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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第339話 流される

「じゃあアキバは不慣れなのね。仕方ないかあ。宇宙一優しい私は田舎者を放っておけないもん」


 優しいというわりにはナチュラル田舎者扱い止めてくんない?

 いや、確かに田舎住みなのは認めるけどさ。


「18時に上野駅で待ち合わせがあるから、それまでに契約手続きだけできればありがたいんだけど」


「えー、厳しくない? ってか、待ち合わせ? オリヴィア?」


「いや、別件だよ。言っておくけど――」


「他の女!?」


「相手は男性だからね。まあ、最悪準備だけでもできたらいいかな。確かスマホの契約って店がやってても遅い時間は無理だよね?」


「知らない」


 知らないことを知らないとはっきり言えるのはとてもいいことだね。

 これ、案外難しいことだと思うよ。


「その辺も含めて店員さんに聞いてみるか。結局、どこに行くのがいいの?」


「知らないわよ。スマホってdocomoとか楽天のお店に行って契約するんじゃないの? この辺にあったかな」


 うーん、そういうことなら別に同行を頼む必要はないか。

 案内とか、二台契約するのに誰かが一緒だとそれっぽいのとかでお願いしてたんだけど。


「ヨドバシカメラに行くか。あり――」


「それならこっちよ。付いてきて」


「あ、ちょ――」


 橘メイは路地を出てずんずんと進み出すので僕は追いかけるしかない。

 まあ、別にいてもらっても困りはしないか。

 僕だけだと迷うかもしれないし。


 意外なことに先行する橘メイは迷うことなくヨドバシカメラに辿り着いた。


 いや、師匠の咲良社長がアレだから、全力で違う方向に行くのかと思ってました。

 言うてその後を見てる限り、別に咲良社長は方向音痴というわけではなく、あの時はたまたまだったっぽい。


 スマホ売り場に入ると、思ったより人がごった返してるって感じでもないな。

 多いのは多いけど。


「ん~、なんにも決めずに来ちゃったな。Androidの、キャリアはどうするかな」


「iPhoneじゃないの!? ありえないよ!?」


 なにそのiPhone選民思想。

 良くないよ。

 独占になると競争原理が働かなくなるよ。


「オリヴィアがいま持ってるの最新型のiPhoneだから、同じの買ったらどっちがどっちか分からなくなるじゃん」


「ケースで差を付けろ!」


「そういや女の子のスマホって、ケースが凄いよね」


「デコれるならデコる。盛れるなら盛る。基本じゃないの」


 その結果が天昇ペガサスMIX盛りなんじゃない?

 僕は可能ならケース無し運用したいんだけど、時々落とすから仕方なく透明のプラケースをつけている感じだ。


「まあiPhoneはリセール高いから、ケース盛り盛りで本体に傷がつかないように運用するのは大事だね」


「りせーる???」


 あ、ダメだ。分かってないなこれ。


「ぶっちゃけるとオリヴィアは絶対スマホ壊しまくるから、メイン運用のiPhoneは仕方がないけど、もう一台は安物で済ませたい感じある」


「あいつそんなに雑なの?」


 なぜか嬉しそうに橘メイは僕にずいっと近寄ってくる。

 止めて、君、メルの次くらいには可愛いんだから、止めて。


「雑というか、……いや、雑なところある」


 部屋の掃除がしたくなくて宿屋暮らししてる子だしね。


 ざっくりしているというか、アーリアの人だから日本人と比べると細かいところが気にならないというか。

 要は精密機器の扱いが分かってないんだよね。

 こんなに硬いんだから、落としても壊れないよね。って思ってるところある。


「米陸軍採用の耐久性能……」


 僕がごっついスマホを前に唸ると、橘メイは呆れたような声を上げる。


「いくらなんでも可愛くないわよ。それ」


「そうだね。米陸軍程度じゃ耐えられないか」


「アンタらなにと戦ってんの!?」


 そりゃまあ、ドラゴン余裕です。


「うーん、壊れるの前提かぁ」


 橘メイは真面目に考えてくれているようだ。

 なんだかんだで悪い子ではないんだよな。


「eSIMにしとけば、本体壊れても引き継ぎ簡単なのかな」


「いーしむ?」


 ただスマホ知識があまりにもない。

 本当に付いてきただけになってるぞ。この子。


「スマホって契約したらちっちゃいカードみたいなんを入れるでしょ」


「そうなの?」


「うん」


 僕は説明を諦めた。


「こんにちは。なにかお探しですか?」


 唐突に声を掛けられる。

 振り返ると店員さん、というか、キャリアの営業の方かな?

