表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第9章 瑞穂の亡霊たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

524/530

第519話 僕らの模擬戦

 さて、僕らは強さを見せつけた。

 米兵たちはどういう反応をするだろうか。


 と思ったけれど、先に勝ったメルがすでに話を通してくれていたみたいだ。


 メルさん、タッグ戦なんだから僕の加勢に来てくれてもよかったのでは?


 僕らは彼らに武器を手渡し、無手になった。

 そんな僕らを囲むのは100人の武装した米兵たち。


 僕らの提案によって開始の合図はない。

 実戦と同じような状況にするためだ。


「作戦はどうする?」


「いつもどおり。僕は状況を伝え続ける。アナが判断して決定する」


 米兵たちは明らかに本気になっている。

 僕らをただ囲んでいるのではない。

 6人単位の小グループ、つまりパーティを作った上で、僕らを取り囲んでいる。


 パーティを編成するメリットはあまりにも大きい。

 味方の状態がある程度わかるようになるし、範囲系の補助魔法はパーティ単位でかけられるものもある。


「着々と準備が整っていくな」


「先に仕掛けたほうが良さそうだね。ひーくん、アシストお願いできる?」


「やれるだけやってみるよ」


 正直、本気を出したメルについていける気はしないけれど、アシストくらいならなんとか。


「んじゃ、いっくよー」


 言った途端にメルはすっと身を落とした。

 そしてまるでクロスボウから放たれたボルトのようにすっ飛んで行った。

[地術]を使っているから、飛んではいないはずなんだけど、もうそう表現するしかない。


 僕は地面を全力で踏みつけた。


 どんっ! と衝撃が辺りを駆け抜けた。

 アスファルトは思っていたよりずっと脆くて、数センチは陥没しただろうか。


 そして、叫ぶ。


「うおおおおおおおおおおおおおおお!」


[咆哮]スキルは獲得していないけれど、全方位に向けて全力の敵意ヘイトを放つ。

 米兵たちはレベル20を超えている。

 敵意ヘイトを感じ取れる。


 だから僕を無視できない。

 遥かにレベルの高い相手が敵意をむき出しに咆哮しているのだ。


 僕に意識が向く。

 それで十分。


 姿勢を低くして米兵たちに突っ込んでいったメルはあっという間に数人を倒した。

 ダメージを与えて倒したというよりは、膝などを攻撃して姿勢を崩させたというほうが正しい。


 一本のロングソードが柄をこちらに向けて飛んでくる。

 メルが奪った武器を僕に向けて[投擲]したのだ。

 僕はそれを掴んだ。


 便利だよね。[投擲]スキル。

 不器用な僕でもうまく受け取れる位置に武器を投擲することも可能なんだ。


[鷹の目]スキルを使って周囲を見回す。


 米兵たちは僕からの敵意ヘイトに飲み込まれている。

 僕は米兵たちの注意を引きつけるためにメルとは逆の方向に移動する。


 早すぎないように注意する。

 見失われるほうが面倒だ。


 いまの僕は重戦士だ。

 敵の敵意ヘイトをコントロールするのが役割だ。


 僕は勢いを止めずに包囲網にぶつかっていく。


 米兵もパーティを組んでいる。

 当然、重戦士が僕の前に立ち塞がる。


「Come on! Son of a bitch!」


「英語で罵倒されても響かないね!」


 剣と剣がぶつかり合う。

 弾き飛ばされたのは相手の剣だ。


 身体強化の魔術構成には気づかれたかな?

 気づいてもいいよ。

 この一瞬で覚えられるとは思わないしさ。


 というか、知ってた?

