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GAMELIZATION ~ゲーマライゼーション~ NPCの生存戦略  作者: 二上たいら
第10章 抵抗は燃え上がる

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第617話 【北森源治郎】は積み上げる

「自衛隊の装備を使いたいだあ? あいつ、なにと戦うつもりなんだ?」


『わからん』


 スマホのスピーカーから綾冬(じじい)の辛気くさい声が聞こえてくる。

 こいつとは『組織』を立ち上げた時からの腐れ縁だ。

 だが綾冬爺は日本の将来を真面目に憂いすぎなんだよなあ。


 もうちっと不真面目にならんと世の中うまく回らんよ。

 未来のことは若者に任せて、俺たちゃ金を出せばいい。


『とにかく米国に出し抜かれるわけにはいかん。樋口湊ひぐちみなとの要求には応えるが、もう一押しが欲しい』


「つまり俺からも声をかけろってことね」


『孫娘によれば樋口湊は当初、私とお前に連絡をつけろと言ったらしい。どちらかではなく、両方にだ。お前宛ての要求もなにかあると私は見ている』


「それ俺になんか見返りあんの?」


『この借りは私が肩代わりする』


「ヒュウ」


 思わず口笛を鳴らしてしまう。

 綾冬琥之佑に貸しができるって、そりゃ最高じゃねーか。

 ただでさえ表舞台に顔を出していない裏の要人だ。

『組織』を通じてさえ取引を持ちかけるのが難しい相手なんだよ。


 いや、でも待てよ。

 綾冬琥之佑がそんな簡単に借りを作るか?


 つまり綾冬琥之佑は俺に借りを作るより、樋口湊に貸しを作るほうが価値が高いって判断したってことだ。

 あるいは逆か。


「樋口湊に条件を出せば米国を優先される恐れがあるってことだな?」


『そうだ。なんとかこちらで独占したい。少なくとも米国に独占されるのは無しだ』


「まあ、わからんでもないけど」


 結界装置による国土拡張は実現できれば、それが生み出す利益はちょっと想像ができない。

 だが30層以降の魔石が安定して手に入る状況はいつになったら訪れる?

 少なくとも俺が生きている間には無理だな。


 しかし綾冬琥之佑は己の死後まで計算に入れるタイプだ。

 こいつからすると樋口湊の存在はとてつもなく重要なんだろう。


「わかったよ。折れてやる。ミナミナ、樋口湊へ通話をつないでくれ。これでいいな?」


『可能な限り条件面でも折れてもらいたい』


「貸付上乗せだ」


『承知した』


 綾冬琥之佑からの通話は切れる。

 今から『組織』の根回しに奔走するのだろう。

 自衛隊の装備を横流しするとなれば『組織』の幹部会で総意を取る必要があるだろう。


 えー、でもそれは難しくないか?

 行うことの難易度じゃなくて、表沙汰になったときのダメージが大きすぎるのだ。


「会長、樋口様に通話が繋がりました」


 秘書の皆川南みながわみなみがスマホを差し出してくるので、スピーカーモードにしてテーブルに置く。


「よぉ、お待ちかねのゲンちゃんだ。用があるんだって?」


『単刀直入に言わせていただきます。ホクシン重工を使わせてもらえませんか?』


 単刀直入すぎん?

 普通は雑談から入るものだが、いや、それをされたら俺の1分がいくらの価値があるんだって思うだろうけどな。


「重工を? 戦車でも使うのか?」


『いえ、ホクシン重工は本体に設計者を、下請けに大量の町工場を抱えていますよね。それを貸してください』


 設計力、生産力を借りたいということか。


「なにをするのかまず聞かせてもらおうか」


『僕がこれから言うものを設計して、可能な限り量産していただきたいんです』


 そうして樋口湊が話した内容に俺は度肝を抜かれる。


「そんなん上手くいくはずがない!」


『否定するのは簡単ですが、ホクシンの設計者を信じてみるのはどうですか?』


 俺は頭をガリガリと掻く。

 確かにそうだ。

 こんな小僧に言われるのは癪だが、できるかどうかを決めるのは経営者のやることではない。技術者の役割だ。


「いつまでに、いくつだ?」


『明日は流石に無理がありますよね。明後日までに40個は用意してもらいたいです』


「設計さえできれば、そりゃ40の町工場に作らせればできるだろうが、品質は当然ばらつくぞ」


『一回の使用で破損してもかまいません。元から連続使用できる仕様ではありませんし』


「できたものはどこで受け渡しをする?」


『横田基地に運び入れてください。向こうと話はつけますので』


「横田基地ぃ!?」


 綾冬爺よ、もうアメリカに出し抜かれてんじゃねーかよ。


「もうアメリカさんと話はついてんのか?」


『それなりには。いま横田基地に向かっているところです』


 いくらなんでもアメリカの動きが早すぎる。

 そうするだけの何かをすでに得た、ということだろう。


「ちなみにアメリカさんとはどんな条件で契約したんだ?」


 普通は答えないとわかっていても探りをいれないわけにはいかない。

 在日米軍がこの早さで動くということは、米国政府の承認があったに違いないからだ。


『お答えはできません。先方との信頼関係にヒビを入れたくはありませんから』


「俺とミーちゃんの仲じゃねぇか」


『おかげさまで部屋に戻った僕は奥さんに大層可愛がられましたよ。ゲンさんは未婚だとか? 恐妻家という話ではありませんでしたっけ?』


「そりゃまあ、言葉の綾というか。その場のノリとかあるじゃん」


『そうですか。見積もりは必要ありません。お好きな額を請求してください。今でも、後でも、お好きなタイミングで』


 樋口湊の声は冷たい。

 どうやら信用を失ったようだ。


「わかった。やれるだけやってみよう」


 どうせ元々信用などなかったのだ。

 ここから積み上げていくさ。

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