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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第8章 輝ける星々とその守護者について

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第259話 要石はこの手に

 翌日は朝からメルのピンポン連打で目覚める。

 この子、本当に朝が早いのよね。

 眠い目を擦りつつ、メルを招き入れて身だしなみを整える。


 こういう時、鍵をフロントに預けるタイプのホテルじゃないのがありがたい。


 僕らは非常階段のドアを開けて、外側に出ると、そこからアーリアへキャラクターデータコンバートした。


 今週の交易品はあらかじめ僕の部屋に運び入れてある。


 僕はそれらを入れた鞄を背負った。


 事情が変わったため、冒険者ギルド長の動きには気を付けつつ、もうしばらくアーリアに滞在する方針はもう伝えてある。鏡の数も、まだ行けるなら、と取引量を戻してほしいと要請された。


 この後供給が止まると分かっていたら、買えるうちに買っておこうとなるのは自然だ。

 別に駆け引きでやったわけじゃないけどね。


「じゃあ私は予定通りドラゴンのお金をもらってそれを皆に配ってくるね。ついでに明日は仕事無しだって伝えておくから」


「お願いするよ。その後はここで待っててくれたらいいから。お昼過ぎには終わらせるようにはしてね。あっちで予定があること忘れないで」


「任せておいて!」


 僕らはそれぞれの仕事に取りかかる。


 僕はレザスさんのところに、いつものように商品を検めて引き渡す。


「それでカズヤ、悪いんだが」


「どうしました?」


「白金貨を切らしててな。今回の支払いは金貨で受け取ってもらいたい」


「まあ、僕はどうせギルドに預けるんでいいですけど、数えるんですよね?」


「当然だ」


 うわあ。面倒。

 アーリアのお金って日本の硬貨みたいに高さが綺麗に揃っているわけじゃないから、高さで数を把握できないんだよね。

 よって手で数えて、10枚毎に一塊にしていくような作業が必要だ。


 しかもレザスさんはきっちりしているから自分で数えて僕に渡し、僕にも数えることを要求する。

 途中で数え終わった分を取るのはダメだ。

 最後に確認が必要だからだ。


「あれ、お茶の味がちょっと良くなりましたね」


「お、分かるか。ようやくこっちでも使えそうな植物を見つけてな」


 レザスさんはこっちで栽培できるお茶の葉をずっと探していた。

 やっと成果が出たということだ。


「じゃあお茶の取引は減らします?」


「いや、味がまだまだ追いつかん。こっちでの生産分は一般市民へ流通させる。貴族の楽しみを安価に、ってな具合にだ」


「なるほど。産地で格差を設けて、貴族には特別感を残すんですね」


「そういうことだ。……おい、どこまで数えたか忘れたぞ」


 余計なこと言わなきゃ良かった。


 僕らは黙々と金貨を数えて980枚を受け取る。


 もう、ちょっとくらい間違ってても別にいいよ。

 レザスさんはこれで終わりかもしれないけど、僕は冒険者ギルドの受付がもう一回数えるんだからさあ……。


 金貨がどっさり入った革袋を鞄に詰め込む。

 以前の僕なら持ち上がらなかっただろうけど、今の僕なら余裕だ。


「さて、通常取引が終わったところでもう一点、以前からお前が欲しがっていたアレがようやく手に入った」


「本当ですか!?」


 思わず僕は腰を浮かす。


「開拓村用の小さなものだ。あれこれ理屈をこねくり回してどうにかしたが、どういう理屈かはもう忘れた」


 そう言ってレザスさんはひとつの装置をテーブルに置いた。

 蓋のような部分を開けると、何かを置いて挟める構造になっている。


「ここで試しても別に効果の分かるようなものではないんですよね?」


「肉体で感じられるようなものではないからな。そこはもう信じるしかない」


「分かりました。レザスさんを信じていますから、そこは問題ではありません。万が一の場合はレザスさんが相手に報復するでしょうし」


「お前の信用を失ったらと思うとゾッとするな。いつかは去るんだろうが、幸いに期限が引き延ばされたなら、その商機は逃さねえよ」


「ありがとうございます。おいくらですか?」


「金貨で50枚だ。手間賃込みだからそこは気にするな」


「効果範囲は?」


「半径で200メートルってところだな」


「十分です。可能であれば違う効果範囲のものをもうひとつ手に入れてくれませんか? 価格は問いません」


「それが一番嫌なんだよなあ。結局、こっちが試されてるだけじゃねえかよ」


「そこを込みで信用していますよ」


 僕は装置を大事に鞄にしまい込んだ。

 ギリギリ鞄に入るくらいの大きさ。

 その効果を考えると意外な程に小さい。


 これは結界装置・・・・だ。

 30層より深いところにいる魔物から取れる魔石で動く、魔物の侵入を防ぐ結界を発生させる魔術起因の魔道具だ。


「理論については分からないんでしたよね?」


「試行錯誤の末に辿り着いたとしか分からん」


 日本で特許を取るには実際のものがあるだけではちょっと厳しいかも知れない。

 再現性はあるはずだが、30層以上で手に入る魔石という入手が難しい部品が含まれている。

 おそらく僕が持ち込んだものではない材料での再現が求められるだろうから、特許庁に再現能力があるかどうかが分からない。


 現物を使って設計図も書き起こさなければならない。

 魔術的なものだとは聞いているから、構成を物理的に形にしてあって、魔石を流して作動するのだろう。

 つまり形を完全に再現できたらほぼ間違いなく動くし、魔術的に意味さえ通じれば違いがあっても大丈夫のはずだ。

 素材的には魔石からのエネルギーを抵抗少なく流せる素材。

 地球の既存物質だと銀がいいのかな。


 そこもやってみなければわからない。


 だけど結界装置の特許は絶対に必要だ。

 無償公開するために僕が特許を取得する必要がある。


「ありがとうございます。僕の伝手ではどうにもならなかったもので」


「俺がその伝手だろうが」


 がははと笑うレザスさん。

 僕は深く頭を下げる。


 いま世界を守るための要石が僕の手に入った。

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