 漫画とかでさ、ぶつかり合った剣が弾き飛ばされて、弾かれた人がくっ! てなるシーンあるじゃん。

 あれ、実際にやるとどうなるかというと、剣が弾かれなかったほうは、そのまま相手を攻撃できちゃうんだよね。

 あと弾かれた剣が上に飛ぶのは稀だよ。


 肩に僕の剣を食らった米兵は、肩を押さえてうずくまった。

 刃は潰してあるとは言え、骨を折った感触がある。

 ごめんね。でもすぐに回復してもらえるからいいよね。


 なので悪いね、もう一発食らってくれよ。


 僕はうずくまった米兵を蹴り飛ばした。

 重戦士を担う体格のいい男性だ。

 壁を作るように僕らを包囲していた米兵たちの中を、蹴り飛ばされた彼は砲弾のように人を巻き込みながら吹っ飛んでいく。

 うーん、レベルが上がっても体重は増加しないから、飛ばすと飛ぶんだよな。


 あまりにも暴力的なボウリングだ。

 人間がなぎ倒されていって、ストライクとはいかないよな。

 いや、strikeって直撃するとかそういう意味か。

 じゃあストライクか。


「一角を崩した!」


「じゃあ時計回りに!」


 あ、合流はしないのね。

[鷹の目]スキルで確認しているから、メルの動きはわかる。

 いや、メルは見えてないけど米兵たちが倒されていくからさ。


 米兵の間から水の塊が飛んでくる。

[水球ウォーターボール]じゃないな、[纏わり付く水妖精アンダイン]だ。

 これは食らいたくない。

 追尾性のない魔法だけど、レベル差があってもデバフは通りやすい。


 だけど気づくのが遅れた。避けきれない。

 なので僕は手近にいた兵士を掴んで盾にする。


[纏わり付く水妖精アンダイン]は着弾した場所に張り付く。敵味方関係なく。


 一応、顔に当たらないようには気を付けた。

 呼吸器官にこの魔法を食らうと普通に死ぬからね。


 胴体に[纏わり付く水妖精アンダイン]を食らった兵士の重さが増す。

 僕はちょっと持ち上げていた彼から手を離す。


 というか、[纏わり付く水妖精アンダイン]が使える水魔法使いがいるということは!


 横薙ぎに振り払ってきた剣を、僕は剣で受け止める。

 そしてそのまま膂力で吹っ飛ばされた。


 体重が軽いとこれだよ。

 この感じは水魔法の[汝の血は燃える(ヒートアップ)]と[剛力パワー]スキルかな。

 この二つのスキルは競合しないから相性がいい。


 僕は両足で着地する。

 僕もメルの動きをまねるべきだろうか。

[地術]使いは常に接地しているように気を付けるから、吹っ飛ばされることって滅多にないんだよね。


 米兵たちと距離ができたことで、一斉に攻撃魔法が降り注ぐ。


 水が多めで、次に火が多く、土も混じっている。風はほとんどいないな。


 僕は攻撃魔法を避けながら前進できるほど体捌きに自信がないから、どうしても攻撃の来ない方向に走ることになる。

 幸いメルが一角を崩してくれたお陰で全方位からの集中砲火にはならなかった。


「水魔法使いが多い! 時計回りは無理っぽい!」


 避けきれない攻撃魔法を剣で切り払いながら、僕は後退する。


 魔法攻撃の厄介なところはレベル差があっても一定のダメージがあるところだ。

 いや、自分たちが高レベルの敵を相手にしているときは重宝するんだよ。


 いくら[鷹の目]があっても全てを受けきれるはずもなく、数発着弾する。


「そのまま下がって! 同士討ちさせて!」


 なるほど。米兵たちの集団に紛れ込めば攻撃魔法は来なくなる。道理だ。

 でも!


「無理かも!」


 さっきも言ったけど、僕は魔法を回避しながら前に出られるほどの動きはできない。


「一旦包囲の外に出るよ!」


「わかった!」


 僕は攻撃の来ない、つまりメルが切り崩して空いた包囲の輪から外に飛び出す。

 途中で落ちてた武器を蹴り上げて、[投擲]スキルで後方に軽く投げつける。


 弱めに投げたけど当たり所が悪くて死んだらごめんね!


[追加装甲プロテクション]のかかった兵士たちが前に出ていて、僕が投擲した武器は誰を傷つけることもなかったようだ。

 良かったような、悪かったような!


「回復魔法使いが最低でも4人!」


 回復魔法使いが参加してるのはズルくない?

 こっちは前衛2人だけなんだけど!


「回復魔法使いを叩くよ! 被弾前提!」


 確かに僕らは[中回復]魔術が使える。

 魔力にはまだ余裕があるし、多少の被弾は無視できる。


「メル、そいつじゃない!」


 味方に守られるムーブをしている男性をメルは狙ったけど、それはブラフだ。

 メルは誘い込まれた。


 これが対人戦か!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