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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第270話 足を踏み入れる

 しばらくメルと潜伏すること一時間ほど。

 変装したステラリアのメンバーがカラオケ店から出てくる。

 全員で駅に向かうようで、僕らは気付かれないように距離を取ってその背を追いかけた。


 先に切符を買わなくていいから、こういう時、ICカードで電車に乗れるのって助かるよね。

 こういう時、なんてほとんど無いか。


 鳴海カノンはJRの構内に入り、そこで皆と別れた。


 ここで声を掛けてもいいけど、人目が多すぎる。

 変に会話すると相手がアイドルのステラリアメンバー、鳴海カノンだとバレる恐れがあった。

 せっかく変装しているんだから、電車から降りるのを待とう。


 鳴海カノンは何故か周囲の目を気にするように、周りを確かめながら山手線に乗り込んだ。

 僕らが付けていることに気付いてはいないと思うんだけど、なんでだ?


 鳴海カノンは代々木駅で降りて、中央・総武線三鷹行に乗り換える。

 彼女はここでも周りに目線を配っている。


 まるで誰かに付けられていないか確かめているようだ。

 実際に僕らが付けているんだけど、流石にレベル41の斥候職に付けられているのは想定外らしく、鳴海カノンが僕らに気付いた様子はない。


 鳴海カノンは中野駅で降りた。

 僕らもその後を追いかける。


 少しだけ歩いて人気が少なくなってきた辺りで、そろそろ声をかけるかと思った矢先、鳴海カノンはマンションに入っていく。


 あ、ヤバ、着いちゃったか。

 家まで付いてきたみたいになるのは嫌だったけど、仕方ない。


「ひーくん」


 声を掛けるために行こうとした僕をメルが引き留める。


 メルは建物のエントランスの手前、ゴミ捨て場を指差している。

 それからエントランス。

 その周辺。


「女の子が住むところじゃないよ」


 言われて気が付いた。


 ゴミ捨て場は無造作にゴミが散乱している。

 どの袋もちゃんと縛られていない上、中身が外に溢れていようとお構いなしだ。

 分別されている感じもしない。


 他のマンションもそうだというなら、この辺はそうなんだ、って感じだけど、この建物だけ異様に汚い。

 他と差がありすぎる。


 エントランス。

 数字を入力するキーがあるから、オートロックのはずなんだけど、その扉は開きっぱなしだ。

 防犯、という観点からするとありえない。

 鳴海カノンがアイドルであることを考えると、オートロックが機能していないようなところに住むだろうか?

 少なくとも咲良社長は認めないだろう。


 その周辺についてもとにかく掃除が行き届いていない。

 管理人がいないって感じだ。


 それらを一瞬で読み取って、僕らはエントランスの奥に目を向ける。


 エレベーターの表示は六階で止まった。


 集合ポストで6で始まる番号を確認するけど、鳴海の表記は無い。

 いや、それは当然か。

 だけど、どの部屋にも表札が無い、というのは不自然だ。

 ひとつもない。


 集合ポストを確認したことで疑念はさらに深まった。

 どのポストもチラシが飛び出すくらいに詰め込まれている。


 どの部屋もポストを確認した形跡がない。

 すべてのポストが、だ。


 まるで人が住んでいないように見える。

 だけど人の出入りはある。

 ゴミがそれを証明している。


 エレベーターが降りてきて、僕らは隠れた。

 出てきたのは男女の二人組。

 日本人のようにも見えるけど、会話は日本語ではなかった。


「広東語だね。観光客みたい」


「中国人旅行者か。ということは民泊ばかりが集まったマンションってことか?」


「民泊?」


「個人所有の部屋を旅行者に貸すことだよ。マンションを丸々そうやって使うみたいな話は聞いたことがあるけど……」


 だったら鳴海カノンはなんの用事があってここに?


 なにか嫌な予感が迫り上がってくる。


「とにかく行ってみよう。六階だ」


 エントランスが開いていることが今はありがたい。


 僕らは足を踏み入れた。


 芸能界の闇の部分。

 それがどういうものなのかの一端に。

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