 この辺のスマホ販売コーナーにいる店員さんの所属がどこか、それについてを話し出すとするならば、この余白はそれを書くには狭すぎる。

 300年後くらいにうまくまとめてくれる人が現れるのを祈ろう。


「すみません。とにかく安くて壊れたり無くしたりするのが前提で新規契約が一台と、とにかく高性能で動画撮影や編集までできるようなものをこちらも新規契約で一台考えているんですが、ちょっといま時間があんまりなくてですね。18時に上野で約束があるんで、ひとまずお話だけ聞こうと思ってきたんですが、いいですかね?」


「もちろんです! 二台とも新規契約ですか? キャリアは決めていらっしゃいますか? ご夫婦でデートですか? いいですね!」


 最後の聞く必要あった?

 あと夫婦って言うには僕ら若すぎない?


「ひぇっ、夫婦はまだ早いというか、ええ、これから私どうなっちゃうの? 今夜お嫁さんにされちゃうの?」


 僕は18時に上野で約束があるって言ってるでしょ。

 あと本当に君の脳内どうなってるのよ。


「二台とも契約者は僕で新規です。キャリアは特に決めてないですね。通信速度が速く、安定しているものが望ましいです。月額料金を無理に下げる必要はないですが、あー、なんかYouTubeへのアクセスは通信量を消費しないオプションとかありましたっけ? 最後にデートではないです」


「承知しました。探してみますね。それと彼女はまんざらでもないみたいですよ」


 頬を染めてもじもじするんじゃない橘メイ!


 僕は知っているぞ。

 お前は基準を上回っている男性なら誰にでもこうなる!


「ね、ねぇ、もしかしてこれってデート?」


 僕、いま違うって言ったよね?


 どっちかというと拉致からの逆拉致だと思います。


「外から見たらそう見えることもあるんじゃないかな」


「つ、ついに……、初めてじゃなくなっちゃった」


 君はデートをなんだと思ってるの?


 僕が橘メイのあまりにもあんまりな清純さに呆れていると店員さんが戻ってくる。


「お待たせしました。YouTubeへのアクセスに通信量を消費しないプランがあるところもあるんですけど、お客様のご要望だと三大キャリアのデータ無制限プランがオススメかなと思います。回線も太いですし、安定感もあります。本体が壊れることが前提だとおっしゃってましたが、探索者の方ですか?」


「そうですね」


「そうなの!?」


「ご承知だとは思いますが、GPS信号が途絶えている場合、つまりダンジョンでの損傷は一切保証がございません。ダンジョンへのスマホの持ち込みは推奨されていませんけど、その上で、ということでよろしいでしょうか?」


「基本的にはロッカーに預けるんですが、土日とかだと埋まっちゃってることも多いので」


「まあ、そうですよね。そこでいわゆるダンジョン保障がオススメなんですが、付けられる機種に制限がありまして、今だとオススメなのはこちらの機種ですね」


 ダンジョン保障はスマホの本体保障をしてくれるオプションサービスだけど、価格がすごく高いんだよね。

 普通なら付けない。

 付けないんだけど、メルに持たせるとなると話は別だ。

 まだ探索者証を持っていないメルがダンジョンに入る際に、ダンジョン併設施設のロッカーは使えない。

 キャラクターデータコンバートを使ってアーリア経由でダンジョンに入ることになると思うんだけど、そうなるとスマホをあっちに置いてくるか、そのまま持ってるかってなっちゃう。

 すっかり忘れて持ってきて、戦闘中に壊れることを考えるとダンジョン保障は必須だ。


「へぇ、案外小さいんですね」


「ええ、機能を最低限に絞って本体サイズを抑えることで頑強性能が飛躍的に上がりました。大魔猪の突進にも耐えられますよ」


 ドラゴンの突進はどうなんですかねえ?

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