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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第294話 取引を持ちかけられる

 咲良社長が次の店を探している間、僕は鳴海カノンに言われて皆からちょっと離れたところに付いていった。


 もちろんメルの了解は取ったよ!


「その、ちゃんと顔を見て話をしたくて」


 もじもじと指を組んだり離したりしながら鳴海カノンは、言葉とは裏腹に僕から顔を逸らして言った。


「うん。……ええと、借金のこと?」


 僕は逃げるように、誤魔化すように、そう言う。


「それもあります。私の借金は1,200万円でしたから、それはお返しします。今は持ってないんですけど」


「持ってきてたら大問題だよ」


 僕は苦笑する。

 たぶん今日のライブの売り上げを全部足しても1,200万円には届かないんじゃないかな?

 だって1,300人の集客で、チケット代ドリンク代で一人一万円にも届かないだろうし、あれだけのことがあったからか、物販は結構売れていたけど、それでも総額で1,200万円にはならないと思う。


「ヒロくんは急がないと思ったので甘えちゃいました」


 えへへ、と鳴海カノンは照れたように笑う。


 まあ、僕は僕で五千万円以上を手に入れているしね。

 もう半分以上使っちゃったけど!


「本題はそれじゃないです」


 ですよねー!


「その、……ヒロくんはリヴさんと結婚、するんですよね?」


「まあ、偽装結婚みたいなもんだけどね」


 自分で言うの悲しいね。

 メルは僕の全財産を出しても考えるとしか言ってくれなかったから、これはあくまでメルが日本で自分の存在を認めて貰うための代償だって分かっている。


「そうでしょうか? いえ、それはいいんです。良くないけど、いいんです」


 まあ、確かにダメだって言われても、それは鳴海カノンには関係の無い、僕らの事情だ。

 鳴海カノンにはそこに立ち入る権利は無い。


「その、一晩ちゃんと考えてみたんです。あの、LINEのあとに……」


 あ、良かった。

 あるよね。分かる。

 夜中に書いたラブレターを朝に読み返したら恥ずかしくなるやつ。


 いや、書いたことはないんだけど、分かるよ。その感じ!


 深夜、しかもあれだけのことがあった直後だと、気持ちが昂ぶってて、変なテンションになってることあると思います!


「よくよく考えてみたんです。私は気付きました」


「うん」


 ちゃんと気付けるのはいいことだ。

 人はそうやって過去の自分を反省しながら前に進んでいくのだ。


「ヒロくんにはもう1つ結婚できる戸籍がある、ということに」


 はい?


「ヒロくんは本当の戸籍では年齢が足りずに、リアさんと結婚するために成人している戸籍を買いましたよね。つまりヒロくんの本来の戸籍には空きがあります」


 あれれぇ?


「年齢が足りない、ということでしたが、それはヒロくんが18歳未満だということですけれど、きっと18歳になるのにそんなに長い時間はかからないですよね?」


 まあ、はい。

 それは確かに。


 あと一年ちょっとくらいだね。


「そうしたらヒロくんの本来の、生来の、本当の戸籍に誰かが入籍することができます」


 できるなあ!


「待って! ちょっと待って! 日本では重婚は禁止されていてね」


「戸籍が二つあるから重婚ではありません」


 そうだねえ!


 重婚というのは法律上の配偶者がいるのに、別の人と法律上の結婚手続きをすることだから、戸籍が別だと適用外ですね。

 そもそも同じ人間が二つ戸籍を持っている状態が違法なのだけど、少なくとも戸籍上は重婚という扱いにはならない。


「つまり合法です」


「脱法だよ!」


 思わず叫ぶ。

 違法じゃなけりゃいいって話じゃないよ!


「それは今更じゃないですか」


 確かに戸籍買ってる僕が言うのは今更だね。


「それとも私のことが嫌、ですか?」


 その聞き方はズルいよ!


「君は、僕には、その、もったいないよ」


「一億円なんですよね。私」


 昨日の僕のバカァァァァ!


「いえ、ちょっと違いますよね。ヒロくんは価値のすりあわせが大事だと言っていました。一緒にいるためにはお互いの価値が同等になるように調整していくのだ、と。取引を覆すのに私の価値では足りませんでした。では貴方の隣で私が生きるのに、私の価値は足りませんか? でもさっきもったいないって言ってましたよね。もったいないってことは、ヒロくんは自分のほうが価値が少ないって仰ってるんですよね。ね?」


 さっきの僕のバカバカ!


 と、まあ、冗談はこれくらいにして。


「そういうことではないんだよ。カノンちゃん。確かに僕は、僕にとって君はもったいないくらいだって言った。僕には君に払える対価が無い」


「ヒロくんがいてくれるだけでいいんです」


「つまりそれなんだ。僕は君との天秤に乗せられるものがひとつもない。なにひとつだ。僕の全てはオリヴィアに捧げられているから」


「知っています」


 あれぇ? これで説得できるはずでは?


「ヒロくんは全財産をリヴさんに捧げています。リヴさんは考え中ということでしたけど、それはそれでいいです。つまりヒロくんには私と釣り合わせるための財産を持ち合わせていない。そう仰っているんですよね」


「……そうだね」


「そこは私が貸し付けます」


 いきなり新しい概念が出てきたな!


「ヒロくんの全財産とは別に、私からの貸し付けで私と釣り合わせます」


「ごめん。ちょっと待って、混乱してきた」


「貸し付けですから、ヒロくんは私に返済が必要になりますけど、大丈夫です。夫婦になった後の収入はその収入を得るための負担割合に応じて按分です。とりあえず五分五分ということにして、私は今後最低でも二億稼ぎます。そうしたら半分はヒロくんの財産なので、それで釣り合いが取れました。大丈夫です。論理的破綻はありません」


 自信満々に言い切る鳴海カノンだけど、マジでどういうこと???

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