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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第472話 全員が狼の人狼ゲーム

 裏社会と言えば反社にも動いてもらってるんだった。

 どこかの工作員とぶつかって消されてないかな?


 僕は心配になって電話をかける。


『おかけになった電話番号は――』


 無情にも聞こえてくる音声。

 手遅れかもしれない。

 僕はSMSで状況を簡潔に送ることにした。


 よく考えたら非合法工作員イリーガルなんか反社とそう変わんないよな。

 かと言って反社同士が仲が良いというはずもなく。


 僕は深く考えるのをやめた。


「ちなみに皆さんの連絡先を教えてもらえたりします?」


 教えてくれるわけないよなーと思いながら聞いてみると、結果的に僕は合計で5つの電話番号を手に入れた。

 自衛隊を含め、すべてのグループが電話番号を僕に開示したということになる。


 なお電話番号は良くて、メッセージアプリのアカウントはダメらしい。


 そらそうか。

 例えばLINEの使用を快く受け入れたら、そのグループは韓国の工作員ということになるだろう。逆に言うとあからさますぎて韓国の工作員だとしても、受け入れられない。


 でもそれを言ったらスマホを使ってる時点でiPhoneかAndroidだろうし、アメリカには通話だって筒抜けだよなあ。

 技術を握ってるってやっぱり大事だ。


 日本の場合だとTRONが組み込みOSとして全世界シェアの半分以上を占めているけれど、オープンソースなんだよなあ。

 なにも仕込んでないからこれだけのシェアを占められたんだろうけど、もしこれに日本への情報送信を組み込めてたら、全世界の情報を日本が集められたはずだ。


 つくづく惜しいというかなんというか。


「ちなみに僕は連絡先になんて登録すればいいんですかね?」


 例えば僕がアメリカに協力を求めたい場合は、この5つのうち、どの番号に電話すればいいんですかね?


 少なくとも米海兵隊の協力者はいないですよね。

 でもCIAかNSAの協力者はいるでしょ?

 現地協力者を使うとすればCIAの線が濃いか。


「ロシアの協力が必要なときは、私の伝えた番号に」


 と思っていたら意外なところが出てきたな。

 KGBはもうないから、ロシアの対外諜報機関というと今はSVRだっけ?


 その人は見た目は日本人とほぼ変わりがないんだけど、体格ががっちりとしていて、その辺は中国人っぽさもある。

 でもロシアなんだ。

 まあ、ロシアって北アジアだし、中国とも国境を接している。民族的な繋がりがある部分もあるんだろう。別にロシア人の単一民族国家ってわけじゃないしな。

 大きい国だから、色んな民族が暮らしているのがロシアだ。

 だからロシア生まれの人という可能性もあるけど、日本語が流暢すぎるから日本人協力者だと思う。


「我々ならあなたの奥さんのご両親を探すこともできる」


 あっ!

 バラバラだった記憶が結合して火花のように閃きが訪れた。


 そしてどうするか迷う。

 彼らが言っているのは樋口アナスタシア恵里の両親ということだろう。つまり彼らはメルが、オリヴィアが樋口アナスタシア恵里の戸籍を奪ったことを知らないのだ。


 ということは樋口アナスタシア恵里の両親はロシアに娘の死を伝えていない? というか、SVR関係者じゃなかったのか? 代筆屋の見立てが間違っていたということだろうか?


 僕は思わず代筆屋に目線を向けてしまうが、目を逸らされる。

 これは気まずいというよりは、関係性の秘匿狙いだな。

 僕もまだまだだ。


 これは結構複雑な状況だ。


 つまりこの男性はSVRとしては樋口アナスタシア恵里の両親の消息を知らないが、調べられると発言している。ただし本当のことを言っているとは限らない。


 そもそも本当にロシアの協力者とも限らないのだ。


 僕はどこまで情報を出していいかわからない。


「対抗は出ないですか?」


 僕は誤魔化すために冗談めかして言ってみたが、反応はない。

 こりゃポーカーか人狼ゲームが始まったな。


 ここで対抗、つまり『自分こそが本当のロシア協力者だ』と言い出す人物が他に現れたら、どちらかが偽であると確定する。

 今回は現れなかったので、真偽は不明なままだ。


 ややこしいのは、本物のロシア協力者が別にいたとして、そのグループが名乗り出ないままという可能性も十分にあることだ。


 ポーカーにせよ、人狼ゲームにせよ、セオリーがあってその通りに行動することで勝率をかなり上げられる。

 だけどこれは現実のだまし合いで、僕はセオリーを知らない。


 しかも今回の場合、全員が諜報関係者。つまり狼なのだ。


「代筆屋さん、手伝ってください」


「ほいさ」


 まだ代筆屋の口座に着金はしていないだろうけど、僕は10億を先払いした。

 代筆屋は来月末まで僕の協力者だ。手伝ってもらおう。


「結局、関係各国それぞれにホットラインを繋げたいってのが本音で、誰がどの国の協力者かをこの場で暴きたいわけではないだろ」


「そうですね」


「ロシアさんは、まあ、身内だぞって他国へ牽制のために言ったところもあるだろうから、それはそれでいいとして、お前の電話番号を相手に伝えて、先方から後で電話してもらえばすむんでないの? 先方にも日本語話者でセキュリティクリアランスの足りてる人間を用意する時間がとれるし」


「セキュリティクリアランスってなんでしたっけ?」


「ん~、噛み砕いて言うと、機密情報への接触許可レベルのことだな」


 ああ、僕の情報を伝えても問題がない相手ってことでいいのかな。


「なるほど。そういうことでいいですか? 僕の連絡先はこれになります」


 僕がシステムから自分の電話番号を表示すると、彼らはさっと自身のスマホで僕の出した画面を撮影していく。

 そうだね、それが一番早いと思います。

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