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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第437話 秘密は守られない

「やったなあ。お前、まだ先だっつってたろ」


 翌朝のことだ。

 無事銀行への振り込みを確認した僕は、現金で一億円出金して、歌舞伎町の代筆屋のところへ代金の支払いに来ていた。


「なんのことです?」


 本気で訳がわからなかったので僕が問うと代筆屋は声を荒らげる。


「警察に手回ししてくれって言ってたろ!」


「ああ、そう言えば」


 代筆屋には魔術とかその公開のこととか前に話してたっけ。


「状況が変わったもので」


 コーヒーを淹れてきた代筆屋はどかっと向かいのソファに腰を下ろす。

 砂糖を入れてかき回した後に、一気に飲み干す。

 ホットだよね。それ。


「にしたって先に言っておいてくれ。いくら持ってきた?」


「2,200万ですよね?」


「お前さんのことだから、どうせ多めに出金してるだろ」


「まあ、一億持ってきてますけど」


 代筆屋は手のひらでテーブルを叩いた。


「電話代に全部置いてけ。それでチャラだ」


 電話代?

 ああ、電話代か。

 つまり代筆屋は昨晩7,800万円分電話をしたということになる。


「動いてくださったんですか?」


「そうでなかったら、お前、今頃警察官に追われてるよ」


「ええー、令状は流石に出ないでしょうし、任意ですよね」


「それを警察に言うなよ。自分はやましいって言ってるようなもんだからさ」


 忙しかったりしたら任意同行を断るとか普通にありそうだけど、警察側からしたらまた違うのかな。


「えっと、警視庁ですか? 警察庁ですか?」


「警察庁だよ。警視庁は東京都が担当。警察庁は全国の警察を取り仕切ってる。警察庁長官まで話が行ったんだからな。勘弁してくれよ。こちとら引退済みで後ろ暗いってのに。一億じゃ足りない気がしてきたぞ」


「そんなに大事でしたか」


「大事も大事だよ。刑事に、組織犯罪、外事まで動いてたんだからな!」


「よく止められましたね」


「ひとまず任意同行だけはな。今週中は向こうからは来ない。ステラリアのライブより先には引き延ばしたぞ」


「全然止められてない!」


「当たり前だろ! なかったことにできるとでも思ってんのか。今週中にはお前を霞ヶ関に連れて行くってことになってるから、そのつもりでいろ」


「印刷屋は出元はわからないようにしたって言ってましたけど……」


「だからだよ! 出元がわからなかったら、お前の女んところに警察が押し寄せるぞ。あのYouTubeチャンネルの登録時の名義は誰よ?」


「あ、やべ、父さんだ」


 すっかり忘れてた。やっば。マジでヤバい。

 一発で身元バレるやんけ。


 最悪の場合は家族全員で別の戸籍に逃げて、元の戸籍では行方をくらますしかないか。


 一瞬慌てたものの、すぐに平静を取り戻した僕を代筆屋は呆れたような顔で見ている。


「そういや未成年者だったか。本気で忘れそうになるが。実の親?」


「そうですね。そっちもいずれ聴取されますよね」


「警察がYouTubeに情報開示請求してからになるから、時間はかかるだろうけどな。どうせアメリカ政府の横やりでAlphabet社は情報開示を渋るぞ」

 YouTubeはGoogle社だけど、Google社はAlphabet社の子会社だ。

 米国企業なので、アメリカ政府が動けば代筆屋の言うようなことは起こりうる。


「家族分の戸籍を買うんで、四人家族の戸籍とか売ってませんかね?」


「無茶言うなよ。家族まるごと戸籍を売りに来るなんて滅多にねぇよ」


 あるにはあるんだ、闇が深い。


「まあ、バラバラでもいいので避難用の戸籍は後日買いにきます」


「お前の家族って、そんな簡単に今の生活捨てられんの? 人間関係も全部消えるんだぞ」


「妹以外は覚悟できていると思います。一応、僕の事情自体は話してあるんで」


「まあ、そっちはそんな急がなくてもいいだろう。一ヶ月以内ってとこだな」


 十分に急なんだよなあ。


「とりあえずお前の女は身の回りに気をつけろ。どっかの工作員に拉致されてもおかしくないぞ。昨日の配信、あまりにも知りすぎてた。出元じゃないふりをしていたが、疑われるには十分なほどにな」


「伝えておきます。気をつけてさえいれば対処できるはずです」


「そういえばお前は40層いけるみたいなこと言ってたっけ。万が一自衛隊が出てきてもある程度対処できそうだな」


「まあ、戦車が何台も出てきたら困るでしょうけど、いったん逃げるだけならそんなに難しくないんじゃないですかね」


 僕の場合はキャラクターデータコンバートでアーリアに逃げられるから特にね。


「そういうわけなんで、これを聞いてる警察の方たちは待っていていただけますか? 後でちゃんと出頭しますんで」


 これ見よがしに僕は言った。

 代筆屋は肩をすくめ、そして落とした。


「俺はこれから殺されるんかな?」


「それしたら警察が引くに引けなくなるでしょ。別にいいですよ。代筆屋さんにも立場があるでしょうし、一方的にとはいえ、直接宣言できたのはありがたいです。ただ一億は駄目です」


「そりゃそうだよなあ」


 僕はバックパックから一千万円の封がされたブロックを取り出してテーブルに置く。

 一つ、二つ、三つ、四つ、五つ。


「おいおい。俺は内通してたんだぞ」


 五千万を目の前に代筆屋は手を伸ばせずにいる。


「それだってきっかけは僕に対する親切心からですよね。警察に連絡しなければ内通する必要もなかった。別に僕を売ったってわけではないんでしょ?」


「そりゃそうだが」


「とりあえず警察の介入を遅らせてもらった分ということで。ライブへの影響を避けられるのであれば、別にこれくらい安いものです」


「ならありがたく受け取っておく。袖の下も安くはないからな」


「それ言っていいんですか? 聞かれてるのでは?」


「聞かせてるんだよ。こんな話をした上で俺や俺の家族になにかあってみろ。俺が話を通したうちの誰かが糸を引いているってことになるだろ。誰のことかは触れずに、表沙汰にしておくのが一番なんだ。俺が隠しておきたいってなると、それは弱みになるからな」


 うーん、裏社会の駆け引きだなあ。


「あとは内調もここを覗いているはずだ」


「ないちょう?」


「内閣情報調査室。日本の諜報機関だな。以前に誘われたことがあるから、糸は繋がっている。一声かけておいたから、今もどうにか監視しているはずだ。あいつら警察内部に工作員置きたがってたからな」


「相互監視させることで安全確保というわけですか?」


「ここまでくると、もうそれしかないからな。今回のことが終われば俺はめでたく廃業だ。ここまで警察や情報機関と関わってると裏の人間も寄ってこないからな」


「なんか、すみません」


「この手の家業じゃよくあることだ。また身分を変えて、どこかでこっそり始めるさ。新大久保とかにしとくか」


 それはさすがに近すぎない?

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― 新着の感想 ―
何の罪? 騒乱罪とか? そういう話が有ったんだろうけど、すっかり忘れててポカーンだったわ。
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