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GAMELIZATION ~ゲーマライゼーション~ NPCの生存戦略  作者: 二上たいら
第10章 抵抗は燃え上がる

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第604話 脱兎の如く

 騎士たちは二人組だ。

 金属の全身鎧で顔は見えない。

 長剣を抜いて僕らに向け、威圧を放っている。


 気圧される。

 レベル差を押しつけられる感覚。

 二人とも間違いなく僕よりもレベルが高い。


 レベルで負け、装備で負けている。

 勝ちの目が無い。


「逃げるよ! メル!」


 包囲される前に振り向いて全力疾走する。

 相手は金属鎧に身を包んでいる。走る速度はそれほどでもないはずだ。


 などという甘い考えは一瞬で吹き飛ばされた。

 ガチャガチャと金属の擦れる音が背後から追いかけてくる。

 一切引き離せない。


 昼間のアーリアは東京ほどではないにせよ人が多い。

 人を避け、押しのけ、時には飛び越えて群衆の中を逃げる。


 それでも騎士たちは追いついてくる。


 威圧ではなく敵意ヘイトが乗った。

 攻撃してくる気だ。


「メル!」


 メルは一人でなら逃げ切れる。

 こういう人混みの中を駆け抜けるのに[地術]は適している。

 だけどメルは僕に速度を合わせている。

 僕は彼女の足を引っ張っている。

 だから……。


 僕はメルに向けて手を伸ばした。


 僕の意図を正確に読み取ったメルは僕の手を取って、引っ張った。


 僕の体は宙に浮き、そしてメルの背中に収まる。

 僕はメルの背中にしがみついた。


 格好悪いからやりたくなかったよね。


 僕を背負ってもメルの[地術]は有効だ。

 加えてメルは剣を抜いて風の魔法剣を発動させた。


 こうなるともうメルに追いつける者はいない。


 しばらくメルの背中で[地術]と[魔法剣]の合わせ技に振り回されていた僕だったが、やがて十分に引き離したとみたのか、メルが減速する。


「ひーくん、どうする?」


 想定と状況が違う。

 僕を追っているのはアーリアの領主であるエインフィル伯爵だ。

 しかし何故?

 エインフィル伯爵は僕がアーリアを発つことに同意していたとレザスさんから聞いている。

 それが方針を変更したということになる。


 エインフィル伯爵に利益を与えていた鏡の製法はヴィクトルさんからエインフィル伯爵にも伝わったはずだ。

 僕を必要とはしていないはずなんだけど。


「僕の部屋で待ち伏せがなかったということは冒険者ギルドはエインフィル伯爵と同調していないということだと思う。ここは冒険者ギルドに向かおう。あそこなら情報が集まっているはずだ」


「わかった。そのまま掴まっててね」


 僕はメルにしがみつく手に力を入れる。

 そしてまるで地面に沿って走るジェットコースターのように僕は振り回される。


 冒険者ギルドまではあっという間だった。

 アーリアの反対側くらいまで移動したことになるんだけど、メルの移動速度が速すぎる。


 そして見えてきた冒険者ギルドは僕らの知るそれとは大きく様変わりしていた。


 扉は破られ、壁にも多くの破損が見られる。

 そして今も戦闘は続いているようだった。


 屋内まで押し込まれていることから、どうやら冒険者ギルド側が劣勢のようだ。


「加勢か、あるいは重要人物を連れて逃げられるかな?」


「騎士は強いよ。アーリア騎士団への入隊はレベル50以上が最低条件だから」


 なるほど。冒険者ギルド側が苦戦するはずだ。


 アーリアの冒険者たちのレベルは大体20手前が中央値だと思う。

 第一選択スキルまで取ったら、そのスキル次第で今後の身の振り方を考える人が多いため、その手前辺りがボリュームゾーンになるのだ。


 次に多いのがレベル35くらいだろうか。

 30層以降の魔石は高く売れるので、ひとつめの壁を突破した冒険者は31層で魔石集めをすることが多くて、自然と35くらいまで上がるのだ。

 だけどそれ以上を目指す人はほとんどいない。

 30層以降の魔石で十分すぎるほどの収入があるから、そこからさらに危険を冒してまでレベルを上げようという気にはならない。


 そもそもアーリアのダンジョンが50層までしかないから、一番奥で戦い続けたとしても50ちょっとくらいまでしかレベルは上げられないだろう。

 そこまで到達した冒険者はもっと大きなダンジョンのある町に移籍するのが普通だ。

 あるいはメルの言葉からするとアーリア騎士団に入団するのかもしれない。


 よって冒険者たちは騎士たちにレベルで大差をつけられている。


「急いでアーリアに来なければならなかった理由がこれだとしたら、加勢しかない」


 やりたくはないけど。


「じゃあ私が引っかき回すから、後はお願い」


「できるの?」


 メルのレベルだって僕と同じ41だ。

 冒険者ギルドの前には入り口を確保する騎士が四人いる。


「勝つのは無理。本当に引っかき回すだけなら」


 足を止めたメルは、剣を抜いて魔力を通す。


「私があの四人の注意を引くから、ひーくんはなんとか中に入って」


「わかった。気を付けて」


「ひーくんのほうが危ないんだからね」


 激戦区の中に入っていくのは僕だ。

 なにができるかわからないけれど、必要だからこういうことになっているのだろう。


 あるいは、と頭に悪い考えが浮かぶ。


 緋美子さんにとって僕が死んだほうがお得だから、死地に送り込まれた、という可能性もあるな、と。

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