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GAMELIZATION ~ゲーマライゼーション~ NPCの生存戦略  作者: 二上たいら
第10章 抵抗は燃え上がる

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第627話 【騎士】にはツキがある

◆◇◆ また別の騎士の場合


 今日はツイている。


 休憩室での賭博でもかなり儲かった。

 勝ちすぎると恨みを買う時もあるが、今日の勝ちは大体セドリックから抜いた分だ。

 領主の次男坊であるセドリックは金を持っている。

 あいつからいくら毟ったところで、誰も傷つかない。


 みんな幸せ。

 すばらしいことだ。


 ところが様子が変わったのは騎士の全招集が行われてからだ。


 冒険者ギルドに協力を強制おねがいして、アーリアを封鎖、独立。

 また鉱石商のヴィクトルを確保してカズヤの鏡の作り方を吐かせる予定だったが、それらがなにひとつ上手く進んでいないらしい。


 そこでエインフィル伯爵は異邦の商人で冒険者のカズヤを殺害から捕縛に方針を変更、ヴィクトルとともにアーリア市内を捜索するということになった。

 衛兵どもも駆り出されているが、アーリア騎士団の騎士も全員がこの任務に当たることになったのだ。


 ただクソ頭の固い騎士団長様でも、俺たちをそんなに働かせるのは難しいと思ったのか、カズヤは生きて捕縛さえできれば他に好きにしていいという言質をくれたのは助かった。


 つまりカズヤを捕まえるためならなにをしたっていいってことだ。


 というわけで北区で聞き込みのついでにたっぷりと楽しんだあと、その家を出たところで俺たちはばったりと路地を急ぐ女冒険者と遭遇した。

 それはアーリアでは有名な二人組の女戦士、カズヤのパーティメンバーのひとり、エリスだ。

 エリスは俺たちの姿を見るや否やさっと路地の陰に姿を消したが、あの長身でむしゃぶりつきたくなるような体は見間違えやしない。


「おい、カズヤの仲間だ。捕まえるぞ」


 俺は相方にそう声をかけてエリスの後を追いかける。


 アーリアの北区はあまり治安の良くない地区だ。道も雑然としていて見通しが良くない。普通の騎士ならすぐに撒かれただろう。

 だが俺はこの地区からアーリア騎士団まで成り上がった平民出身の騎士だ。

 北区の裏道ならお手の物だぜ。


 エリスの後を追いかけるのは相方に任せ、俺は[身体強化]魔術を強めに発動し、先回りをすることにした。


 北区のいい近道を教えようか?


 ぶち壊せそうな家はぶち壊して進むんだ。

 レベル50の力があれば、木造家屋をぶっ壊して進むなんて簡単な話だからな。


 破砕音と、悲鳴と、絶叫を奏でながら、俺はエリスの行き先を阻むように先回りを続ける。

 エリスもこの辺りには詳しいのか、迷う素振りは無く、まるで野良猫のように逃げ回っていたが、それだって時間の問題だ。

 この辺りには袋小路も多い。

 道を塞ぐのが木造家屋ならぶっ壊せるだろうが、この先は良くないぜ。


 セメントで固められた石造りの袋小路に俺たちはエリスを追い詰めた。


「カズヤのパーティメンバーのエリスだな?」


 わかりきっていることを聞く。


「どうだったかな? あたしは今日の昼飯も思い出せなくてね」


「舐めた口なぞすぐに利けなくしてやる。エリスでなかったとしても、夜間の外出は禁止だ。その罰は受けてもらおうか」


 俺の言葉にエリスは背中に担いだ大剣を抜いて構える。


 せめてもの抵抗ってわけか?


 確かカズヤのパーティメンバーはレベル40と少しだったはず。

 少なくとも50に到達しているとは聞いていない。


 パワーレベリングによって考えがたい速度でレベルを上げてきたカズヤのパーティメンバーだが、その後もパワーレベリングを続けているとは聞いていない。

 そもそもアーリアにそれ以上へのパワーレベリングを手伝える冒険者パーティがいない。

 よってエリスのレベルはあって43くらいだろう。


 俺たちレベル50の騎士二人で制圧するのはそんなに難しくない。


 さて、どう痛めつけてやろうか。


 俺は展開していた[灯火]の魔術構成を消し、松明に[着火]で火を付ける。

 そして松明を投げ捨て、剣を抜いた。


「手足を切り落とすのは無しな。俺が萎える」


 相方が言う。

 俺たちは二人とも[小回復]魔術は使えても[回復魔法]は使えない。

 あまりに大きな傷は癒やせないし、時間もかかる。


「じゃあ俺からも注文な。顔はあんまり傷つけんな」


「なんだおまえ、ああいうのが好みなのか?」


「そういうんじゃねぇけどさ。あの勝ち気な顔が屈辱に歪んで、最後には泣き叫んで懇願するその表情が見たいんだ」


「それな。わかる」


 俺たちの小粋なトークを聞いてもエリスは剣を構えたまま動かない。

 おそらくスキル構成が盾役に寄っているのだ。

 攻撃手段が豊富ならもう突っかかってきそうなもんだもんな。


 カズヤが使うという光と音の道具も使ってくる様子がない。

 持っていないのか、そもそもそんなものが存在しないのか、どちらにせよ普通に戦えば俺たちが圧勝する。


「おい、一度後ろ見ろ」


 俺は相方に声をかける。

 エリスは大抵はシャノンって女と共に行動をしていると聞いたことがある。

 俺たちがエリスに気を取られている間に、後ろからバッサリやられるとかは洒落にならん。

 なんせお楽しみのためには甲冑を脱ぐ必要があるからな。


 まったく、誰かあそこだけぽろっと出せる全身甲冑を作ってくれねぇかな。

 いや、モノが小さいヤツだと外まで出ないか。

 じゃあオーダーメイドしかねぇな。


「後ろは大丈夫だ。確認したんだから、ぶち込むのは俺が先な」


「さっきおまえが先だったろ。今度は俺に譲れ」


 ぶわっと敵意ヘイトが向かってきた。

 エリスが俺たちを攻撃する気になったのだ。


 爆発的な踏み込みでエリスはこちらに向かってくる。

 かなり強い[身体強化]魔術を乗せているな。

 パワーだけなら俺たちを上回っているかもしれん。


 だがこちらも[身体強化]魔術を使えば、再び差が生まれる。


 エリスは俺を狙ってきた。

 上段に構えた大剣を勢いよく振り下ろしてくる。

 それを俺は真正面から剣で受け止めた。


 黒鉄の刃同士がぶつかり合う。黒鉄独特の鈍い音がした。

 重い剣だが、受け止めきれないほどじゃねぇ。


 次の瞬間には相方がエリスの腹に蹴りを叩き込んでいる。

 石造りの壁に吹っ飛ばされたエリスは背中を強打して、地面に倒れる。

 剣を手放していないのは大したもんだ。


「手加減したとは言え、あんまり効いてないと思うぞ。蹴った感触からして、おそらく[金剛身]スキルだ。熟練度は初級か、それ以下だろうがな」


 相方が言う。

[金剛身]はいわゆる防御力強化の第二スキルだ。

 やはり選択スキルは盾役寄りで取得しているらしい。


 エリスは舌打ちしてパッと立ち上がる。

 倒れた振りして油断を誘ってたのか。


「おいおい、今ので勝ち目が無いのはわかったろ。大人しくカズヤの居所を言えば、優しくしてやるよ」


 もちろん嘘だけどな。

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