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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第487話 漏れ出す敵意

挿絵(By みてみん)


 僕の素人目にはほぼ完璧にリハは進んだ。

 まあ、メルはいくつもトランシーバーで指摘してたけど。


 ステラリアのパフォーマンスにはなに一つ問題はない。

 これで観客が盛り上がらなかったとすれば、それはパフォーマンスの問題ではない。外的な要因だ。


 ステラリアのメンバーが本番に向けて最後の休憩に入ったので、僕は控え室に向かうメルとは別れて、会場外の様子を見に行くことにした。


 すでに物販が始まっていることはトランシーバーで報告を聞いている。


 ライブのチケット代って運営からするとあんまり儲からないんだよね。

 満席でもない限りは、ライブの会場に支払う諸費用でほぼ消える。


 だから収益の柱となるのは実は物販だ。

 原価率が低いグッズが飛ぶように売れてこそ芸能事務所が儲かる。


 そういう仕組みなのだけど……。


 物販に列はできている。できているが、以前のライブで列形成を任された経験からすると、かなり短く感じる。

 あの時よりキャパは大きく、チケットは完売しているから、客数はずっと多いはずだ。それに合わせて物販スペースも大きく取ってあるが、飛ぶように売れているとはどうも言いづらい。


 一周年に合わせてグッズは一新され、どれもファンからしたら手に入れておきたいはずだ。このライブ会場の物販でしか手に入らないとしているグッズも多い。

 個数制限を設けていたけれど、それを解除すべきか運営スタッフがやりとりしているのがトランシーバーから聞こえてくる。

 しかし物販開始前ならともかく、すでに個数制限ありで売り始めているものを途中から制限なしに変えればクレームになるかもしれない。


 損失の補填は僕ができる。

 ここで売れなければ売れなかっただけグッズの希少性が上がるとも考えられる。

 考えられるだけだよね。それは。


 状況が伝えているのはファンの熱気が以前ほどではないということだ。

 わかっていた。

 わかってはいたけれど、こうして形を持って目に見えると胸に重いものがのしかかってくる。


 さらに周辺を歩いて回ると待機列からも、ひそひそ話というには大きな声で橘メイの画像について話しているのが聞こえてくる。

 ライブ前の熱気というよりは、一種の狂気が渦巻いているようだ。


 ステラリアを信じていないのであれば、なぜここに来た?

 文句を言うならSNSで勝手にやれよ。

 ここにはステラリアを信じて楽しみにしてきているファンだっているはずなんだ。

 その気持ちにわざわざ泥水をぶっかけるのはどうしてだよ!


 だけど僕はその言葉を胸にしまって、なに食わぬ顔で会場を見て回る。


「樋口さん」


 声をかけられて足を止める。

『別班』の隊長さんらしき人だ。

 顔色が青白い。立っているのもやっとに見えた。


「なにかありましたか?」


「なにかあったのだとすれば、あなたですよ。敵意ヘイトが漏れています。部下たちが動揺を抑えられません。事情は理解しているつもりですが、なんとかなりませんか? こんなに強い気配をふりまかれたら本命を見逃しかねません」


「それは、すみません」


 僕は深呼吸して気持ちをコントロールしようと努める。

 威圧するつもりはなかったけれど、[威圧]スキルを習得していないから、逆に制御が難しいところがある。

[威圧]スキルがあれば、オンオフを意識すれば効果を消せるはずなんだけどな。


「待機列に異常はありませんか? レベルの高い人がいたら敵意ヘイトに当てられて気分が悪くなっているかもしれません」


「それは問題ないみたいです。敵意ヘイトを感じ取れるほどレベルを上げている一般人はほとんどいませんから」


「そうみたいですね」


 僕の感覚ではもっとレベルを上げている人がいる感じだったんだけど、やっぱりレベル10の壁は大きいんだろう。敵意ヘイトを感じ取るには最低でもレベル15は欲しい。


 それで僕は思いだしてメルに電話をかける。


「メル、ごめん。さっきの敵意ヘイトは僕だ。ユウは大丈夫?」


『こっちは平気。ユウくんも説明したら落ち着いたよ。びっくりさせないでよね』


「本当にごめん。気を付けるよ。それじゃまた後で」


『はいはい』


 電話を切って隊長さんに向き直る。


「逆にこうは考えられませんか? 観客やスタッフの中に高レベルの工作員が紛れ込んでいる可能性は低くなった」


「そういう捉え方もありますね。今の敵意ヘイトに気付いて平気でいられる者はそうはいないでしょうから」


「暴力的な妨害はほぼないと見ていいか。ご足労をおかけしただけになってしまいましたね」


「まだ油断はしませんよ。銃器や爆発物がゲーム化(ゲーマライゼーション)以前と比べると入手しやすいですからね」


「確かにそうですね」


 それらの武器で僕らを害することはほぼ不可能だけど、ステラリアのメンバーはそうではない。

 ライブ会場に武器の持ち込みは厳禁だけど、例えば3Dプリンターで成形したプラスチック製の銃なんかだと金属探知機の検査をすり抜ける恐れがある。


「入場時の手荷物検査は我々が監視します。武器の持ち込みを許す気はありませんが、絶対ではありません。対テロでは安心と油断が最大の敵です。スタッフが協力してなにかをすでに運び入れている可能性もある。疑い出せばキリがありませんが、疑い続ける必要があります」


「帰るまでが遠足だ、と」


「まさしく。ライブが無事に終わった直後が一番危ないと思っていますよ。樋口さん、あなたは言いました。ライブが終わるまで、と。あれはよくありませんでしたね」


「あっ」


 僕は失言に気付く。

 ライブが終わった後の安全確保ができていないのだ。


「もちろんライブの後であっても水を生む魔術を受け取る前になにかあればあなたの協力が得られなくなる恐れがある。よほどのバカ野郎でないかぎり、なにもするはずがないのですが、相手の知性に期待をするのは一番やってはいけないことです」


 対テロで気を付けること、一番が多くない?

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― 新着の感想 ―
今回のは逆ギレにしか見えん。 ドルヲタはそういう物として商売してるのに、商売相手の不興を買ったのは自分らの不始末じゃんな。
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