」


 ヴィクトルが呆然としている。


「アーリアの外と話を?」


「うん。そういう道具だよ。遠くの人とお話ができるんだ」


「なんてことだ。鏡よりもずっとヤバいじゃないか……」


 まあ、そうだよな。それくらいはあたしでもわかる。

 例えば今あたしたちを追いかけている騎士や衛兵は事前に共有された情報を持って、それぞれにアーリア市内を捜索している。

 しかしこの道具が全員に行き渡っていれば、常に情報の共有が行われるということだ。

 どの区画にはいなかった。

 どの区画で目撃情報があった。

 どの区画が怪しい。

 司令官のところに全ての情報が即座に集まる。

 そして司令官は手足のように連絡が取れる全体を操れる。


 アーリアだと発光信号がせいぜいだからな。

 この情報格差はあまりにも大きい。


「それじゃひーくんが来たら迎えに行ってくるね。ここで集合して安全な場所に退避しよう」


「ここよりも安全な場所があるのかい?」


 ヴィクトルの質問にメルはニッと歯を見せて笑った。


「絶対に安全なところだよ!」

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