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GAMELIZATION ~ゲーマライゼーション~ NPCの生存戦略  作者: 二上たいら
第10章 抵抗は燃え上がる

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第612話 【騎士】は早く帰りたい

 神童、という言葉は、つまり将来が無いという意味だ。


 早熟型ステータスは低レベル時にステータス補正が大きいが、レベルが上がる際の伸びが少ない。

 よってレベル40辺りまでは有利を取れるが、そこからは転落するしかない。


 アーリアの騎士家ではレベル50までのパワーレベリングが基本だ。


 つまりどういうことかというと、俺は落ちこぼれであった。


 選択スキルもろくなものが出ず、役立たずの烙印を押され、長子だったのに家の跡取りは弟に決まった。

 そして俺はアーリア騎士団に追い出された。


 アーリア騎士団は基本的にそういう落ちこぼれの吹きだまりだ。

 レベルだけあっても突出した能力は無く、家の跡取りになれないような男たちのたまり場である。


 だったからその普段の生活についても大体想像は付くだろう。


 酒を飲んで、賭博をする。

 っても身内の席での賭博だ。

 仲間の中でぐるぐる金を回しているに過ぎない。


 訓練? たまにダンジョンに入ってそれっぽいことはしている。

 っても最下《50》層なんかはいかないぜ。

 30何層かで、魔石をいくつか持って帰ってくりゃお勤め完了だ。


 アーリア騎士団に仕事なんてないんだから、結界維持の魔石をたまに取ってくれば十分ってわけさ。


 そのはずだったんだが、俺たちはなぜかいま、かくれんぼの鬼役をやらされている。


 探しているのはカズヤってこの辺では見ない風貌の若い商人と、鉱石商のヴィクトルだ。

 こいつらはここのところエインフィル伯を儲けさせていた鏡の製法を知っている。


 エインフィル伯はこの二人のどちらかから鏡の製法を聞き出したいというわけだ。


 それが最高にウケるところでさ、エインフィル伯はこの町の領主なわけで、普通にしていれば聞き出すのは簡単だったんだよな。

 ヴィクトルなり、カズヤなりに、正面から領主としてお願い(きょうせい)すれば、彼らとて黙ってはいられなかっただろう。


 しかしヴィクトルは鏡の製法を得たという報告と同時に、娘であるヴィーシャと領主の息子との婚約破棄を申し出てきた。

 鏡の製法を知っていたカズヤがヴィーシャを気に入り、嫁に取ることを条件に鏡の製法を聞き出したというのだ。


 エインフィル伯としては鏡のほうがよほど重要だ。

 だが息子のことも大切だ。ヴィーシャは息子が望んだ婚約者である。


 どうするか悩んだため、一度ヴィクトルを帰らせ考えることにした。


 エインフィル伯は息子のことをちゃんと愛しているため、息子に事の次第を報告する。

 だがこの息子がダメなんだよなあ。


 小児性愛者なのに、自分のものに対して異常なほどに執着を見せる男。

 愛した少女が年齢を重ねると興味を失うが、手元には置いておきたい。

 そういう最低の野郎だ。


 エインフィル伯から話を聞いた息子は癇癪かんしゃくを起こして閉じこもってしまった。

 困ったエインフィル伯は息子の友人に様子を見るように頼むわけだが、この息子の友人というのがアーリア騎士団の一員だった。


 その後、カズヤ確保のためにアーリア騎士団がアーリアのダンジョンに派遣されたときの面子にこいつが含まれていて、領主の息子の婚約者だったヴィーシャがカズヤのパーティメンバーと一緒にいるところを見て、確保してきてしまったというわけだ。


 ついでにカズヤがアーリアで借りている部屋を捜索した騎士団員たちは、部屋にあった物を戦利品として勝手に持って帰ってきたらしい。


 アーリア騎士団にはバカしかいない。


 結果的にヴィクトルにもカズヤにも警戒されたのか逃げられてしまい、こうして捜索に駆り出されているというわけだ。


 衛兵どもも駆り出して町の中を隅々まで捜索しているのに見つからないから、おそらくもうアーリアからは脱出しているに違いない。


 王都に繋がる東への街路はエインフィル伯の命令で封鎖されている。

 南にあるエインフィル領の町、クラッコには騎士が派遣されている。

 問題は西側、グノイ川を越えれば、リアーノ領テンネンに辿り着く。


 アーリア騎士団は今のところルリュール王国に所属しており、リアーノとは半ば敵対関係だ。

 アーリアの騎士がテンネンに入って人を捜索するなど認められるはずがないし、リアーノに捜索と引き渡しを依頼しても断られるだろう。


 船着き場は押さえたそうだが、渡河手段は船とは限らない。

 冒険者のレベルなら丸太のひとつでも持ち込んで、掴まって渡ることだってできるに違いない。


 そういうこともあってアーリア騎士団の配置は西に寄っている。

 テンネンに限らないが、要はリアーノに脱出されたら面倒だからだ。


 冒険者ギルドの制圧に回された奴らはいいよな。

 人斬りなんてできる機会はそうそうない。

 冒険者ギルド長のルキウは親王派で、エインフィル伯の独立に手を貸せと言っても断るだろう。

 そこからは烏合の衆を蹴散らす遊びの始まりだ。


 俺もそっちが良かった。


 俺はアーリア市内の捜索に割り当てられて、いないと思っている相手を探すという虚無を仕事にしている。

 かくれんぼで鬼が目をつむっている間にみんなが帰ってしまい、誰もいない遊び場を延々と探しているかのようだ。


「あーあ、やってらんね」


 当然真面目に探す気も起きず、適当に町をぶらぶらしているだけ。

 それも夜間外出禁止令が出て、誰もいない町中となれば楽しみもない。


 どっか適当な民家に押し入ってお楽しみと洒落込むのもアリだ。

 その家の者が外出していたとか適当な言い訳をすればいい。


 はぁ、まったくさっさと終わんねぇかな。

 酒が飲みたい。

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