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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第412話 妖精の服装ってえっちすぎない?

 まだドレスをとっかえひっかえしている女性陣に紛れて、すでにアッシュグレイのマーメイドドレスに決めたのかぼんやりとしているのは九重ユラだ。

 この子は普段から自分を着飾ることにそれほど興味がないように見える。

 年齢を考えるとフリフリのお姫様ドレスなんかに憧れる年頃だと思うんだけど、両親が失踪し飢えた経験がそれをさせないのだろう。


「ユラちゃん、それでいいの?」


 今のドレスが似合っていないというわけではない。

 ただ少女が選ぶドレスとしてはシックすぎる。

 成長が早く、肉体的に女性として開花しつつあるように見える彼女の姿にはとてもよく似合っているのだけど、内面を知る者としてはどうしても違和感がある。

 いつもの様子からすると、もっと奇抜なものを選びそうなのに。


「どれでも好きなのを選んでいいんだよ」


「今日はユイのお誕生日だから……」


 ああ、九重ユラなりに気をつかって、派手なものは避けたのか。


「それもあるけど、皆でライブを頑張ろう! ってえいえいおーしにきたんだ。ユラちゃんが一番着たい服はどれかな? 僕に教えてくれる?」


「えっと……」


 九重ユラはキョロキョロと店内を見回す。

 いま探しているというよりは、めぼしいものを思い出そうとしているように見えた。

 つまり本当に着たい服は別にあった、ということだ。


「これ」


 九重ユラが手に取って広げたのは花柄ワンピースタイプのショートドレスだった。

 確かに子どもってショート丈の服が好きだよね。

 だけどね、九重ユラ、君がこれを着るとフォーマルにしてはえっちが過ぎる。


「ジャンバティスタヴァリね。パリで展開してるブランドだけど、デザイナーはイタリア出身よ。ぎりぎりインフォーマルと言って……、言ってしまいましょ」


 咲良社長が説明してくれるけど、それは本当は駄目なヤツですよね。

 でもまあ、ドレスコードって他の客がいるから意味があるんであって、個室に通されるならあんまり関係ないか。

 特別室は入り口も普通の客とは別になっていて、衆目に晒されることはないらしい。

 そりゃ有名人とかがこっそり会うための個室だもんな。


「ユラちゃん、着てみてごらん」


 九重ユラを更衣室に押し込んで、僕は店に電話をかける。

 確認したところ、特別室の場合、よほどの格好でない限りは気にしなくていいらしい。


 じゃあ、普段着でいいんじゃないかなあと思ったけど、この盛り上がりに水は差せないですね。


「着替えた」


 しゃっとカーテンが開かれて現れたのは、まるで花畑にいる妖精のような少女だった。

 なんでか妖精さんって露出が多い服を着てるよね。あれと一緒。


 うーん、やっぱり僕から見ると過激すぎるんだけど年齢考えたら普通なんだよなあ。

 本人が着たいなら、これでいっか。

 もうちょい手足に肉が付いてたら僕の基準でも完全にアウトだった。


「妖精さんみたいだね。よく似合ってるよ」


「喜びの舞を踊ります」


 奇天烈な動きを始めた九重ユラは平常運転だ。

 やっぱりこの子は訳が分からないくらいでちょうどいいよ。


「ユラ、見えちゃってるから少し動きを抑えて」


 僕が喜びの舞を鑑賞していると、どこかからか駆け寄って九重ユラの動きを制したのは小鳥遊ユウ。

 余計な、違う、僕からは何も見えてなかったよ。

 小鳥遊ユウは視点が低いから何かが見えちゃったに違いない。


「ユウ、格好いい」


「そうかな。そう言ってもらえると嬉しいよ」


 前髪をさっと払う仕草を見せる小鳥遊ユウは、パンツスタイルのドレス姿だ。ちゃんと女性モノなんだけど、こういうのもあるんだ。


「ジョルジオアルマーニでセットアップにしたのね。女性はスカートのほうがフォーマルだとされるけど、身内の席だしいいんじゃないかしら。こんなことは言いたくないけど、ユウの場合は家庭の事情的にこういうセットアップを持っているほうが都合がいいだろうし」


 咲良社長、解説お疲れ様です。


 小鳥遊ユウの家族が、彼女に肉体とは違う性を押しつけているという問題は根本的には解決していない。

 ただ彼女の中で迷いが吹っ切れた。ただそれだけのことだ。

 彼女が家族と戦ってでも女の子である自分を取り戻したいというのなら手伝うけれど、今のところはそういうつもりもなさそうだし、静観するしかない。

 だから僕から小鳥遊ユウに贈る言葉は当然。


「流石マイフレンド。ナイスチョイス」


「当然だろ。ボクは小鳥遊ユウだよ」


 事情を踏まえると複雑な回答ゥ!

 だけど長柄秋は人前では小鳥遊ユウとして生きることを選択したのだから、僕はそれを尊重する。

 全体的にちっさいけれど格好いい、僕が初めてキスをしたマイフレンド。


「しゃ、社長、これ本当に大丈夫ですか?」


 そう咲良社長に声をかけたのは、謎の女子大生、じゃない。

 結婚式にお呼ばれした量産型女子大生みたいな格好の田畠さんだった。

 若作り……、というほどでもないかな。

 咲良社長がこの服を着ていたら間違いなくそうなんだけど、だけど多分似合っちゃうなんだよな。芸能人、怖い。


「前のライブの売り上げ以上の額が動いてますけど……」


「ヒロくんの奢りだから会社的には大丈夫よ」


「ええっ!?」


 田畠さんが怪物を見るような目で僕を見る。


「石油王の息子さんかなにかですか?」


「そう言えば日本人の石油王って聞いたことないわね」


 出光佐三とか?

 出光は油田開発したわけではないけど、国内の販売では大手だよね。


「どこで引っかけてきたんですか、社長」


「ニャロの線だから……」


「あー、なるほど」


 そこ納得できちゃうんだ。


「だから田畠さん、遠慮は捨てましょうか。このままだとあなただけ逆に浮くわよ」


「超お高いイブニングドレスなんか買ってもらっても使い処がないスよね。普段使いまで考えるとこれが最適解!」


 確かにステラリアならステージ衣装として活用もできるけれど、常森さんと田畠さんだと持て余すんだろう。


「あと同僚からの嫉妬が怖いッスから」


 それは確かにそう。

 常森さんにも教えてあげて!

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