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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第9章 瑞穂の亡霊たち

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第505話 包囲される前に逃げる

 イレギュラーはあったが、その後は比較的スムーズに物事が進んだ。

 と、言いたかったんだけどね。


 緋美子さんが出て行って30分くらい経ってからだろうか、部屋にいる人たちのスマホが多少の時間差こそあれど一斉に鳴った。

[聞き耳]スキルが会話を拾うけど、日本語のものがほとんどなくて、聞き取れたのは「全滅した」の一言だけだ。

[聞き耳]スキルは拾いたい音だけを拾うことのできる便利なスキルだけど、どの音を拾えばいいかはっきりしていないときは、どれもこれも拾ってしまって混乱する。


「さっきの女の人を狙った人たちが逆にやられちゃったみたいだね」


 メルは[聞き耳]スキルを持っていないから、いずれかの言語でのやりとりを聞いたのだろう。

 この場では誰も理解できないだろうと、母国語で話している人が混じっている。


 まさかこの場に地球上のあらゆる言語をマスターしている人間がいるとは思わないよね。


「そんなことありうる?」


「余裕だと思うな。さっきの人、隠してたけど、私たちと同じくらいのレベルじゃないかな。もう一人いたし」


「マジか」


「うん。マジ」


 だとするとレベル40くらいが二人いたということになる。

 僕らみたいなパワーレベリングによる促成ではないのだとすれば、相当にというか、地球側では群を抜いて戦闘力があることになる。


「それで逆に強さがわからなかったのか」


 レベル差がある程度あると、相手の強さはなんとなくわかる。

 僕がよくレベル5くらいだな、とか10くらいだなとか言ってるのは、その感覚的なものだ。


 だけどレベルが近いか、上だとわからなくなる。

 相手が意図的に威圧感などを出していれば、僕よりレベルが高いなとかわかるんだけど、隠されると全然だよね。

 レベルが上がっていない人と同じように感じてしまう。


「さっきの人はたぶん後衛職だから、それでわかりにくかったのもあると思う」


 レベルの高さはどうしても身のこなしに出るものだ。

 前衛職ならなおのこと。


 だけど後衛職の人は戦闘時にそれほど体を使わないから、動きに差が出にくいよね。


「だけど地球でレベル40なんて聞いたことない」


 攻略組と呼ばれるトップレベルの探索者でも到達階層からすると、まだレベル40には達していないはずだ。


 いや、そうとは限らないか。

 自分たちの進行度を馬鹿正直に伝えるとは限らない。

 実際にはダンジョンの40層を超えているけれど、35層が最高到達深度だと報告する可能性だってある。


 あるいは報告していたとしても、その国などが公表を控える可能性があるだろう。


 レベルの上がった個人は軍隊だって圧倒できるからだ。

 誇示するべき戦力と、隠蔽しておく戦力の両方があったほうがいいに決まっている。


「なんにせよ、ただ者じゃないということか。もっと話を聞いておくべきだったね」


「あの感じならまた接触してきそうじゃない?」


「聞き流してたけど、レベルの話を聞くと不安だな。前衛二人組にはこっちにいてもらおうか」


 シャノンさんとエリスさんはどうせ普段はベクルト剣術道場で訓練してるか、酒飲んでるかどっちかでしょ。

 こっちでの生活を僕が支援するなら喜んで来てくれるはずだ。


 僕らがこそこそ話し合っている間も、各国の諜報機関や外交官の人たちは慌ただしくしている。

 状況的にそれどころじゃないけど、[湧水の魔術]も習得しなければならないという板挟み状態らしい。


「こりゃ切り上げて撤収したほうが良さそうだな」


 歌舞伎町の代筆屋が寄ってきて言う。

 かなり深刻そうな顔だ。


「ですが、彼らが納得しますかね? それほど状況はマズいですか?」


「マズい。かなり派手にやりあったみたいで、警察も黙っていられない。外交官特権があるヤツばかりでもないし、封鎖される前に出てったほうがいい。というか、連れて行ってくれ。おまえらは確実に包囲を抜けられるんだろ」


「そんなに便利なものでもないですが、アナ、僕がこれから言うことを英語でも伝えてほしい」


「いいよ」


「皆さん、状況がよくありません。一旦この場は解散として、後日同じような場を設けます。日時の指定は行いません。どうしても知りたいというのであれば、いまここで名刺なり、連絡先を渡してください。説明が終わってから2分の猶予を設けます」


 僕が言った内容をメルが英語で復唱すると、何人かが僕に名刺を押しつけるようにして、この場にいた全員がとっととこの部屋を脱出する。

 外交官特権があると言っても、いつでも振りかざしていいというわけでもないだろうしね。


 僕らも事務所を脱出して、警察の少なそうな通りから包囲されるであろう範囲を抜ける。


 現場を離れるためにタクシーを拾った。歌舞伎町の代筆屋を助手席に座らせて、目的地も任せてしまう。

 とにかく今は歌舞伎町近辺から離れられたらそれでいい。


「なにがあったんですか? 僕らは漏れ聞こえた程度のことしかわかってなくて」


「こっちも断片的なことしかわからん。とにかく炎と氷が使われた。魔法なのか、スキルなのかもわからん」


「マジかー」


 別にダンジョンの外では魔法の使用が禁止されているとか、そういうことはない。

 だけど改正銃刀法によれば、魔法もスキルも武器として扱われる。


 攻撃力のある魔法を、攻撃目的で使えば暴行罪に、怪我をさせたら傷害罪が成立する。

 現行の銃刀法では武器を持ち歩くことは許されているけれど、自衛のため以外に使っちゃダメだよ。っていうのと基本的に一緒だ。


 ただ火属性はちょっと事情が異なるんだよな。

 延焼の恐れがあるため、より重い罪、つまり放火罪とかで立件される。

 だから[火魔法]のスキルを持っていても、使いどころが難しいんだよね。

 運営のバカ調整のせいで、火魔法でも他属性より攻撃力があるというわけでもないのに延焼はちゃんとするの、本当に使いどころが難しい。


「緋美子さんのほうかな?」


「氷も使われたんなら、どっちかはわかんないね。もう一人を見ていないからなんとも言えないけど、まあ、属性二種持ちも別に珍しくはないし」


 メルさん、それアーリアでの常識なんですよ。

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