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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第491話 【小鳥遊ユウ】は刺し貫く

挿絵(By みてみん)


 星が終わりを迎えるときのまばゆい爆発は、夜を昼に変えてしまうほどだと聞いたことがある。

 私が目にしている光も、そういう類いのものなのではないか。


 そう不安を抱かせるほどに強い光。


 メイが、橘メイが本気を出したらこうなるのだ。

 誰もが目を奪われた。

 私たちも例外ではなかった。


 日々の練習のおかげで動きは止まらなかったけれど、きっと私たちがなにもしていなくっても、誰も気付かなかったんじゃないかな。

 それほどまでに、橘メイはすべてを持って行った。


 ただ“かわいい”というだけが、ここまで暴力的になるなんて思いもしなかった。


 釘付けになる。って言葉があるけれど、文字通りの意味だったんだ。

 あまりにもすごいものを見ると、人は目を離せなくなる。身動きが取れなくなる。なにも考えられなくなって、呼吸すら忘れる。


 きっと橘メイはこのかわいさですべてをひっくり返せる。

 遠く離れていた観客たちの心は、橘メイがわしづかみにして、この場に引っ張ってきた。


 いま橘メイが観客へレスポンスを求めたら、彼らは総立ちになって応じるだろう。


 熱気と言うよりは驚喜であり、狂気だった。


 観客はすべての注意を橘メイに向けていた。

 彼女が次になにをするのか、その毛先の動きまでも見逃すまいと凝視していた。


 だから橘メイが振り返って私に、ボクに、小鳥遊ユウに向かって手をあげたとき、ボクがそれに応じられたのは、単にボクも観客と同じで、メイの次の動作に注意を払っていたからなんだ。


 パシッと手のひらが打ち合わされて、くるりと立ち位置が入れ替わった。


 私が、ボクが、小鳥遊ユウがステージの最前列に送り出された。


 一瞬呆けた。

 意味がわからなかった。

 だけど次の瞬間に、弾けるように理解した。


 つまり、そういうことだ!


 次はお前がやってみろ、と。

 お前にならできるだろ、と。


 橘メイは小鳥遊ユウにそれができると信じているのだ、と。


 そう示されたなら、応えるしかないじゃないか!


 曲の振り付けはもう橘メイがめちゃくちゃに壊してしまった。

 ボクはボクの引き出しから、曲に合わせた答えを導き出さなきゃいけない。


 しらないよ、そんなの!


 ただ曲は完璧に頭に入っている。

 この先になにが起こるかをボクは知っている。


 だから魅せるよ!

 ボクの魂の輝きを!


 ボクのダンスは男性的な動きが多い。

 ボクの少年っぽさを最大限に生かした振り付けだ。


 それなら死ぬほど頭と体が覚えているからさ!


 踊れ! そして止まれ!

 ボクが一番格好よく見えるポーズで!


 観客を魅了するんだ。


 ボクは橘メイにはなれない。

 あんなにかわいくないし、体つきだって貧相だ。

 動きにキレがあるわけでも、わけのわかんない魅力があるわけでもない。


 だけど!


 ボクにはボクの理想がある!


 こう魅せたいと思うボクがいる!


 頭に浮かんだのはボクの大好きなひと。


 ごめんね、ヒロ。

 君のことは大好きだけど、君のようになりたいとは思わないんだ。


 ボクは夜のとばりにはならない。


 それを刺し貫く光になりたい!


 橘メイの目がくらむような光じゃなくて、もっと鋭くて、そう、まるで鋭い槍のような。


 ボクにはみんなまとめて魅了するような、そんな力はないからさ。


 あなたに!


 あなたに!


 あなたに!


 あなたに!


 いま目の前にいるひとりひとりのファンに向けて、全力でアピールする。


 見なよ。いまのボクを。


 なよっとしたかわいい王子様なんかじゃない。


 あなたの心を貫いてみせる。


 女性ファン向けのメンバーだと思って、ボクには目もくれていなかった男性ファンにも、ボクは惜しみなくアピールする。


 やあ、ボクは格好いいだろ。そしてオマケに女の子なんだぜ!


 ボクにもちゃんと女の子としての魅力があるって知ったからさ。


 みんな、そういうのが好きだろ。

 男の子みたいに思ってた子が不意に見せる女の子らしさとかさ!


 見なよ!

 こんなに魅力的な子が踊ってるんだ。


 ボクは橘メイではないけどさ。


 小鳥遊ユウだって悪くはないだろ?


 ちょっと試しに推してみなよ。

 ちょっと一回だけでもいいからさ。

 そしたら良さがわかるから。


 ね?

 どうかな?


 ボクはボクにできる最高を弾けさせる。


 勝てないまでも、負けやしない!


 ステージでも、そして恋でも!

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