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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第338話 流れるように

 三億円とはつまり、一千万円の札束が30個だ。

 いわゆるブロックで30個。


 入るかなとちょっと疑問に思ってたけど、余裕でしたね。

 80Lのバックパックはやはりデカい。


 その他諸々全てをバックパックに入れてもまだ余裕がある。


 まあ、ちょいデカすぎるのはあるよね。80L。


 銀行を出たのは15時を回っていて、銀行の裏口から外に出るという貴重な体験をさせてもらった。

 中に客が残っていても窓口のシャッター閉めるんだ、とは思った。


 まあ、僕の場合は特殊な例だとは思う。


 さて、次は司法書士か。

 白河ユイの親権放棄に関する書類作成を手伝ってもらわなければならない。

 というか同行をお願いしないとだな。


 弁護士ではないので交渉そのものは手伝ってもらえないが、書類作成はお願いできるはずだ。


 僕はスマホを取り出す。


 うーん、電話するのに躊躇なくなってきたの咲良社長じみて来た気がするぞ。

 こういう経験を積んで人って電話ができるようになるんだな。(違います)


『はい、こちら神立かんだち司法書士事務所です。本日はどういったご用件でしょうか?』


「すみません。神立先生にお繋ぎしていただけませんでしょうか? 歌舞伎町のフジカワからだとお伝えください」


 これは別に歌舞伎町の代筆屋の名前というわけではなくて、符丁であるらしい。

 つまり代筆屋からあんまり合法的ではない内容の依頼があるんだけど、ということだ。


 保留音をしばらく聞いていると、電話が取られる。


『はい。こんにちは。神立です。あいつの紹介ってそういうやつ?』


「はい。それで間違いないです。詳しい話をしたいのですが、先生はいつがご都合よろしいですか?」


『オタクはいまどこ?』


「浅草ですね」


『うーん、なんか分かりやすい特徴とかある?』


「80Lバックパック背負ってますけど」


『それは分かるわ。じゃあ上野の翼の像分かる? 分からんくても調べてその近くにいてくれ。うーんと、18時でいい?』


「分かりました。お時間作っていただきありがとうございます」


『はいはい。じゃあ上野の翼の像の辺に18時で、よろしくね』


 さっきまでバカ丁寧で超速度の営業マンと話してたからのんびりしたもんだなって思っちゃうけど、十分スピード感あるよね。

 今から18時行けるって予定どうなってんの?


 ん~、それじゃ秋葉原に移動してスマホの契約して、どうせ審査の時間が出てくるでしょ。

 閉店までに戻ればいいだろうし、そうしよ。


 銀行口座も柊和也の携帯番号に紐付いてしまっているので、早く三津崎湊名義の契約に切り替えたい。


 というわけでさくっと電車で秋葉原に移動。

 どこで契約してもいいんだけど、手続きが早く済みそうなところがいいな。


 駅の東側にはヨドバシもあるけど、人が多すぎて逆に時間かかりそう。

 西側の、いわゆるアキバーって感じのエリアで人の少ないスマホショップ探した方がいいかな?

 まだ16時前だし、ちょっとアキバというものの雰囲気も見てみたいので西に行ってみよう。


 そうして秋葉原ジャンク通りに入ってこれがアキバかぁって思っていると、突然ぐいと腕を掴まれて路地に引っ張り込まれる。


 うわ、油断してた。

 アーリアだとこの感じで路地に引き込まれてそのまま消えてしまう人がたまにいるので常に警戒しているのだけど、日本だし完全に油断していた。


「な、なにやってんの。なんで後付けてくるの!」


 僕を路地に引っ張り込んで小声で叫んだのは見知らぬ女の子。


 小声で叫ぶってなに? 咲良社長もやってたよね。


「えっと、ごめん、勘違いじゃないかな。たまたま歩いている方向が一緒だったとか」


「そんな偶然あるかー!」


 なんか聞き覚えのある声だなと思ってその顔をよく見ると宇宙一可愛いアイドル(自称・笑)だった。

 君、私服だとそんな、いや、変装か。

 帽子に眼鏡かけると全然分からないもんだね。


 ピーンと、その時、僕に電流走る。


「あ、そうだ、ちょうどいい。いま暇?」


「流れるようにナンパしてきた!?」


「ちなみに本当に偶然だからそこは信じてほしい。ちょっと2時間くらい付き合ってくれない?」


「ご休憩!?」


 ビクッと震える橘メイの手から黒いビニール袋が滑り落ちて地面に落ち、中身が少し滑り出す。


「落としたよ」


 そう言いながら拾ってあげようとしゃがみこむと、橘メイが重力を超えた速度で袋に中身を戻して、拾い上げた。

 すご、その動き、レベル20くらいあるんじゃない?

 あと君、自分を題材にした同人誌買ってどうするの?


「見た?」


「よく分からなかったな」


「ぐぬぬ」


 今日はぎりりじゃないんだね。


 まあ、そっとしておいてあげるのが正解だろう。

 話を転換するためにも僕は自分の欲求を彼女に告げる。


「ちょっと案内を頼みたいんだ。この辺でさくっとスマホ契約できる店とかない?」


「スマホ? アンタ自分のとマネージャー用も持ってるわよね。まだいるの?」


「うん。あと2台契約しとこうと思って」


 僕がそう言うと橘メルは全身でドン引きを表した。

 言葉にすることなくドン引きをパントマイムできるのすごいよ。


「こわっ! えっと、契約、するのよね?」


「そう、新規で二つ」


「そういうのならこの辺はあんまりかも。スマホは売ってても、中古とかだし、契約できるところはあんまないかな」


「うーん、逆張りして失敗したかあ」


 素直にヨドバシカメラ行っておけば良かったな。


 僕が反省していると橘メイは僕の姿をじろじろと見つめてきた。


「それにしてもなにその荷物? 見た感じだけでずっしりしてるんだけど」


「ああ、三億円」


「はは、アンタの冗談つまんな。グリコ森永事件かよ」


「違うよ!? 三億円事件は別件だよ!?」


 あと古いよ! 君本当に女子高生?

 ファンの年齢層に合わせて勉強してるんだとしたら偉い!


 ん? ファンがグリコ森永事件を知っている?

 あれれ~、おっかしいよー!


 女子高生アイドルのファンが昭和の事件に詳しいなんてことある?


 ……いるんだよなあ。普通に。

 それくらいの年代のファン。


「あれ、アンタ、地元関西だっけ?」


「なんで?」


「なんかツッコミが関西っぽい。それに東京住みじゃないのは確かよね」


「なんで?」


 僕、なんで? しか言ってないな。

 地元関西はともかく、東京住みではないとなぜ言い切れるんだろう?


「だって、つまり、近くに住んでたらマネージャーが一時的なんてありえないし」


「なるほど。僕は有能だ、と」


「そんなこと言ってない!」


「無能だと思ってるなら、社長が切ると思うでしょ。可能であれば留まらせたいと社長が思う程度には優秀だ、と君が判断していることになるよね」


「ぎりり」


 あ、出るんだ。そっちも。

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