表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

280/544

第276話 誰かの人生を横取りする

 僕が警戒していることに気付いたのだろう。

 男は肩を竦めて、苦笑を浮かべた。


「正直に話してもらえるとこちらとしてはやりやすい」


 んー、まあ、いいか。


 よく考えたら隠すことにほとんど意味は無い。

 誰のために戸籍を買ったかなんて明白だし、鳴海カノンの話であれば、ここではアフターケアもしてくれるとのことだ。

 つまり戸籍を買った後のあれこれもお願いできる。


「分かりました。僕が欲しいのはこっちの白人の女の子のバックアップです」


「偽造パスポートではいけなかったのか? その方が遙かに安く済む」


「完璧に瑕疵の無い非常出口を作っておきたいのです」


「高く付く。非常に。ここは日本で、その子が得て問題の無い、しかも瑕疵が無いものとなると、最低でもこれだ」


 男性は指を一本立てる。


「百万ですか?」


「一千万だ。それで見つかれば僥倖。今なら一万円で帰ってもらってもいいが?」


「話を続けてください」


 僕はアタッシュケースを膝の上に置いて開き、十字に帯封がされた札束を取り出して、ローテーブルに置いた。

 アタッシュケースを閉じる。


「念のために聞いておくが綺麗な金か?」


「いいえ。確信はありませんが」


「資金洗浄に手数料が乗る」


「分かっていますよ。一割くらいですか?」


「五割増しだ」


 はぁ~と僕は嘆息する。

 妥当なところだな。

 最初の一割ってのは吹かしだから、五割は普通の手数料だと思う。


 マネーロンダリングは手間だし、危険だし、目減りするし、その手間を引き受けてくれるだけでありがたい。

 資金洗浄してから持ってくるのは僕には無理だからな。

 こればっかりは仕方がない。


「条件が多いな。瑕疵が無いというのが特に面倒だ。そもそも売りにくるということは問題を抱えているからだ」


「多少の借金くらいなら構いませんよ」


 男性は僕らの後ろに回り、ファイルを何冊か手に取って向かいの席に戻る。


「その子、見たところ東スラブ系の血が濃いな。だが混血か。ロシア人はそこそこいるが……。言っておくが、子どもを売りに来るのは大抵が親だ。その問題もクリアにしたいか?」


「当然です。まずは求める水準をすべて満たすものがあるかどうか。条件変更はそれからです」


「18歳以上、というのは見た目と合致しないのでは?」


「見た目なんて誤魔化しが利くでしょう? 保護者無しで存在でき、契約行為が行える身分が望ましいんです」


「とびきりの難問だ」


 男はパラパラとファイルをめくっていく。


「知らなくて当然だが、人の存在を維持するのにも金がいる。最低限、住所を確保し、税金を支払っていなければ、それは瑕疵になるだろ?」


「滞納があっても構いませんよ。払えばいいですから」


「ここでは全部払っている」


 このリストの全員分!?

 あ、いや、仲介分も含まれているんだったっけ。


 僕は動いている金額を考えて目眩がする。


 これが裏社会か。

 表とは全く価値観が違う。


 ページをめくる男性の手が止まった。


「これはどうだ? 樋口アナスタシア恵里。父親がロシア系ハーフの日本人で、母親がロシア人だ。父親が日本国籍を持っていたから、当人は日本とロシアの二重国籍状態だ。幼稚園、小学校、中学校まで在籍記録はあるが、登校はしていない。親がロシア流の教育を受けさせていると保護員を追い返していたそうだ。中学2年のときに親が書類だけを手にここにきて、俺が手続きをした。そのまま卒業扱いとなっている。生きていたら現在18歳。犯罪歴、補導歴、健康いずれも問題なし、医者にもかかっていなかった」


「つまり死んだ、と?」


「たぶんな。死んだことが表面化するとマズいと思ったんだろう。死体はどうしたのやら。両親はロシアに長期の出張として逃げるように成田から出国、消息不明。彼らが所属していた会社はロシアの貿易商社で当時はそれなりに取引はあったようだが、今はもう日本の支店を畳んでいて、実態を追うことはできない」


 嫌な話だ。

 メルに聞かせたくはなかったな。


「見た目がどこかに残っていたりはしないんですか?」


「無いはずだ。そもそも家から出したことがないという話だった」


「現住所はどこになっていますか?」


「この近くにそういう住所をまとめて登録してる住所がある。金さえもらえば可能な限り早く手続きする。本籍地はどうする? 出生時の住所が登録されているが」


「それは今のところそのままにしておきましょうか。18歳なら分籍して両親との繋がりも、書類上切り離すことはできますよね」


「そうだな。もちろん糸は残るが。ただ理由も無く分籍は目立つぞ」


 目立たずに籍を移動させる方法か。


「うーん、オリヴィア、僕の籍に入ってくれる?」


「私の非常用身分としてだよね。いいよ。私の名前が増えていくね」


 さらりとメルは僕との結婚を了承した。


「――!?」


 鳴海カノンが目を丸くして驚きを隠せないでいる。

 悪いね、これ僕らのじゃれ合いみたいなもんなんだ。


「冗談だよ。ごめんね。実は僕の年齢が足りてないんだ」


「だったら自分の分も買って行けよ」


 ああ、その手もあるのか。

 買っておくのもありだな。


「ちなみにアナスタシア恵里の値段は?」


「諸々込みで4,000万」


「五割は?」


「乗せて諸経費込みで、だ。汚い金が唸るほどあるんだろう?」


「諸々に一年と二ヶ月の保障を加えてください。つまり住所変更などの書類手続きが必要になった場合の費用です。一年あれば、基本の周期的な問題は表面化するでしょうし、余裕込みで」


「毎度あり」


 あ、そこで契約成立にするのズルい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