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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第461話 貸し会議室は意外と安い

 僕はアーリアから日本に戻った。ヴィクトルさんのところで思っていたよりずっと時間を使ってしまったな。

 魔銀のインゴットをある程度手にして戻ってくるつもりがとんでもないことになってしまった。

 契約結婚みたいなものになるとは思うけど、僕が手に入れたのは新しい嫁だ。


 メルになんて説明しようか……。

 考えるだけで胃が痛い。

 ステラリアの場合は流れがメルにも見られてるから、なんか好意を持たれてもしゃーない感があったけど、ヴィーシャさんは急転直下すぎて僕もわけがわからないよ。


 なんにせよメルはライブのリハーサルに参加中なので連絡はとらないほうがいい。

 今夜、二人の時間に話をしよう。


 さて魔銀を手に入れられなかったので、印刷屋のところに行く必要もなくなってしまった。まあ、金型を作っているのは別のところだし、まだ金型ができたわけでもないけれど。


 それよりもニャロさんが咲良社長にやらせると言っていた記者会見はどうなったんだろうか? 時間どころか、やるのかどうかすら聞いていない。


 僕はニャロさんにDiscordでメッセージを送った。


『咲良社長の記者会見はどうなりました?』


 すぐに返信がこなかったのでとりあえず駅に向かって歩く。

 途中でスマホがぶるっと震えた。

 Discordにメッセージが来ている。


『18時30分から開始で調整中だ』


『ずいぶんと中途半端な時間ですね』


『夕方の報道バラエティで芸能ニュースをやる時間帯を狙った。生中継はされないだろうが、今日のニュースに捻じ込むなら、あまり変な編集をやる時間がないからな』


 なるほど。

 テレビというのは結論ありきで映像を作るメディアだ。

 なにが真実かではなく、なにを伝えたいかが優先される。


 情報源がテレビか新聞という時代ならそれで良かったんだろうけど、多角的に情報が得られるこの時代にあった手法とは思えない。

 テレビが見せたい映像を見せても、視聴者は自分が見たいニュースだけを見ている。そんな時代だ。


 ほとんどの人にとって事実なんてどうでもいい。

 ただの娯楽か、あるいは話題のために、ニュースを摂取しているに過ぎない。


 一般大衆は摂取したい情報を自由に摂取できるのだから、テレビという一方的に視聴者に情報を与えられるメディアがとるべき戦略は、徹底的なファクトチェックと、その提示だと思うんだけどな。


 でも今のテレビ局はそれをしないので、それっぽいところをざっくり切り取って報道するか、あるいは触れもしないかだろう。


『時間があるなら手伝ってくれ。ブリギットだけでは人員が足りてない。ほとんどライブのリハに回ってるからな』


 ブリギットは大きな芸能事務所ではないので、職員さんたちはステラリアの一周年ライブにかかりきりだ。

 咲良社長の記者会見は別に人を雇って回すしかないだろう。


『でも僕は出入り禁止で』


『それはステラリアの話だろ。咲良と会うなとは言われてないはずだ』


 言われてみれば咲良社長にはステラリアと会うのを禁止されているだけだ。


 それにしてもニャロさんにはなんでも筒抜けだな。


『確かに。場所はどこですか?』


『TKP東京駅カンファレンスセンターのカンファレンスルーム2Aを押さえてある』


『すぐに向かいます』


 東京駅って書いてあるから、東京駅に向かえばいいんだろう。

 とりあえず電車に飛び乗って、それからスマホで施設を確認する。


 東京駅の目と鼻の先で、100人規模のカンファレンスルームが1時間3万円くらいで借りられるって安いな。

 いや、これは事前予約の値段だろうし、昨日今日でねじ込んでいるんだから割増し料金は取られているだろう。


 それにこれは箱の価格であって、備品で結構とられるっぽい。

 設営に人手を借りればさらに費用がかかるわけで、記者会見というお金にならないイベントに費用がかかると思えば、これくらいが限度なのかもしれない。


『ニャロさんから話を聞きました。今からそっちに行きます』


 僕は咲良社長にLINEでメッセージを送る。

 すぐに既読はつかなかった。

 そりゃ準備で忙しいだろうしね。


 東京駅に到着して八重洲中央口から出る。そうすると目的地は目の前だ。

 横断歩道を渡れば、本当にすぐそこ。

 何食わぬ顔でビルに入って二階へ。フロアマップはWebサイトにあったので、2Aに直接乗り込む。こういうのは堂々としていれば呼び止められないものだ。


 室内は設営でゴタゴタしていた。

 テーブルが会場の半分くらいまでは並べられているけど、まだ半分は壁際に寄せられている状態だ。

 壇上にはマイクが設置され、スピーカーとの接続を確認している。


 ざっと見回してみたが咲良社長の姿は見えない。


 スマホを見るが、メッセージにも既読がついていない。


「君、どちらさま?」


 ふと呼び止められる。

 壮年の男性だ。社員証のようなものを首からかけていて、TKPの文字が見えたから、施設側の人なんだろう。

 さすがに誰も顔を知らない人間がここにいたら怪しまれるか。


「あ、ヒロくん。西島さん、大丈夫です。彼は関係者です」


 常森さん! 常森さんじゃないか!


 僕がホッと胸を撫で下ろしていると、常森さんがやってきて、僕の肩にばんと両手を置いた。


「どうやって来たのか知んないけど、助かるゥ」


「ブリギットから他には?」


「私だけなのよお。おかげでてんてこ舞いで」


 この前の飲食分働けってことかもしれない。僕のお金だけども。

 ドレスもプレゼントしたし、キビキビ働いてもらおう。


「えっと、それで僕はなにをすればいいですか?」


 僕がそう問うと、常森さんはにっこりと笑った。


「こっちは任せて。君は社長のメンタルケア」


 確かにね。それは一番重要事項だね。

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