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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第308話 書類を渡す

 いったん今の所持金を確認する。


 反社の事務所で奪った、違う、金貨を売って手に入れたのが1億8千万ちょっと。

 鳴海カノンに5千万を渡し、僕とメルで残り1億3千万を分け合ったとして、僕の取り分は6,500万。

 戸籍を買うのに4,200万。

 メルの戸籍の分が多分に含まれているけど、これは僕が望んで買ったものなので、僕の資金から出す。

 残りが2,300万。


 今回代筆屋に払うのが2,000万と、それから司法書士と公証人に払う報酬だ。


 うーん、なんか僕の所持金をきっちり消費させようとする謎の意識が働いてない?


 まあ、汚い金なんでさっさと無くなって欲しいくらいだけど。


 メルは鳴海カノンの部屋に置いていく。

 だって緊張が解けて、もうゆらゆら船をこいでるよ。


 いつもならとっくに寝てる時間だもんね。ごめんね。

 鳴海カノンと白河ユイは明日の朝、すごく早い時間にたたき起こされると思うけど、それもごめんね。


 女の子三人で雑魚寝する素敵な空間は僕がいなくなることで完成するのだ。


 画像だけ撮っておいてください。


 いや、本気にするな。鳴海カノン!


 いやでもこれファン垂涎じゃない?

 SNSにアップするといいよ。


 そして橘メイがなんでか怒る未来が僕には見える。

 予知能力者プレコグになっちゃったか。


 アプリでタクシーを呼び出す。

 目的地は無し設定で、やってきたタクシーに歌舞伎町に向かってもらう。

 支払いは現金。

 要は痕跡を残したくないということだ。


 適当に付近で降ろしてもらい、人気の無い路地裏へ。

 アーリアへキャラクターデータコンバートして、アタッシュケースを手に戻ってくる。

 それから代筆屋のドアを符丁通りに叩いた。


「もう常連だな」


 そう言って招き入れられる。


「時間が無いので早速ですが――」


 コーヒーを入れに行った代筆屋の背中に向けて必要なものを再度説明する。


「――それから今回手続きしてもらいたい子の学生証、保険証、パスポート、マイナンバーカード、実印のそれぞれ現物、戸籍謄本の写し、住民票の写しと印鑑証明を念のために5通ずつです」


 これらの書類をテーブルにずらりと並べる。


「お前やっぱり人生2週目かなんかだろ」


「勉強してるんですよ。色々と」


「お前なあ……、はぁ、なに? ステラリア全部買う気なの?」


「ご存じでしたか」


 鳴海カノンに対してそんな反応してなかったから知らないものだと思っていた。


「別れた妻が引き取ってった息子が白河ユイが推しでね。教えられないなあ、これは」


「秘密は守ってくださいよ。いや、ホントに」


「当たり前だろ。仕事のことも教えてねーよ」


 はぁぁぁ、とため息をついて代筆屋はコーヒーにスティックシュガーを3本まとめて入れて飲んだ。


 アンタが飲むんかい!

 だとしても客の分も用意しようよ。


「とりあえずまとめて預かるぞ。受領証とかはねーからな」


 代筆屋は証明書と、それぞれの身分証を確かめてから、テーブルの脇に寄せた。


「そんなもんあったら困るわ!」


 思わずツッコんでしまう。

 マイナンバーカードに実印を預かりましたって受領証とか渡されても困るよ!

 しかも自分のじゃないし。


「んで、お金です」


 アタッシュケースから一千万円のブロックを二つテーブルに置く。

 代筆屋は特に確認もせずに手元に引き寄せて預かったばかりの書類の上に重し代わりに置いた。


 二千万円の扱いが重しかあ。


「それじゃこっちから、まずは今回の分。司法書士への紹介状と情報をまとめた紙な。こっちは公証人の分」


 僕は受け取って目を走らせる。


「あれ? お隣じゃないんですね」


「アホか、そんなんバレバレになるだろ。木を隠すなら森の中だ」


 ああ、そういうことか。この代筆屋についてその公的手続きをどこでしているのか、ってなると、調べる方はまず隣の司法書士事務所を疑う。

 そこを徹底的に洗うだろう。


「でも案外離れていないんですね」


「その辺は司法書士の事務所が集まってる区域だからな。ここがちょっと外れてるだけで」


「何故です?」


「公証役場があるからさ」


「ああ、そらそうですよね」


 公証役場はここからはちょっと距離があるけど、歩いて行けないほどでもない。

 んで、他の司法書士事務所はもっと公証役場に近い位置に集まってるわけだ。

 まさに森ということなんだろう。


 契約書や遺言と言った書類の効力を補強するのが公正証書で、その作成のためには公証役場に行かなければならない。

 公正証書が付与された書類は、公証人、つまり法務大臣に認められた、公務員じゃないけど公務員扱いの人によって公的に認められたとされ、場合によってはその執行に裁判すら必要がなくなる。


 つまり司法書士に制作してもらった書類を公証役場に持って行くのはよくある流れで、公証役場に近い司法書士事務所は顧客に選ばれやすいのだ。


 これなら水之江愛菜に関する契約書について、これ以上はないほど強い強制力を得られる。


 ただし内容が内容なので、まともな公証人では取り合ってくれないだろう。

 もちろんうまく誤魔化した文面にはしてもらうつもりだけど、ある程度はスルーしてくれる公証人が必要だ。


 公証人の名前はいくつかあって、それぞれ評価が書いてある。


「公証人はこの人って言うのは無いんですか?」


「公証人は報酬が高いから袖の下が通らないんだよなあ」


「そうなんですか?」


「その収入を失うようなリスクは負ってくれない。半分公務員だしな。だから如何にやる気の無いヤツが、やる気無さそうな時間帯に依頼するかってなるんだ。公証人ってのは裁判官を退職したやつの老後のご褒美だからな」


「うわぁ」


 うわぁって言っちゃった。

フィクションです!!!!!!!!

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