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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第277話 僕らは入籍する(そのうち)

 そこから粘って交渉した僕は、結局自分用の身分もひとつ買うことで、込み込み4,200万で手を打った。

 今後のこともあるのであまり値引きするのも良くないだろう。


 この男は戸籍を売買するのが本業ではなく、裏社会の人間のために様々な公的書類を用意する、つまり代筆屋なのだそうだ。


「歌舞伎町の代筆屋と言えば俺のことになる」


「ここ歌舞伎町からは微妙に外れてません?」


「だからだろうよ。なんでバカ正直に居場所を言うんだよ」


 言われてみたらそりゃそうだ。


 [地名]の[職名]みたいな呼ばれ方をするキャラクターって創作物でよく出てくるけど、今後は本当にそこに居を構えているのか注意深く見てみよう。


 しかし値引き交渉したとは言え、日本人成人男性の戸籍が安すぎない?

 実質200万や。しかもこれ5割増しやで。


 だけどこれによって僕は20歳の三津崎湊みつみさきみなとという身分を手に入れた。

 メルは樋口アナスタシア恵里だけど、近いうちに三津崎アナスタシア恵里になる。


 サービスでここからのオススメルートも教えてもらった。


 まず現在の住民登録地で僕らのマイナンバーカードを作成。

 どこかに住所を手に入れて、どちらか、あるいは両方の転居手続きをしてから、樋口アナスタシア恵里と結婚。

 樋口アナスタシア恵里の戸籍は自動的に親の籍から外れ、僕の三津崎の戸籍に入籍する。


 これで僕らは顔写真付き身分証明書を手に入れ、アナスタシア恵里の戸籍は見た目は綺麗になる。


 アタッシュケースは軽くなったけど、片方に五千万円を詰めて、鳴海カノンに渡すことができたので、ちょうど良かった説もある。


「お二人は何者なんですか?」


「その質問はとても多層的な構造を孕んでいるね」


 閑散とした終電で、鳴海カノンはそう僕に聞いていた。

 メル? 僕の肩に寄りかかって寝てたんだけど、ずり落ちて膝枕になってるよ。

 客が少ないから問題は無いね。


「僕はヒロで、三津崎湊だ。他にも名前があるかも知れないね」


 鳴海カノンは首を横に振った。


「……貴方のことをもっと知りたいんです」


「踏み込んではいけない領域というものがあると僕は思う。君は不運にも裏社会と繋がりを持ってしまった。そのお金をちゃんと使えば足を洗うことができるはずだ。君は普通の、まあ、アイドルが普通かどうかは置いておいて、表の世界に戻ることができる」


 その言葉を聞いて、鳴海カノンは膝の上に置いていたアタッシュケースをぎゅっと抱きしめた。強く。絶対に離すまいと。


「僕らは無理だ。無理なんだよ。踏み込んだ世界から足を抜くことがもうできない。僕らはやりたいことがある。この足を踏み込んだままでないとできないし、抜くつもりもない。僕はね、君を巻き込みたくはない。これだけ手伝わせておいて、酷い話だとは思うけれど。君には本当に感謝している。始まりはともかく、僕は君から多くのものをもらった」


「なら、私も巻き込んでください」


「……明日のライブが終わってから、もう一度聞かせてくれないか? 僕に巻き込まれるということは、輝きを手放すことになるかもしれない」


 ぎゅっと鳴海カノンは顔を顰めた。

 思い出したのだろう。

 ステラリアの仲間達のことを。


 彼女はステラリアのことをとても大事に思っている。

 僕の側に足を踏み入れるということは、そこからの決別を意味している。


 絶対に、というわけではないけれど、可能性は高いだろう。


「ひとつだけ聞いていいですか?」


「どうぞ。今日のお礼、というには安すぎるな」


「ヒロさんにとっての私の価格を教えてください。日本円で」


「ふはっ」


 思わず声が漏れた。

 笑っちゃった。


 強いな、鳴海カノン。

 普通の女の子で、アイドルで、裏社会に繋がりがあって、でも善性で、芯がある。

 ちょっと心が弱いところはあるかもしれないけど。


 どうなのかな?

 あの状況で平静でいるほうがおかしいのでは?


 そしてあの状況で自分以外の人間を、それも関わりのそんなにない僕らのために啖呵を切った。


「一億円くらいなら出してもいい。もしも君の身に危険が及んでいるなら、行けるなら助けに行く。少なくとも一回はタダで」


「じゃあ! 連絡先教えてください!」


 ずいと鳴海カノンは僕のほうに身を乗り出して、スマホを差し出してくる。


「えと、LINEは、その」


 本名なんだよなあ。


「ダメ、ですか?」


 上目遣いに見つめられる。

 現役アイドルの上目遣いだ。


 僕はアイドルファンってわけじゃないけど、近くで見る鳴海カノンはめちゃくちゃ可愛い。

 こんなのズルいだろ。


「はぁ~~」


 僕はスマホを差し出す。QRコードを表示させる。


「柊和也、さん?」


「本名だよ。秘密だぞ。本当だよ」


「だからひーくんなんですね。私はどうしようかな」


「頼むからヒロくんにしてくれ。それも最小限にしてくれ。君は自分の立場を忘れてはダメだ」


「ヒロくん」


 ちょっと歌うような言い方。


「ヒロくん」


 噛みしめるようにもう一度言って、鳴海カノンはスマホを胸に抱いた。

 人生を買い戻せるアタッシュケースよりも大事そうに。

これがアイドル攻略RTAだよ!


というところで23時間20分続いた連続投稿を終了します!

長々とお付き合いくださりありがとうございました。

面白かったよ!続きが気になる!という方はブックマークと、☆のクリックを是非よろしくお願いいたします。


ところでなんで24時間頑張らなかった?


何故なら2人目が落ちるまで1時間更新で続けるからだよぉ!


止まるんじゃねぇぞ!(3年半エタってた分の土下座)

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