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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第394話 フラッシュモブだけはやめておけ

 ステラリアとメルがさっきまでのレッスンの内容について、熱心にやりとりしているのを聞きながら、僕は白河ユイの誕生日パーティーをどうするのか考える。


 というか、サプライズである必要はないよな。

 さっさと本人に聞いて、希望通りにしたほうが喜ばれるんじゃない?


『分かってない。分かってないぞ。和也』


 イマジナリー父さん!?


『本当のプレゼントは喜ばせたいという気持ちそのものなんだ。そこをショートカットして楽ができるのはプレゼントする側だ。君のために考える時間がもったいないから直接聞くよ。何が欲しい? って言われて喜ぶ人がいると思うか?』


 分かってる。本当は分かってる。

 というかイマジナリー父さんは僕が考える父さんが言いそうなことなので、僕自身が分かってないことは出てこない。


 ただ相手にもよるよね。

 そこの気持ちを読み取ってくれない相手に、時間をかける意味もない。


 相手のことを思って時間をかけて選んだプレゼントに、現金が良かったなんて言われた日には今後の付き合いを考えなくてはいけない。


 それじゃ白河ユイはどっちかという話になるんだけど、彼女の性質は一旦置いておいて、これまで彼女が受けていた仕打ちを考えると、ちゃんとしたお祝いをしてあげたい。

 あの親から生まれた日ではなく、18歳になって自由を得たそのお祝いを。


 かと言って、僕が持つ彼女の所有権を放棄する手続きをメインイベントにはできない。

 それは明後日になったら可能な限りすぐに手続きをしたい。

 なんなら深夜を待って、0時を過ぎてすぐにする、という選択肢もありうる。


 流れとしては、明日は小鳥遊ユウのパワーレベリングがあって、明後日はその成果のお披露目ということになるだろう。

 その後、みんなで白河ユイの再誕を祝えばいい。


 ステラリアの5人と、僕とメルと、咲良社長も誘うとして8人?

 規模としてはレストランとかがいいのかな。

 流石にホテルの宴会場を借りるには規模が小さい。


 とは言え、東京で明後日の予約が取れるかなあ。

 少なくとも人気店は無理だろう。


 こういうときにネットは役に立たない。

 なぜならネット検索でたどり着ける良い店というのは、誰もが調べうるからだ。

 だからこういうのって口コミのほうが頼りになる。


 それだと……、やっぱ便利だよなあ。

 歌舞伎町の代筆屋!


 僕は何気ない風を装って、スマホを弄る。

 代筆屋宛てのSMSだ。


『明後日、白河ユイの誕生日をステラリアのメンバーで祝おうと思うのですが、いい店紹介してください。8人で利用できて、個室のある、急なねじ込みにも対応できる店。使ってたでしょ。前職の時に』


 数分後に返事が返ってくる。


『脅しっぽく言う必要あった? そりゃあるけど。芸能事務所でも押さえてんじゃないの? そう言う店は』


『せっかくなんでサプライズしようかと。こっちの伝手だと知った店になっちゃうかなって思って』


『予算は、お前だし考えなくていいか。一番良い店紹介してやるからさ』

『お代に白河ユイのサインもらってきてくんない? たかしさんへ、って書いてくれるとなお良い』


『息子さんの個人情報漏れてますけど、大丈夫ですか?』


『だから平仮名にしただろうが』


 そこ配慮だったんだね。


『んと、今のところ8名の予定ですが、10名分用意してもらっておいていいですか? もちろんお代は10人分払うのでと先方に伝えておいてもらえると助かります』


『電話番号はともかく、名前はどうする? そっちでは違う名前を使ってんだろ?』


『ヒロだけで予約取れます?』


『まあ、電話番号もあるし、なんとかなるよ。予約取れたら店の情報メールしとくから』


『お願いします』


 代筆屋とのやりとりを終え、顔を上げると、九重ユラを除く全員が僕を見ていた。

 九重ユラは肩の上にいるから、ちょっと違うよね。


「えーっと、スマホに夢中になっててごめん。今どういう状況?」


「みんなご立腹です」


 鳴海カノンが代表するかのように言った。

 誰からも反論は出なかったので、間違ってはいないようだ。


「私たちはヒロくんがくると聞いて、うきうきそわそわしていました。みんなもうレッスンの復習なんて上の空です」


 いや、君たち一周年ライブが控えてるよね。

 それじゃ駄目だよ!


「さっきもヒロくんにできる女として見てもらおうと、みんな必死だったんですよ。それなのに当のヒロくんはスマホに夢中で! 誰かと連絡を取ってるんです! 女ですか? 女ですよね?」


「いや、中年男性だよ。カノンちゃんの紹介で知り合った人だよ」


「私がヒロくんに女を紹介? あり得ませんね」


「まずその僕が連絡を取っていたのが女性という前提を捨てようか」


「じゃあその見慣れないスマホ見せてください。ロックは解除して」


 そういや鳴海カノンは僕の元々のスマホを知ってるんだった。

 LINEでも繋がってるしね。


「どうぞ。一応、他の人には見えないようにしてね」


「それは私が特別だということですね!」


 いや、白河ユイに見られたら誕生日パーティーについてバレちゃうからだよ。


 僕は樋口湊で契約したスマホを差し出す。

 鳴海カノンは素早くそれを奪い取って、他の皆には見えないようにチェックを始めた。

 そして僕と代筆屋のやりとりを見たのか、そっと画面を伏せてスマホを僕に差し出した。


「みんな、ヒロくんを疑った私たちにも問題がある!」


「納得できるかい!」


 橘メイが手を差し出したので、僕はそっとスマホを渡した。

 そしてしばらく指を忙しなく動かしていたかと思うと、鳴海カノンと同じように僕にスマホを返してきた。


「こういうことなら、し、仕方がないかも」


 こいつ、誤魔化すのが下手すぎる!

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