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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第478話 それはそれとして

 白河ユイに呼ばれて部屋に入ると、ちゃんと服を着ていてまずは安心する。


「ユイちゃん、正座」


 ちょっと強めの語気で言うと、白河ユイは嬉しそうに床に正座した。

 嬉しそうに正座することってあるんだ。


「昨日の記者会見のきっかけはわかってるよね」


「ヒロさんがメイをホテルに連れ込んだからです」


 ど真ん中に直球を放り込まれて、僕は白河ユイに指を突きつけた。

 これ完全に振り遅れて三振だよね。


「はい、大正解! つまりうかつな行動をして、それを撮られてしまったからだ。それが周りにどれだけ迷惑をかけたか、ユイちゃんは迷惑を被った側だからわかるよね」


「大丈夫です。誰にも見られてませんし、撮られてませんから」


 ん~~~、『別班』の人らが絶対に見てるんだよね。

 というか、僕の警護に張り付いているって言ってたのに、白河ユイの不法侵入を許すってどうなってんの?


 あ、鍵を持ってたからか。

 じゃあ不法侵入じゃないか。


 実際、僕とメルは白河ユイがこの部屋に出入りすることを認めている。

 掃除してもらうためだとはいえ、彼女がこの部屋に入ってくるのは違法ではない。


 ドアガードがあるのに、かけてなかった僕が悪いよね。


 まあ『別班』について白河ユイに伝える必要はないか。

 ソロ探索者なら気配察知能力も高そうだけど、『別班』の人たちのほうが一枚上手ということなのだろう。


 それにちょっと安心した部分もある。

 白河ユイが『別班』を見逃したということは、彼女が動物を[調教]スキルで操っていない。少なくとも自分の周りを見張らせてはいないという証明になる。

 なぜなら以前の白河ユイなら、自分の周りで怪しい動きをしている人間を、彼女が操った動物たちが見逃さなかったからだ。


「だとしても男の寝てるところに全裸で入り込んでくるのはよくないよ。なにかあったら大変じゃないか。今日はライブの当日だっていうのに」


「だからじゃないですか。今日のライブは厳しいものになるってわかっています。だから勇気が欲しかったんです。ヒロさん、最近練習も見に来てくれないじゃないですか」


 言うて1日2日のことだけどね!


 だが白河ユイの言いたいこともわかる。

 要は不安なのだ。

 今日、ファンがステラリアに対してどういう気持ちで来るのかわからない。


 一連の報道をまったく意に介さない人もいるだろうし、暴言を吐きにくる反転アンチだっているだろう。

 問題はその割合だ。

 ステージの空気がどちらに傾くかがわからない。


「誰かひとりでも絶対に私を推してくれるってわかっていたら頑張れます」


「こんなことしなくても、僕はステラリアの味方だよ」


「口ではなんとでも言えます。行為で示してください」


 白河ユイは真顔のまま両手を広げてウェルカムのポーズになる。


 それを言うなら普通は行動だよねえ!


「確かにライブは厳しい空気になると思う。だけどファンの人たちはそれでも会場まで足を運んでくれているんだ。その人たちの期待を裏切っちゃいけない。君たちは『会いに行けないアイドル』なんだから」


「それはそれ、これはこれです」


「ええー」


「『会いに行けないアイドル』という偶像を私たちは売っているんです。そのイメージが傷つかなければ、裏でなにをしていてもいいですよね」


 それはそうなんだけどさあ。


 ステージの上にある虚像のまま現実の生活を送れ、なんて無茶難題だ。

 誰だって常に完璧ではないけれど、ステージの上では完璧であるように振る舞う。


 でも本当に表に出さないように気をつけてね。


「納得いただけたようなので続きをしましょう。ヒロさんは脱ぐところを見てたいですか。脱がせたいですか?」


「しないよ!?」


 この流れでどうしてそうなると思ったんだ。この子は。


 すると今度は白河ユイが僕に向けて指を突きつけた。


「私を自由にしたのだから、自由恋愛も認めるべきです。そうですよね。特定の相手がいても、別に体の関係くらい好きにしたらいいじゃないですか!」


「ダメだよ!!!!」


 普通にダメだよ、それは! 大問題だよ!

 なんで唇を尖らせて拗ねるの!?


「粘膜接触したんですから、もう一緒ですよ」


「唇は確かに粘膜だし、避けなかった僕が悪いのはそうなんだけど、言い方ぁ!」


 こんなん代筆屋の息子か、あるいは代筆屋本人が聞いたら泣いちゃうぞ。


「全部見たくせに」


「勝手に脱いだのに、この言い草だよ!」


「触ったくせに」


「それはウソだよね。さらっと捏造してくる!」


「したくないんですか? 正直に答えてください」


「これ絶対トラップでしょ。なんの話をしてるの!?」


「セックスの話です」


「はっきり言うんかい!」


 僕は頭を抱える。頭痛が痛いってこういうときに使う言葉なんだろうな。


 もう、やめなよ。本当にやめときなよ。清楚系アイドルだよ。きみ。


 僕は白河ユイにスマホの時計を突きつけた。


「ほら、時計見て、時計。そんな時間はない。今日はライブ当日。当然リハもある。僕は9時頃には到着すると言ってあるんだ」


「そうですね。わかりました。では時間があるときにするということで。約束です。さあ、行きましょうか」


 白河ユイは立ち上がろうとする。

 僕は慌てて、その肩をつかんで強制的に座り直させた。


「ちょっと待った。いま話をしよう」


「どうしてですか? 時間がないことを理由にしたということは、時間があるときならいいということですよね? 私の論理は間違ってますか? 合ってますよね」


「早口になってる時点でちょっと無理を言ってるのはわかってるよね!」


「まずは質問に答えてください」


「戻った!?」


「したいんですか? はい」


「勝手に答えないで!」


 白河ユイってこんな子だっけ?

 いや、確かに空気を読まずに突っ走るタイプではあったけどさあ。


「大丈夫だよ。ユイちゃん。そんなふうに自分を犠牲にしなくても僕は君を絶対に裏切らない」


「でもオリヴィアさんと結ばれてるんですよね」


「それはそれ、これはこれだよお」


 僕は天井を仰いだ。

 知ったばかりの天井だ。

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― 新着の感想 ―
ちょっとウザさがいい加減きついですね……
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