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GAMELIZATION ~ゲーマライゼーション~ NPCの生存戦略  作者: 二上たいら
第10章 抵抗は燃え上がる

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第619話 【エインフィル伯爵】は独立を図る

 エインフィル家は代々この地を治める貴族である。


 この地というのはつまり、アデルネン高地におけるグノイ川の東側、ソーデチカ山脈の北側の一帯だ。

 中級のダンジョンを擁する都市アーリアを中心に農地が広がり、東側には広大な森があり、南のクラッコでは良質な鉄、灼鉄、そして黒鉄を掘り出すことができるため、おおよその資源を自給できる生産拠点である。


 アーリアの登録市民は一万人超で、領地全体では二万人を超える民が暮らしており、これは小国に匹敵する規模だ。


 大陸中央平原とアデルネン高地を結ぶ要所であり、ルリュール王国とリアーノは度々この地を巡って戦火を交えてきた。


 アーリアが防壁を擁するのも、12もの監視塔を建造したのも、アーリアを戦火から守るためであり、幾たびも攻められたにも関わらず、アーリアは陥落したことがない。


 これはアーリア周辺の地形的に攻城兵器を運び込むのが難しく、防壁を攻略できた軍隊がいなかったためである。


 にも関わらず、アーリアはその所属を変更したことがある。


 かつてアーリアはリアーノ領であり、その文化や風習にはリアーノ時代のものが色濃く残っている。


 例えば公衆浴場はその最たるものだ。

 ルリュール王国に編入された後に、あまりにも風紀を乱すと廃止されそうになったことがあるが、民衆が暴動を起こしかけたので男女別にすることで存続したと記録にある。


 またアーリアは農業が盛んな土地ではあるが、畜産はそれほどでもない。

 綿花の栽培も気候条件が合わないため、糸や布はリアーノからの輸入に頼っている。

 このためアーリアの住民はリアーノ風の衣服を身にまとっており、旅商人などはアーリアをリアーノの一部だと間違えることもあるようだ。


 使用言語も公的にはルリュール王国の使う大陸中央語に改められたが、リアーノ風の高地訛りが残る。

 私自身、王都での社交において訛りを指摘され恥をかいた。

 またアーリアの外にある農村などでは高地語が使用されていることも多い。


 ではなぜ攻め落とされたわけでもないのに、エインフィル領はリアーノからルリュール王国へと鞍替えしたのか。

 昔のことで当時を知る者はもうほとんど生きていないが、記録によればルリュール王国はエインフィル家に納税の免除というとびきりの条件を出してきたらしい。


 それまでリアーノに領地から徴税したうち半分を持って行かれていたことを考えれば、破格の条件だ。

 その代わりアーリアにルリュール王国の冒険者ギルドを設置し、魔石を優先的に買い取りたいとのことであった。


 居住地の設営には魔物の侵入を拒む結界の魔道具が必須だ。

 そしてこの魔道具の稼働には30層以降の魔石を継続的に必要とする。


 国家の規模はその国家が抱えるダンジョンに左右されるのだ。


 そしてアーリアのダンジョンには周辺地域に魔石を提供できるだけの産出量があり、ルリュール王国はダンジョンの少ない地域で慢性的に魔石不足に悩まされていた。


 一方でリアーノにはアーリアのダンジョンとは別に、いくつかの深層ダンジョン、そして奈落アビスと呼ばれる高難度ダンジョンがあり、魔石の供給には事欠かない。


 ルリュール王国がリアーノになにをどれだけ支払ったのかはわからないが、エインフィル伯爵家の鞍替えは比較的円満に行われたという。


 こうしてアーリアとクラッコはリアーノからルリュール王国へと変わったわけだ。


 正直に言うと王国の支配はとても緩やかだ。

 納税免除の有効期限はすでに切れたが、魔石と税さえちゃんと納入すれば、それ以外のことは自由にやらせてもらっている。


 もらっていた、というべきかもしれない。


 冒険者ギルド長として王都からルキウという爺さんが送り込まれてきてから、少しずつ事態はきな臭くなっていく。

 つまりアーリアは豊かすぎるというのがルキウの考えであるようだった。


 ルリュール王国がエインフィル領に対して税率の改正を通達してきたのがこの春。

 それは容認できるギリギリのラインを越えており、このまま受け入れたら最後、この冬には餓死者が出るだろう、というほどのものであった。


 おそらく王はカズヤがもたらした鏡の転売によってエインフィル伯爵領が得ている利益を、税金として回収したいのだ。

 だがそのあまりにもな大金に目が眩んでいて、領民の生活にまで気が回っていないと見える。


 税を拒絶すれば、当然なんらかの処罰がある。

 事と次第によっては王都からエインフィル領に向けて征伐軍が興るということも有り得るだろう。


 だが今回に限って言えば領民に課せられた税を、儂が鏡で稼いだ額で補填することはできる。


 いや、それこそが国の狙いなのかもしれない。


 鏡で稼いだ金はきっちり回収するよ、と。


 それで国の溜飲が下がるのであれば、受け入れても良かった。


 しかしアーリアの鉱石商ヴィクトルは異邦の商人カズヤから鏡の製法を聞き出したと言った。

 ヴィクトルの娘ヴィーシャ、儂の息子の婚約者だが、それを横から奪い取ることを条件に、ではあったが。


 鏡を自領内で生産できるとなると話はまるで変わってくる。


 都市を維持するための魔石、十分な食料生産力、鉱物資源、そして鏡を売って手に入れた大金。

 すべてがエインフィル領にある。


 そうだ。領民の生活のためにも、独立を図るなら今だ。

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