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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第470話 後悔はサルミアッキの味がする

 日本に戻ってきて僕が目にしたのは予想とはちょっと違う光景だった。

 さっきまで屋上にいた面々が待ち受けていたのはわかる。

 体調の良くなった代筆屋がいるのも不思議ではない。

 知らないスーツ姿の人たちが、なんかめちゃくちゃデカいボストンバッグを4つも持ってきてるなあ。


「さて、戻ってきましたよ、と」


「転移スキル……いやまさか、転移魔術か?」


 自衛隊の人がとんでもない勘違いをしていたので僕は補足する。


「スキルです。ただ取得条件が自分でわかっていません」


 誰かをミミックに食わせて実験というわけにもいかない。


「それで新しい実行犯を連れてきてくださったんですかね?」


 僕は新しく現れたスーツ姿の男性たちに向き直った。

 スーツにボストンバッグって似合わないねえ。その格好でここまできたの?

 それ人間が詰め込まれているんですよね。


 この人間の扱い方からして中国の工作員なのかな?


「私たちが連れてきたのは実行犯ではなく首謀者です。つまり東雲ひなの記者会見を潰すためにブリギット関係者の拉致を依頼した人物と共犯者を4名確保しました。今のところ首謀者側だと言える人物はこれ以外には見つかっていません」


「そんな簡単に特定できるものですか? そのボストンバッグの中身が首謀者である証拠はあるんですか?」


「必要なら彼らの通信記録、つまり通話やメッセージアプリの記録ログをお目にかけられますよ」


 ええー、推測通りに中国の工作員だとしたらヤバくない? そこまで日本の通信がダダ漏れだということになる。


「こいつらが狙ったのはステラリア各メンバーと君の配偶者です。次のおもちゃにする予定で部屋まで用意させていましたよ」


 僕は息を呑んだ。

 感情が動かない。

 驚きすぎて、感情をどこに傾ければいいのかわからないのだ。


「東雲ひなとこいつらの間に相互確証破壊による取引があることは承知しています。しかしそれは東雲ひなに自爆の覚悟があるからでしょう。向こうがブリギット所属タレントの陵辱映像を一方的に手に入れたら、あなた方は表に出せますか?」


 僕は天を仰いだ。

 僕は、ニャロさんは、咲良社長は、あまりにも危ない橋を渡っていたのだ。

 連中が本当に動くと思っていなかった。だってそんなことをすれば奴らは破滅するからだ。

 だから奴らはこちらが爆弾を起爆できないように、別の爆弾を用意しようとした。

 僕らを一方的に傷つけられる爆弾を。


 複雑な感情はどうしたって複雑なままだ。

 酩酊感があって、吐き気を感じる。


 感情に味があると僕は知った。

 後悔は、苦い。


 以前、どこかのお土産で父さんが買ってきたサルミアッキを口にしたような感じだ。


「その計画の話をしている通話記録もあります。聞きますか?」


「間違いないんですね?」


「誰か他の人に聞いてもらって真偽を確かめても構いませんよ」


「いいえ、必要ありません。USBメモリかなにかに?」


「USB SSDですね」


「コピーをください」


 聞くことはないだろう。そんなものを耳に入れたら最後、僕はこれからこいつらになにをするか分からないし、終わった後に聞けば永遠に後悔に囚われる。


「彼らが誰で、どういう人物なのか、わかっている範囲で記録してあります」


 男性はスーツのポケットからUSB端子のついたスティックを僕に渡した。


 僕は四つのボストンバッグを預かって、中身を確かめることなくアーリアのダンジョン30層に捨てていく。

 先に置いてきた面々の中には寄ってくる者、離れていく者と反応が違ったが、どうでもいいので僕はすぐに日本に戻った。


「では引き続きブリギット関係者への危害が発生しないか監視しますので、失礼します。記者会見では手出しをしませんでしたが、あれでいいのですよね?」


「ええ、ご配慮に感謝します。また明日のライブでファンが過激なことを言うかもしれませんが、手出しは無用です。彼女たちが受け止めなければいけないものなので」


「わかりました。では、また」


 そう言ってスーツ姿の男たちは去っていく。


「また、って言った?」


 追加の獲物が運び込まれるという意味だろうか?

 いや、でもおそらくこれで打ち止めだ。米軍が強襲、制圧し、身柄を確保した華僑系の犯罪組織がどういう広がりを見せるかは分からないが、国内での動きはこれくらいだろう。


「あー、警視庁が踏み込んでくる前に米軍から連絡があった」


 代筆屋が言う。


「お前の予定を知りたいとさ。迎えを寄越すと言ってたぞ」


「うーん、明日がライブで、明後日も用事があって」


 メルをヴィーシャさんのところに連れていかなければならない。


「9月1日ですかね」


 折しもその日は僕の誕生日だ。柊和也の生まれた日だ。


 どうやら僕は誕生日に大量の華僑系の犯罪者たちを受け取るらしい。

 人生最大の誕生日プレゼントになりそうだった。

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