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GAMELIZATION ~ゲーマライゼーション~ NPCの生存戦略  作者: 二上たいら
第10章 抵抗は燃え上がる

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第616話 装備を整える

 新宿にある探索者向けの店で僕らは装備品を見て回る。


閃光音響手榴弾フラッシュバンは持てるだけ買うとして、こうして見ると色々あるね」


 催涙スプレーや、それの強化版で催涙グレネードなんてものもある。

 催涙グレネードを撃ち出すランチャーもあって、普通の拳銃くらいのサイズだ。


 それから携行ストロボライトかあ。

 なるほどね。

 これなら閃光音響手榴弾フラッシュバンみたいに使い捨てじゃなくて、充電がある限りなんども閃光を放てる。


 多少大きくはなるが、携行レーザー銃なんてものもある。

 SFに出てくるようなレーザーで相手を焼き切るようなものではなくて、あくまで目に当てて視覚を奪うのが目的の機器だ。

 試してみないとなんとも言えないけど、ここに置いてあるということはモンスター相手に有効性があったということだろう。


「ひーくん、これどういうこと?」


 メルが指差した棚には『悪臭手榴弾』と書かれていた。

 えーっと、どれどれ、説明書きがあるな。


『この手榴弾は起爆と同時に凄まじい悪臭のある液体をばら撒きます。万が一衣服や皮膚に付着した場合、洗い流すのが大変困難ですので、取り扱いには細心の注意を払ってください。またこれを使用した場合の責任はすべて使用者に帰属するものとします。当店は一切の責任を負いません』


 うわぁ。


「そんなに酷い臭いなの?」


「こっちの世界の技術で作られた悪臭だからね。ちょっと想像も付かないな。嘔吐で済めばいいんだけど……」


 テスターとか置いてないよな。

 置いてあったら阿鼻叫喚だろう。

 でも希釈したものをちょっと置いてて欲しいかも。


「動物型のモンスターには覿面に効くんだろうね。つまり人間にも効くってことだ」


 僕はこの悪臭手榴弾をカゴにいくつか放り込んだ。


「逃げちゃうだけなんじゃない?」


「爆発して付着したら逃げようがないからね。使うときは本当に注意しよう」


 アーリアは公衆衛生に気を遣っている都市だから、こういうエグい臭いには耐性がなさそうだ。

 騎士が貴族の子弟がほとんどで、かつ準貴族のような扱いを受けているのであればなおさらだ。


「こっちは煙幕手榴弾スモークグレネードか」


「煙が出るの?」


「そうだね。ぶわぁって煙で辺りが覆われる感じだと思う」


「風系の魔法か魔術で簡単に散らせそうだね」


「確かに。制圧力もないし、一個だけ買っておくか」


 その後も物色して、カゴを一杯にする。

 ひとまず二人で持ち込んで邪魔にならないギリギリの量だな。


 会計で精算して、僕らは表で待たせておいたタクシーに乗り込んだ。

 運転手に神楽坂に戻ってもらうように伝える。


 運転手が僕らの買ってきた品を見て一瞬だけギョッとする。

 まあ、危険物だもんね。

 銃刀法が改正されたのも割りと最近だから、物によっては見慣れてなかったりする。

 剣とか槍とかを持ち歩く人は普通に見かけるんだけどね。


 僕がにっこりと笑顔を向けると、運転手はなにもなかったという顔で運転に集中した。


 そこで僕のスマホが震える。

 着信通知はダニエル・オーウェルのものだ。


 米国が先だったか。

 時差の関係で『組織』のほうが早く反応できると思っていたけれど、CIAのほうが先に大統領トップまで話が行くよね。

 一方で日本の場合は首相があれだから、話は通さないほうが早いまである。


「もしもし」


『お待たせしました。横田基地にある装備の使用許可が下りましたよ。その他に必要な装備があれば別の基地からの移送も行います』


「ありがとうございます。条件はどうなりましたか?」


『米国は全面協力を約束します。その代わりに[死者蘇生]スキルの習得条件を教えてください』


 そうきたかー!

 この人の前でぽろっと言っちゃったんだよな。[死者蘇生]スキルのこと。


「メル、[死者蘇生]スキルの習得条件はわかる?」


「うん。[回復魔法]と[治療]の両方が熟練度100ある状態で、なおかつ一定期間殺生に関わらずにレベル20毎のスキル選択を迎えると出てくるみたい」


「はい? ちょっと待って」


 まずひとつのスキルを熟練度100まで上げるのが無理ゲーだ。

 白河ユイの場合はちょっと特殊なので置いておくとして、普通は人生を賭けてひとつのスキルを極めようとしても熟練度100には到達しないと聞く。


「一定期間ってどれくらい?」


「そこがちゃんと測れていないんだよね。10年だという人もいるし、20年、もっとだ。という人もいるんだ。ただ生まれてから一度も殺生に関わっていなかったら条件を満たしていると見做すみたい」


「でもレベルを上げるためには魔物を殺す必要があるよね? パーティメンバーであるだけなら平気だとか?」


 ずっと回復専門でやってきた人ならなんとかなるのかな?

 ニーナちゃんは敵を殺害したことはないと思うけど、条件を満たしているんだろうか。


「パーティメンバーが魔物を殺したら駄目だよ」


「じゃあ無理じゃん!」


 レベルが上がらないじゃん!


 僕がそう言うとメルはふふんと鼻を鳴らした。

 なんか嬉しそう。


「実は殺さずに経験値を得られるタイプの魔物がいます」


「殺さずに経験値を? なんか特殊なギミックがあるの?」


 そんなの聞いたことないな。


「ぶっぶー。不正解。アンデッドだよ。ひーくん。すでに死んでいる魔物なら、倒しても殺したことにはならないよね」


「生き物は殺してないってことか……」


 なんだそれって思う気持ちと、[死者蘇生]スキルというスキルの特殊性や、習得者が聖女と呼ばれることなどからすると、なるほどな、という気持ちの両方がある。

 僕は塞いでいたスマホのマイクから手を離した。


「お待たせしました。ええと、レベル1で一切殺生に関わっていない人物をまず[治療]スキル熟練度100まで上げて、そうしたら[回復魔法]スキルも手に入っていると思うので、これも熟練度100まで上げてください。その後アンデッドだけ倒してレベル20まで上げると選択できます。あ、先天で[治療]と[回復魔法]持ってる人は除外で。その場合熟練度は100まで上げられないので」


 自分で言っててひどい条件だと思う。

 この条件を満たすのに何十年かかるんだ……。


『……情報提供に感謝します。ひとまず検証もしますが、あなた方はお急ぎのようだ。横田基地はいつでもウェルカムですし、装備品についてのブリーフィングもさせていただきます』


 僕の言葉を信じたかどうかはともかく、ダニエル・オーウェルはこちらの要求を受け入れてくれるようだ。


「ありがとうございます。今から向かってもいいですか?」


『いつでもウェルカムだと言いました』


「運転手さん、目的地を横田基地に変えてください」


 長い一日はまだ終わらない。

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