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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第2章 異世界と交易しよう

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第28話 メルを日本に連れて行こう

 その日の夜というにはちょっと早い時間に僕はアーリアに転移した。


 転移先のメルの部屋には誰もいない。まだ仕事から帰ってきていないか、食事に行っているのか、あるいは公衆浴場に行っているのだろう。この部屋の鍵は持っていないので出て行くわけにもいかない。立ったままメルを待つことにした。


 40分ほどでメルは帰ってきた。公衆浴場に行ってきた帰りのようだ。部屋で待っていた僕を見るなり、メルはパッと笑顔になった。


「ひーくん! おかえり!」


「ただいま」


 メルの顔を見るのは2日ぶりだが妙に久しぶりな感じがした。現代日本での出来事の密度が高かったからだろう。


「どうだった? お家には帰れた?」


「うん。今も自宅の自分の部屋から転移してきたところだよ」


 そう言って僕は自分の足下を指差す。


「日本じゃ家の中で靴を脱ぐって言ってたっけ」


「そうそう。だから靴を履いてないんだ」


「それでっ! 私は日本に行けそう!?」


「もちろん。誘いに来たんだよ」


「やったぁ!」


・メルシアからパーティ申請が届きました。

>はい

>いいえ


 もちろん僕は“はい”を選択してメルとパーティを組む。


「あ、でも飛ぶ前に靴を脱いで、それから転移して家から出るまでは静かにしておくこと。僕の家族にバレたらなんて言われるか分からないから」


「分かった。獲物に忍び寄る時みたいに静かに、だね」


 そう言ってメルは靴を脱いで手に持った。


「それじゃ行こうか」


 僕はキャラクターデータコンバートと念じる。次の瞬間、僕らは日本の僕の部屋にいた。


「へぇ、これがひーくんのお部屋か」


 言われたことは忘れていないのだろう。声を潜めてメルが言う。


「本が一杯だね。流石、学者の卵」


 そのほとんどは漫画というもので、娯楽のためにあるんだ、とは言えずに僕は指を立てて唇に当てた。


「しーっ! まず僕が部屋を出るから、メルはそこにいて」


「分かったよ」


 僕は部屋から顔を覗かせて廊下を確認する。僕の部屋から玄関までは10メートル無いくらい。一本道の廊下で、水琴がトイレにでも行こうといきなり部屋を出てこない限りは見られることはない。


 考えてから気付いたけど、結構危ないな。かと言って水琴の部屋をノックして、「お前、トイレ行きたくない?」などと危ないことを聞く兄にはなれない。即行で母さんに告げ口され、僕の家庭内カーストは地に落ちる。


 僕は部屋に戻り、メルに手招きをした。メルと2人、忍び足で廊下を進む。玄関で靴を履いて、ドアが音を立てないようにそっと押し開ける。閉める時にも細心の注意を払った。


 ようやく外に出て、メルと顔を見合わせる。


「もう喋っていい?」


 まだ小声でメルが聞いてくる。


「もうちょっとだけ待って」


 僕らは家の前から移動を開始する。住宅地を抜けた辺りで、僕は人心地をついた。


「もう大丈夫だよ」


「ふわぁ! すごい、すごいね!」


 メルはあちこちを指差して、あれがなにか、それがなにかと質問してくる。特に車には驚いたようだった。馬のいらない馬車だよ、としか説明のしようがない。


 メルの質問に答えながら夜の路地を歩く。時々通行人から奇異な目で見られるのは、僕らがあちらの世界の言語で話をしているからだろう。僕の住む町は田舎で外国人が観光にやってくるようなことはまず無い。


「なにあれ? すっごい明るい!」


「ああ、コンビニだね。一日中開店している商店だよ」


「一日中? 夜の間はどうするの? お客さんなんて来ないでしょ」


「商品を並べ直したり、注文したり、やることはあるみたいだよ。それにお客さんがまったく来ないというわけでもないみたいだし」


「行ってみたい!」


「仰せのままに」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく拝見させていただいています。 [気になる点] メルが日本に来たときに洋服とかどうしていたんでしょうかね? 流石に異世界の服装とかそのままで日本を歩くことができないと思うのですけど?…
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