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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第2章 異世界と交易しよう

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第56話 レザスさんに商品を見せよう

 僕は立ち上がって右手のひらを左胸に当てた。アーリアで初対面のときに使われる挨拶だ。武器は抜きませんという意思表示らしい。


「初めまして。僕は和也です」


「君がカズヤか。話は聞いている。真っ白い砂糖と透明なガラスの容器を持ってきたと。それから今日はそれ以外にも珍しい品を色々持ってきたとのことだな」


 レザスさんが椅子に座ったので僕も椅子に座った。


「はい。是非ともレザス商会を通じて商売をさせていただこうと思っています」


「早速だが、商品を見せてもらおうか」


「はい」


 僕はリュックサックから商品をテーブルに並べていく。


「これは……」


 レザスさんが最初に目を付けたのは鏡だった。鏡の前で体を揺らしたり、手を振ったりして、それが間違いなく自分を映しているのだと確認する。


「こんなにはっきり映る鏡があるのか。これはどれくらい仕入れられる?」


「7日くらいの間隔で、10枚くらいですね」


「手鏡と合わせて?」


「そうですね。5枚ずつという感じでしょうか。必ずとは言えませんけど」


「装飾が皆無なのが気になるな。この枠は外しても大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ。他の枠を作ってそこにはめ込むことも可能です」


「ふーむ、一品だけだというのなら天井知らずの価格になりそうだが、継続して仕入れられるというのなら、ある程度落ち着いた価格にはできるか。本当にウチを通して売るということでいいんだな?」


「ええ、これを買えるようなお金持ちに伝手がありませんので」


「買い取るというのは難しい。ウチを信用してもらって、売却金の3割を手数料としてもらいたい。それでこの鏡を貴族たちに売り込んでみよう」


「それは契約書をいただけるのでしょうか?」


「用意させる。だが他の商品も確認してからにしよう」


 次にレザスさんが興味を持ったのはビーズだった。キャップを回して外す。どうやら砂糖の容器に触れたことがあるようだ。それから中を覗き込んで、手のひらの上にビーズを少し載せた。


「宝石、ではないな。穴が空いているようだが」


「そこに紐を通して装身具にしたり、服に縫い付けて飾りにできます」


「なるほど。ご婦人方が喜びそうだが小粒だな」


 レザスさんが手のひらのビーズを容器に戻した。


「もっと大粒のものはないのか?」


「次回までに探してみましょう」


「一応、これも鏡と同じように3割の手数料で売り込んでみよう」


 続いて折りたたみ傘を手に取る。


「これはなんだ?」


「折りたたみ傘というものです。ちょっといいですか?」


 レザスさんの手から折りたたみ傘を返してもらい、僕はカバーを外して広げる。


「ほう、素晴らしい。広げると普通の傘ではないか。この構造はとても興味深い」


「このように畳んで鞄に入れておけば急な雨にも対応できます」


「ほうほう。これも継続して仕入れが?」


「できます」


「うむ、だが一旦こちらの職人で似たようなものが作れないか試したい。この技術を買うという意味で金貨30枚出そう」


「ありがとうございます。ではその結果が出るまでは仕入れなくとも良いですか?」


「傘を折り畳んで運べることに良さを見いだせるのは商人か、冒険者くらいのものだし、彼らは外套を着込んでいるものだ。あまり売れるとは思わないな」


 売れると見込んでのことではないのか。つまりレザスさんはこの構造を明け渡すことに対して金貨30枚を支払うと言っているのだ。


「それからこれは?」


 板チョコの箱が5つ。ひとつは封が切られている。


「チョコレートという菓子です。エイギルさんに味見をしてもらうためにひとつ封を開けました。どうぞ試してみてください」


 僕はぱきっと板チョコを折ってレザスさんに差し出す。レザスさんはエイギルさんに目線を送る。


「大丈夫ですとも。甘い味がします」


「そうか」


 レザスさんは板チョコの一片を口に入れる。


「ふむ。確かに甘い。これも貴族たちに喜ばれそうだな」


「熱で簡単に溶けて、冷えたら固まるため加工が容易です。腕のいい料理人であれば、これを元に様々なお菓子が作れるでしょう」


「これも3割の手数料で売り込んでみよう」


「それからこれがボールペンというものです。インクを付ける必要のない羽ペンのようなものです」


 僕はボールペンの先をノックしてペン先を出す。


「ちょうどいい。それで契約書を書いてみよう」


 レザスさんは羊皮紙を取り出して、僕からボールペンを受け取るとそこにさらさらと契約書の文言を書き始めた。


「これも素晴らしい品だ。書き味も良い。かすれることなく書き続けられるとは」


 あっという間に1枚の契約書ができあがる。


「どれくらい書き続けられるのかね?」


「内蔵されたインクが無くなるまでになりますが、補充はできませんので使い捨ての品になります」


「使い捨てか……。是非ともウチで使いたいのだが、具体的にどれくらい使えるのかが分からないとな」


「今日、お持ちした分は見本として差し上げます。使い心地を確かめて値段を考えてみてください。エイギルさんにも同じことを頼んであります」


「分かった。それで今日持ち込んだ品は全部か?」


 緑茶とインスタントコーヒーもあるが、どちらもお湯が必要だし、緑茶は急須が無ければお茶っ葉をより分けられない。


「とりあえず以上ということで」

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