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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第9章 瑞穂の亡霊たち

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第521話 殴り合ったら握手をしよう

 それから僕らに倒された米兵たちの回復作業が始まった。


 刃は潰してあるとはいえ、動けなくなるまで金属の棒で打っ叩いたのだ。

 倒された者は打撲や出血はもちろん、骨折だってしているだろう。


 まず僕とメルが[中回復魔術]で、米兵の回復魔法使いを動ける状態にした。


[中回復魔術]は[回復魔法]の[回復ヒール]と同程度の出力があるから、米兵たちは僕らが二人とも[回復魔法]スキル持ちだと思っただろうね。


 その方が好都合なので訂正はしない。


 地球では[回復魔術]として認知された魔術に、上位版があると知られたら、教えるまで帰してもらえなさそうだからだ。


 そろそろ英文を書いたり、いちいちメルに通訳してもらってとかも大変なので、その辺りは省略するよ。

 実際にはメルの通訳があって僕と米兵の会話は成り立っていると思ってもらっていい。


「素晴らしい戦いだった。君たちのレベルやスキルについて教えてもらえないだろうか?」


「申し訳ないですが、そこは秘密にさせてください。あなたがたから秘密が漏れるとは思っていませんが、なにかあったときにあなたたちを疑いたくない」


「それは賢明だ。教えてくれたらラッキーくらいの気持ちで言ってるだけだよ。気にしなくていい」


 ハッハッハッと米兵は快活に笑う。

 気軽に話してるけど、勲章いっぱい付いてるし、偉い人だよな。

 兵じゃなくて、多分将だ。

 気が付いてない振りをしよ。


「我々が空軍でなければ自信を喪失してしまうところだった」


「そう言えばそうでした。僕らも慢心しないように気を付けます」


 横田基地は空軍基地だから、ここに詰めているのは空軍だ。

 地上で白兵戦をする訓練は最低限だろう。


「そこは自信を持ってもらわないと我々が傷つくよ」


 めんどくさいな!


「君たちの歓迎会を開きたいのだが、機密の問題で案内できるエリアが限られていてね。ここでいいかな? グリルの用意はできている」


「すでに用意されているのであればご厚意に甘えたいと思います。実は朝ご飯も食べていなくて」


 僕は素直に言ったんだけど、メルがちょっと恨みがましい感じで伝えてるな。

 それくらいの英語はわかるよ。


「それはすまなかった。いてもたってもいられなくてね。すぐに用意させよう」


 まだ回復魔法使いたちが慌ただしく回復をしている一方で、元気のある米兵たちが歓声をあげて準備のために走って行った。


 あれだけボコボコにされたのに元気だなあ。


 回復魔法は即効性に優れるので、結構な重傷でも重ねがけすることでほぼ全回復まで持って行ける。

 とは言え、これだけの人数となると回復魔法使いの魔力が持たないだろう。

 大半の人は回復しきっていない状態のはずだ。


 その辺はやっぱり厳しい訓練を受けている軍人ということなのだろう。


「君たちが秘密の宝石箱ということはわかったが、中身を広げ始めたこともわかる。君たちの望みを知りたい」


 これは結構クリティカルな質問だな。

 答え方ひとつで米軍、ひいては米国が敵に回る可能性もある。


「僕が想定しているのは国家の枠を超えた危機的な状況です。国家間で綱引きのようなことはしたくありません。活動に必要な個人的収益は必要としますが、これらの情報を使って金儲けがしたいわけでもないんです」


「そういうわりには稼いでいるようだが?」


「なにをするにしても金はかかりますから」


「それは違いない。ステーツの不利益、いや、国家の危機を引き起こすのが目的ではない?」


「誓って。むしろ味方をしてくれる方には優先的に情報を渡すつもりだってありますよ」


「そうだな。君の行動は確かにその原則に従っているようだ。昨日の出来事は異分子が紛れ込んだだけ、ということだね」


 米兵は注意深くそう言った。

[湧水の魔術]の譲渡会に現れた諜報機関とは関係のない個人。

 つまり緋美子さんのことだ。


「ああ、彼女ですか。僕の仕込みではありませんよ」


「それは頭の痛い話だ」


 そうだね。僕が首謀者なら僕を抑えればそれで済む。

 だけど彼女が本当に善意の第三者なら、まず彼女が何者なのかから探らなければならない。


「というか、その辺は情報共有されているんですね。てっきりCIAは独立して動いているのかと思っていましたが」


「水の問題だったからね」


「それはまあ確かに」


 30層で見た光景でわかるように、飲用水というのは人間にとって必須の物資だ。

 水がなくては人は生きられない。

 そして飲用できる水というのは限られている。


 どこからなら飲んでいい、というのは状況にもよるだろうけど、軍隊のような戦闘行動が必要な組織にしてみれば、最低限の衛生が確保された水が必要だ。

 いざというときに兵士たちがみんな下痢だとか目も当てられない。


 おそらくCIAから米国に渡ったこの情報はすぐさま米軍全体に共有され、以前から目星をつけていたタイの犯罪組織に強襲をかけた、と言ったところだろう。

 事前に知っていなければ不可能な早さだったから、なんというか、保留された問題事項のひとつだったのではないかと思う。

 あるいは手札として隠されていたか。


「彼女についてなにかわかりましたか?」


「我々に共有はされていないね。ただいつでも出撃できるようにという常時命令が繰り返された」


 それはまあ、空軍はいつだって緊急発進できるように備えているものだけど、わざわざその命令を再確認したということは。


「まさか米軍が日本国内を空爆する、みたいなことはおきませんよね?」


「そんなことは起こりえない。アメリカと日本は同盟国だよ。ただ不幸な事故がおきることはある」


「CIAで済ませられないんですか?」


「できない。というより、できなかった、が正しいはずだ。君は現場にいたのでは?」


 ああ、そうか。工作員はすでに返り討ちにあっているんだった。

 さすがに陸軍を展開はできないし、戦闘機から不幸にも落下した爆弾が直撃するようなことしかできないということか。


「我々が動く前に日本側で確保してもらうのが一番だが、いざというときのための不測の事故は準備される」


「できるだけ引き延ばしてほしいですが、本国から命令がくれば迅速に実行されますよね」


「それが文民統制だからね」


 うーん、水の話だからそりゃ多少の人死にが出ることは覚悟していたけれど、日本国内を空爆はちょっと僕の許容範囲を超えているな。


 これは明確な基準があるわけではなくて、あくまで僕の感情的な話なのだけど、緋美子さんやその仲間が犠牲になるのは仕方がないと思う。

 なぜなら彼女は[湧水の魔術]を国家の思惑を無視して公開しようとしているから。

 だけどそれに無関係な人々が多数巻き込まれるなら、話は変わってくる。


「説得できないか試してみます。彼女について情報を知る手段を教えてください」


 僕がそういうと米兵はニヤリと笑った。


「それならちょうどいい人物が現れた。彼に話を聞いてみるといい」


 目線を追いかけて振り返るとスーツ姿の男性が穏やかな笑みを浮かべて片手をあげていた。

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