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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第282話 発火点の違うふたつの物質を同時に燃やすには

 ライブはごく普通に始まった。


 2daysのライブってよく知らないんだけど、わざわざ二日に分けて違うことをしたりしないのは分かる。


 ステラリアの登場も、その後の流れもまったく一緒。


 だけど観客の反応は少し違う。

 何故ならこの場にいるうちの500人はステラリアではなく、メルを見に来た可能性が高い。

 彼らが登場を待っているのはメルだ。だからどうしてもステラリアのパフォーマンスに対する熱狂が少ない。


 当日券の人たちだから、後方に固まっているのが唯一の救いだ。


 オタ芸の人たちも来てはいるんだけど、スペースが無くて踊るに踊れないようだ。


 つまり何が言いたいかと言うと、昨日に比べて盛り上がってない、ということ。


 ステラリアのパフォーマンスは普通の曲の時も良くなったし、MCでも橘メイは周りにうまく役割を振るようになった。

 そうするのは正しい。

 通常であれば。


 でも今回は単独の橘メイが持つあの引力を使って、メルの客を奪うべきだった。

 そうすれば観客に一体感が生まれ、あの爆発の下準備ができただろう。


 僕はスタッフさんにカンペを出せないか聞いてみる。

 だけどそれは咲良社長じゃないと判断ができないと言われてしまう。

 咲良社長は……、どこだ?


 このままではもうバトルが始まってしまう。

 その前に欲しいのだ。あの橘メイの力が。


 僕の願いも虚しく、咲良社長の姿を見つけられないまま、2回目のMCが始まる。


「ここでサプラーイズ! 今日はなんとなんとななんと、特別ゲストが来ていまーす!」


「メイ、昨日と一字一句同じじゃないか。サプライズになってないよ」


「今日はむしろそっち目当ての人も多いみたいですねっ!」


 鳴海カノンが元気いっぱいに後方のメル目当ての観客に手を振る。

 闇を振り払った今日の彼女は昨日より輝いているのに、絶対にそうなのに、このままではライブ自体は昨日を超えることができない。


「それではさっそく登場していただきましょう」


「オヴィヴィヴィアちゃ~ん」


 ここで九重ユラのボケは普通にキツい。

 台本では普通に呼ぶことになってるから、良くないアドリブだ、これは。


 まだ普通に出て行かせたほうがよかった。


 メルになにかを言っておくべきだったんじゃないか?


 だけど僕は今日のリハを見てもいないし、流れも知らない。

 余計なことを言うと、それこそこのライブをダメにしてしまうかもしれない。


 メル自身も深く集中して、自分の世界に入りこんでいる。

 なにせ僕の存在にまだ気付いていない。


 それ自体もおかしいのでは?


 観客がメルを呼ぶ。

 昨日とは違って、リヴちゃ~ん! という叫びが聞こえてくる。


 メルは顔を上げ、そしてステージに向かう。

 昨日と同じようにメルを見て上がる歓声。

 今日のメルは自分のマイクを持っている。


「やっほー! こんばんは。オリヴィアです。リヴって呼んでね!」


 リヴちゃーん! という絶叫が重なる。


「本当は私の宣伝をさせてもらうってことで昨日もサプライズ出演したんですけど、なんかノリに乗っちゃって、すっかり忘れてたので再登場です」


 てへっ、と拳で頭を叩くメル。

 今日の出演事情はそれではないけど、そういうことにしておけば今日の理由にできるってことかな。


「というわけで今日も同じ事になったら困るので、先に宣伝だけさせてください。私はYouTubeやTikTokで配信者をやってますというか、始めたところです。チャンネル名はOliviaChallengeですので、ライブが終わったら探してみてくださいね!」


 わぁぁと上がった歓声は後方からの方が多い。

 彼らはチャンネルが公になる前に辿り着いた古参だ。

 ニャロさんの話に寄れば強火ファンになる可能性が高い。


「メイちゃん、今日も勝負するんだよね?」


「昨日の負けは認めるわよ。でも今日は勝つ! 勝ったら賭けはなかったことにしていい?」


「それがメイちゃんの賭ける内容ってことだね。分かった。いいよ。ステラリアが勝てたら、ね」


 挑戦的にメルが言う。

 そう、今回はそれでいい。

 前回は僕らは挑戦者、というより実際的には被害者で、加害者である橘メイを叩き潰すつもりで向かって行ってた。


 でも今回は違う。

 メルの宣伝のために結ばれた契約だ。

 そしてそれは果たされたから、僕らが悪役ヒールであるべきだ。


「絶対に叩き潰す」


 親指を下にしてサムズダウンする橘メイ。


 きみ、なんで自分から悪役ヒールになっちゃうのん?


「順番はどうするの?」


「この前はこっちが先だったから、今度は先行を譲ったげる」


 メルの質問に橘メイはいかにも先行が有利みたいにメルに先行を押しつける。

 いや、これ絶対、後攻のほうが有利でしょ。


「そう? リタイヤしたくなったら言ってね」


 昨日の橘メイの言葉でぶん殴るメル。

 敵意ヘイト向けられてるからしゃーないね。

 流石のメルも戦闘態勢だ。


「ぎりり、絶対泣かす」


 ぐぬぬは聞いたことあるけど、ぎりりって言う人は初めて見たな。

 それ、グギギと間違えてない?


「それじゃあステラリアの皆は衣装を着替えるので一旦退出でーす。今日のルールを私から説明するね。持ち時間はそれぞれ10分。より皆さんを盛り上げた方の勝ち。判断基準はありません。わりとテキトーです。これ着替え時間のための演出だからね。あ、言っちゃった」


 客席から笑いが起きる。

 自分の持ち時間を使わずに観客の心を掴みに行ったか。

 メルも強かだ。


「今日の私の格好を見てもらえば分かると思うけど、昨日とまったく同じことはやりません。期待してた人はごめんね。昨日のはやり過ぎで怒られちゃったんだ」


 怒られてたのは主に咲良社長でしたけどね。


「私のチャンネルにはダンス動画が上がってて、もう見てくれた人もいるよねー!?」


 メルは意図的に客席の奥のほうに向かって呼びかける。


 見たよー! と歓声がそれに応える。


「じゃあ、それと同じことをしても芸が無いので、ステラリアさんの曲からこの衣装に合うようなガーリーな曲を歌って踊ります。セトリには入ってないよね? だいじょうぶ? 良かった。じゃあいつでもどうぞ!」


 そして曲が始まった。

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