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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第477話 誤りの朝

 僕は神楽坂に借りた部屋のほうで目を覚ました。


 8月30日。

 つまりステラリア一周年ライブの当日だ。


 まずは自衛隊の人たちと合流しなければならない。

 ライブの警備として内部に入りこんでもらうためだ。


 昨日のうちに確認したのだけど、彼らは特殊作戦群ではないらしい。

『別班』と呼ばれる情報部隊なんだそうだ。


 なんでもちょっと前にドラマで取り上げられてしまい、知っている人は知っている情報部隊とのことで、僕が知らなかった旨を伝えると、自衛隊の隊長らしき人はちょっと寂しそうだった。


 秘密組織が知られてないって寂しがるのはどうなのよ?


 と思いつつ、調べてみたら10年も前のドラマで、そりゃ僕は知らないわけだ。


 ただ特殊作戦群も動いていて、外での警備はそちらの担当であるらしい。


 ダフ屋が規制されたり、転売対策でチケットが本人確認できるようにされたりして、こういうイベントへの潜入は難しくなってきているそうだ。

 今回は僕が関係者パスを用意したから、そういう潜入は必要ない。

『別班』の皆さんには堂々と内側に上がりこんでもらう。


 僕の都合で巻き込んでいるわけだから、できることはしますよ。


『別班』は常に僕の警護として張り付いているので、こちらから予定を合わせる必要はないとのことだ。

 僕が動けば『別班』もそれについてくる。


 それは監視っていうんですよね。別にいいけど。


「で、どうして僕のベッドにいるのかな?」


「既成事実を捏造しようと思いまして」


「捏造って言っちゃってるんだよなあ」


「これなら証拠十分かと」


 カシャと白河ユイが手にしたスマホからシャッター音が鳴る。

 ベッドに寝転がり、掛け布団から衣服の見えない肩を出した白河ユイと僕のツーショット画像が撮影された。


 こういうことするのは鳴海カノンだと思ってたけど、まさかの展開だよ。


 そういえば白河ユイには部屋の掃除をしてもらうために合鍵を渡していたんだった。

 にしたってこんなことになるとは思わないよね。


「はい、没収します」


 僕は手を伸ばして白河ユイからスマホを奪おうとする。しかしそのためには布団から手を伸ばさなくてはならなくて、その際に持ち上がった布団から白い肌が見える。


「本当に全裸なんかい!」


 僕はびっくりして掛け布団を白河ユイに巻き付けた。


「え、いや、変なことにはなってないよね。僕は服を着てるし、そこまでされたら流石に起きる。いや、それにしたって布団に入ってきても気付かないなんてことがあるか?」


「[潜伏]スキルの熟練度が12あります」


「そういやソロ探索者だった!」


 僕より[潜伏]スキル高いやんけ!


「ユイちゃん、お願いだからその画像消してくれないかな? あと僕はちょっと外に出てるから服を着てほしい」


「お願いでは聞けません」


 白河ユイは掛け布団で簀巻きのままベッドの上でごろりとこちらに向き直った。


「命令してください」


 僕は息が詰まった。


「ユイちゃん、僕はもう君の所有者じゃない」


「そうですね。ヒロさんは私に自由をくださいました。でも考えてみてください。人に飼い慣らされた生き物が野に放たれて、それでどうやって生きていけばいいというのです? 空に放った鳥が戻ってきたのです。餌をください。一度は飼ったのです。責任を取ってください」


「ユイちゃん、自由が難しいのはわかる。でもだからこそ君はなんにでもなれるんだ。飛び立つときなんだよ」


「いいえ、ヒロさんはなにもわかっていません。自由とはとても不自由です。指針はなく、拠り所もない。すでに知っている止まり木しか見えなくなるのは当然ではないですか」


「それは君がまだ高く飛べていないからなんだ。もっと遠くが見えるようになれば、僕なんかよりずっといい場所がんむっ」


 唇をふさがれる。

 避けようと思えば避けられたんだけど、白河ユイの唇をすでに知っているから、その柔らかさの誘惑に負けた。


 これ避けられる男いるの?


 唇をついばまれる。

 音を立てて、濡れた唇が、僕の唇を吸う。


 白河ユイは掛け布団を解いて、そのからだを僕に押しつけた。

 柔らかいふくらみが僕の胸に押しつけられてつぶれる。


 キスの合間に息を吸うと、湿り気のある空気が肺を満たして、白河ユイの匂いが僕の脳をくるわせる。


 僕はこの先にある快楽を知っている。


 どうすれば女の子が泣くくらい喜ぶのか、もう知っている。

 ぼくのからだのなかみをぜんぶだしてしまうようなきもちよさを、もうしっている。


 知ったばかりの快楽に抗うことは難しい。

 新鮮な刺激はあまりにも強い。


 だから僕は、


「ひやあああああああ!」


 白河ユイの脇腹を思いっきりくすぐってやった。


 敏感すぎるから、刺激が強すぎて快楽とは違う苦しさになっちゃうんだよな。


 白河ユイが強すぎる刺激から逃れようと身をよじったのをいいことに、僕は白河ユイの体を引き剥がした。


 ベッドから転がり落ちるように逃げて、そのまま部屋を脱出する。


 ふー、あぶないあぶない。9回裏10点差スリーアウトってところか?

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