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GAMELIZATION ~ゲーマライゼーション~ NPCの生存戦略  作者: 二上たいら
第10章 抵抗は燃え上がる

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第626話 【アーリア】を照らす光 深まる影

◆◇◆ 騎士団長ヘルミヤの場合


 その光は屋敷の中にいた私にも届いた。

 直接見えたわけではないが、窓を塞ぐ木製の蓋は外の光を完全に遮るようなものではない。

 異変を察知した私はすぐに窓に駆け寄って、蓋を押し、外を見た。


 夜空が明るい。

 と言っても空が明るいわけではない。

 夜空を覆う雲の下に、強い光が浮いているのだ。


 私なりに表現するのであれば、とても強力な[灯火]の魔術を空に放ったかのようだ。

 しかし[灯火]の魔術は術者からそれほど離すことのできるものではない。

 よってこれは[灯火]の魔術ではない。


 ではなんだ、と言われるとまったくわからなかった。


 私は王都の学園でそれなりの成績を収めたし、その後、冒険者に混じってダンジョンに潜った。

 貴族の子女としての教養と、冒険者としての知識、そのどちらも持ち合わせているが、いま目の前で起きている現象を説明できない。


 とにかく光はアーリア全体を照らしているようだ。

 光そのものはアーリア東の上空にある。

 アーリアは小高い丘の上に作られた町で、領主の館はその中心部、一番高い場所にあるので町全体が見下ろせる。

 そして光は館よりもさらに上にあって、町の東側全体が明るく見通せる状況だ。


 窓の位置の関係でそれ以外の方向は見えないが、おそらくアーリア全体がこの光で照らされている。


 私は部下の報告にあった激しく強い閃光を放つ道具、というものを思い出す。

 それは目潰しのように使われたようだが、似た道具が使われている気がした。


 部下の報告を私は一笑に付したが、どうも間違いであったらしい。


 つまりこれはカズヤの手によるものだ。

 正体不明の異邦の商人がこれまでひた隠しにしていたその本性をむき出しにしてアーリアに襲いかかってきているのだ。


 部下の騎士たちに命令を送りたいが、全員をカズヤの捜索に割いてしまったので、連絡員が誰もいない。


 私は領主様の護衛でここを離れられないし、副団長もまた領主様の嫡男であるパトリック様の護衛についている。


 どちらもこの屋敷を離れられない。


 私は忙しなく屋敷の中を走り回る女中のひとりを捕まえた。


「すまない。誰か手の空いている者を借りることはできるだろうか?」


「あの、すみません。今はとても……。その、ご説明はできないのですが……」


 本来であれば女中はもう休んでいる時間であろう。

 にも関わらず慌ただしく行き来しているところを見るに、何かしらのトラブルが起きているに違いない。


 大丈夫だ。部下たちもこの光を目にしているはずだ。

 正式な騎士なのだから、それぞれが正しい行動を取ってくれる。

 取ってくれるはずだ。

 取ってくれるということにしよう。


 もしも駄目ならまた厳しく教育をせねばならないな。




◆◇◆ とある騎士の場合


 いきなり夜が昼になった。


 逆の話は聞いたことあるな。

 太陽が突然消えて夜になる。

 そんな眉唾な話を聞いたことがある。

 雲かなんかに隠れてちょっと薄暗くなるのを大げさに言っただけなんじゃないかと俺は思っている。


 んで、いま起きているのはその正反対だ。

 夜が昼になった。


 まあ、そんなこともあるかもなあ。


 俺は水筒をあおった。

 アーリアに生きる人間は皆[湧水]の魔術くらいは使える。

 俺だってそうだ。

 だからわざわざ水筒に入れて持ち運ぶ液体、というのはつまり酒だよ。


 だってさあ、こんな夜中に仕事とかやってらんねーよな。

 しかもエインフィル伯は独立がどうのとかとんでもないことを言っている。


 そりゃ俺にだって国への忠誠心とかはないよ。

 アーリア騎士団は国に忠誠を誓った騎士たちの集団ではないしな。


 その辺、冒険者ギルドのほうがよほど国への帰属意識が強いんじゃねーかな。

 もう潰しちまったけど。


 明るくなったから[灯火]の魔術はいらねぇかあ。

 俺は魔術の構成を霧散させる。


「どうする?」


 相棒が聞いてきた。

 いや、聞いて来んなよ。


「お前が主だろ。考えるのはお前の役割。俺は従う」


「遠いよな」


 何を指しているのかは言うまでもない。

 夜空に上がった謎の光についてだ。


 光は町の東側にあって、ここは北側。

 光のところに向かうにはかなりの距離があるし、俺たちは重たい全身甲冑を着ていて、わざわざ光のところに走って行くのは面倒だし、しんどい。


「おい、今夜は外出禁止だぞ!」


 相棒が光に釣られて家から出てきたのであろう市民を怒鳴りつける。

 ちょうどそこに騎士がいるとは思っていなかったのだろう、その市民は慌てて扉を閉じようとするが、相棒が扉の隙間に槍の穂先を差し込んで、扉が閉まるのを防いだ。


「ひっ、お許しください!」


 嗜虐心をそそる声だ。

 相棒も同じ気持ちだったようだ。


「外出禁止令を破ったことは不問にしていいぞ。その代わりにだな」


 ぐいと相棒は力尽くで扉を開く。

 アーリアでは騎士よりレベルの高い者はほぼいない。

 ただの市民に抵抗などできるはずもない。


「俺たちを楽しませてもらおうか」


 夜空を照らす謎の光から身を隠すように俺たちは市民の家に入り込んだ。


 光が強いほど、闇もまた暗くなる。

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