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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第356話 偏りをより偏らせる

 自分の思いを吐露したことで気持ちは楽になっただろうが、それでパフォーマンスが良くなるかというとそういうものでもない。


 レッスンに戻った小鳥遊ユウは、まあ、ほんの少しマシになったかな、程度だ。

 大きく劣っている小鳥遊ユウが少しマシになった程度では焼け石に水。


「メイちゃんはひーくんがいないときは大丈夫。いまはもう駄目だけど。ユラちゃんは言ったらすぐ修正できたよ。ユウくんはどう?」


「うーん、本人は限界まで頑張っているみたいだ。その上で今日は調子が良くてこれみたいだから、なにか抜本的な変化が必要だ」


「となると、アレしかないかな」


「まあ、そうなるよね」


 歌はどうか分からないけど、ダンスを短期間で劇的に上手くする方法がひとつある。

 たぶん歌も上手くなるんじゃないかな。


 普通のアイドル最低基準ギリギリというのは、一般的に見ればそこそこ才能はあるのだ。

 比較対象がちょっとおかしいから才能の差に絶望してしまうのかもしれないけど、どちらかというとアイドルに向いているからここにいるのだ。


 つまりステータスはそちらに寄っている。


 そしてレベルを上げて補正を得ると、得意なことはより得意になる傾向がある。

 逆に苦手なことは全然伸びない。


 レベル41になっても僕が不器用なようにね。


 なのでこれは絶対ではない。

 だがこのまま闇雲に練習しても絶対に仕上げられないのは確実だ。


 他にもっといい手段があるのかも知れないけれど、僕らにはこれしか思いつかない。


「今からなら、ギリ間に合うか。ユウを借りていっていい?」


「お願い。私は無理なんだよね?」


「身分証明書を作ってないからね。実行時にはいてくれないと困る」


「了解。明日の朝からかな?」


「そうだね。今日は可能なところまで進めておくよ」


「分かった」


 メルとの間に合意が形成できたので、僕はレッスンを一時中断させる。


「ユウ、ちょっと着替えて荷物も持って来てほしい。連れて行きたいところがある。君に劇的な変化を起こしてみせる」


「ヒロくん、まさか……」


 鳴海カノンがふるふると震えている。


「駄目ですよ。悪い夜遊びをユウに教えないでください。まだ早いです」


「僕がそれを知ってる前提で話を進めるの止めてもらっていい?」


 ぐぬぬと歯を噛みしめる鳴海カノンだけど、小鳥遊ユウならまあ間違いは起きないかとかなんとかそんな感じで送り出される。

 橘メイ、寂しそうな顔でこっちをみるんじゃない。

 僕は君の想像の中の偽彼氏だぞ。


「それでどこに?」


 少年風の私服に着替えた小鳥遊ユウが聞いてくる。


「うーんと、ユウは今身分証明書って何か持ってる?」


「うん。学生証なら」


「なら行けるか。ここからだと新宿だな」


「新宿?」


「そう、都庁ダンジョンに向かう」


 都庁ダンジョンは日本でもっとも有名なダンジョンのひとつだ。

 都庁ダンジョンと呼ばれているけど、ダンジョンの発生によって都庁機能は別の場所に移転していて、正確に言うなら元都庁ダンジョンということになるのかな?

 まあ、一般的には都庁ダンジョンと言うと、新宿にある元東京都庁第一本庁舎のことになる。


「ダンジョンに? どうして?」


「レベルを上げると身体能力が上がることは知ってるよね?」


「うん。まあ、誤差みたいなものらしいけど。アスリートなんかは練習時間とレベル上げとの時間配分で苦労してるというよね」


 まあ、日本での認識はそんなもんだよな。

 専業冒険者でも15層が到達点だというとは、レベル15付近か、もうちょい上かってところだろう。


 この辺りになればもう明確にレベル補正によるステータス上昇を実感し始めているだろうけれど、レベルう10くらいまでは微妙だ。


 何気にレベル1からレベル2への変化は結構大きいので、とりあえず探索者証を取ってスモールスライムをプチプチするのは日本でも推奨されている。


 だけどレベル2からはほとんど上昇を感じない。

 数値ではっきり見えるから上がれば分かるんだけど、実感できるかというとそうではない。


 ステラリアで橘メイはなんかのバグだとして置いておくとして、次に動きにキレがあるのが白河ユイで、これは才能というよりはレベル補正のおかげだと思う。


「真っ当にやったらそうだね。どちらが効率がいいのかは微妙なところだ。特に時間に制限がある高校生のうちに、とかになるとレベル上げは2で止めておくのがいいだろうね。だけどレベルを10、いや、20まで上げられるとすれば?」


 僕とメルで小鳥遊ユウをぐわぁーっとレベル20くらいまでパワーレベリングしてしまえば、橘メイに敵うかどうかは別として、少なくとも明確に他のメンバーと比べて劣っているという今の状況からは抜け出せる。


「レベル20までパワーレベリング!? どうやって?」


 日本でパワーレベリングが流行らない理由は簡単で、金がかかりすぎるからだ。

 15層級魔石が1個で70万ちょっと。

 普通の探索者が一日にどれくらいの数のモンスターを狩るのかはちょっと分からないけど、まあ、5匹くらいだとする。


 つまりレベル15付近の探索者を6人、一日拘束するのであれば350万円から、ということになってしまう。

 レベルは攻略できる層と完全に一致ではないけれど、16層で戦える探索者なら稼げる金額も倍になって700万円。


 そしてパワーレベリングをするには6人から一人を外す必要があるため、どうしても戦える階層は下がる。

 さらに言えばパワーレベリングでは倒した数のほうが重要だ。


 つまりレベル15の探索者パーティを350万円雇ったとして、15層でパワーレベリングができるわけではない。

 状況にもよるだろうけど、この場合は12層くらいが一番効率いいと思う。


 20匹のモンスターを狩ったとして、レベル1から、うーん、これは感覚的に適当に言うけどレベル7かレベル8くらいかな。


 350万円払って、誤差レベルの身体能力しか手に入らないのだ。


 高校生に対してこの投資ができるのかというと、当然できない。


 だけど僕らが付いていれば話は別だよな。

 僕とメルはレベル41で、20層くらいのモンスターなら鎧袖一触だ。

 都庁ダンジョンの構成を調べてないけど、25層くらいまでは何の問題もない。


「ユウは友だちだから特別に教えるけどさ。僕とオリヴィアのレベルは41だ。大丈夫。一日あれば君をレベル20にしてみせる」

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