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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第311話 騒がしい朝(昼)

 翌日、鳴海カノンと白河ユイに案内される形で、僕らはステラリアの所属事務所であるブリギットを訪れた。

 咲良社長から場所のLINEは来てたんだけど、やっぱり人に案内してもらうと安心感が違うね。

 でもなんで咲良社長からのLINEの文面がずっと丁寧語だったんだろうか。


 いったい彼女になにがあったんだ?


 ブリギットの事務所は普通の雑居ビルの中にあって、あんなライブをやった運営元とは思えない質素な感じだ。

 所属アイドルが集合ポストを確認してからエレベーターに向かうところなんかも、いかにも中小って感じがする。

 知らんけど。


「おはようございま~す!」


 鳴海カノンが元気の良い挨拶で、


「おはようございます」


 白河ユイがひどく真面目な口調で挨拶の言葉を口にする。


「おはようございます~!」


 メルは迷わず付いていった。


「お邪魔しま~す」


 僕はこう、中を覗き込みつつ、入っていいのか空気を確かめながら入っていく。


 性格が出るよね、こういうの。


「あ~~~!!!」


 事務所に全身が入った辺りで、奥から叫び声が響いてきた。

 目を向けると私服姿の橘メイが僕らを指差している。


「なんで同伴出勤してんの!?」


 どうはん出勤ってなに?

 言いたいことはなんとなく分かるけど。


「えっと、たまたま駅で一緒になって」


「パジャマパーティした」


「意味不!!」


 僕が下手な言い訳をしようとしたところに白河ユイがおそらく彼女なりに事実を伝え、橘メイがまとめた。


 うん、意味分かんないね。


「ユイちゃんは昨日ウチに泊まったんだよ!」


 鳴海カノンが着地点を求めてそう言った。


「私も!」


 メル、なんで君もそっち側なの。


「はぁ!? なんでオリヴィアまで……。ってことは、えっ? まさか!?」


「ないないないない!」


 僕が慌てて首を横に振る。


「そうですよね。ヒロくん、すぐ出て行っちゃいましたもんね。ぷんぷん!」


 鳴海カノン、なぜ君までそっちに行ってしまったんだ。


 僕はもう説明できるのが自分しかいないと思って、言葉を選ぶ。


「はぁ~、あの後、色々あったんだ。オリヴィアとユイちゃんは、カノンちゃんとこに泊まってもらって、僕はちゃんとホテルに行ったよ」


 僕は可能な限り事実を口にした。


「いろいろ……。色々。色ってあれよね。俺色に染めてやるぜ、みたいな」


「ちょっと君の脳内一回覗いてみていいか?」


 そもそも僕は自分のこと俺って言ったことないと思うよ。


「このスケベ!」


 もし脳内を覗かれたと思ったとして、その返答が返ってくるのは君の本性が表れているんだと思うよ。僕は。


「まあまあ、いいじゃないか。カノンもユイも嘘を言ったりはしないさ」


 奥から小鳥遊ユウが顔を見せていった。

 彼女の私服はステージ衣装とはがらりと変わって、男性的というか少年的で、ちょっと髪の毛が長めなだけの男の子に見える。


 君、私服格好いいね。そのコーディネート僕も真似していい?


 いや、僕がそういう少年っぽいの着ても似合わないか。


「ヒ~~ロ~~」


 奥から九重ユラが走ってきて、なぜか僕に抱きついた。

 ぽふって感じで、僕の胸よりちょっと下くらいに彼女の頭がくる。


「なにやってんのユラァァァァ!」


「そこ私の席ィィィ!」


 なんだこれ、どうなってんの?


 とりあえず兄の習性で九重ユラの頭をポンポンとしてみる。

 いや、水琴にこれしたらめちゃくちゃキレられそうだけど。


「だっこ」


 君、本当にいくつ?


 と思いつつ、兄の習性でひょいと抱き上げてしまう。

 なんというか、よく腹話術師が人形を抱えるみたいな感じで。


「お~、たかい~」


「僕、別に背は高くないけどね」


「ふふふ、私が一番背が高くなりました。皆さんのつむじが見えます。あ、メイ、十円――」


「え゛っ!?」


「が、そこに落ちてるよ」


「ホント!?」


 頭に伸ばしかけた手を今度は床に向ける。


 10円に飛びつくアイドルは悲しい。


「ヒロ、あっち!」


 九重ユラに言われるがまま、事務所内を移動する。


 ブリギットの事務所内には何人か大人の職員さんがいらっしゃって、僕に気付くと会釈をしてくる。んだけど、みんな女性なんだよなあ。


 咲良社長、ここまで徹底してるのに、どうして……。


「えっと、ユラちゃん、どうして突然……」


 こんなに懐いてきたの? と、言おうと思って、別に突然でもなんでもなく、彼女と関わること自体がほとんど無かったことに気付く。


「うらうらうらやまのすけ~」


 なにそれ?


 彼女の言語機能には何か問題があるのではないだろうか?


「ユラはターゲットを見つけるとその人に全力で依存するんだ」


 小鳥遊ユウがそうやって、ぐるぐると肩を回す。


「いやぁ、肩の荷が下りたなあ」


「僕が生贄だ、これ!」


 邪神を鎮めるために池に沈められる乙女の男バージョンだ、これ!


「ヒロ、あれ取って~」


 言われるがままに、そこにあったスナック菓子を手に取って九重ユラに渡す。


「ぽりぽり」


「人の頭の上で食べ始めた!」


「ホント、助かるぅ。さ、カノンもユイも会議室行こ。昨日の反省会だよ。あ、ヒロくんはユラの面倒見てるだけでいいよ。ほら、メイも指くわえて羨ましそうにしない」


「してない!」


 してたの?

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