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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第7章 メルを配信者にしよう

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第246話 実は僕らにジョブは無い

 散々自分のことを斥候職って言ってる僕だけれども、実のところこの世界のゲームシステムにジョブの項目は無い。


 例えばロージアさんみたいに水魔法のスキルを習得していると、一般的に魔法使いとして扱われるが、ステータスには魔法使いと表示される項目は無い。


 あくまでスキルはその人の持つ能力であり、ジョブのような仕組み由来のものではないのだ。


 ただスキルは個々の行動によって習得するから、習得スキルがある属性に寄って、ジョブみたいな扱いをされることは多々ある。


 ジョブとは実際的には自分はこれをします、という宣言だ。

 だから火・水・風・土の四属性魔法スキル持ちでも、自分は戦士ですって剣を持って戦ってもいい。

 逆に魔法スキルを持ってないのに魔法使いを名乗るのは大変お行儀がよろしくないというか信用を失う。

 これは地球でもアーリアでも同じだ。


 だから僕は斥候的な役割をします、という意味で、自分は斥候職だと言っている。


 潜伏スキルも忍び足スキルも未習得でごめんね。


 鷹の目スキルは手に入れているから、周囲への警戒は比較的容易なはずなのだけど、鷹の目ってすでに見た光景から経過時間に応じて、起こりうる事象が思考に残り続けるってスキルで、そもそも見えていないものが見えるスキルではない。

 首を振って周辺をぐるりと警戒しているときは、全周の景色が残っていて物凄く便利なんだけど、見えていないものは見えないので死角から近寄られると弱い。


 これは冗談含みで言うんだけど、給仕の方は忍者なんじゃないかな。

 忍者を名乗る人は聞いたことが無いけれど、そもそも名乗る忍者っておかしいけども、比較的斥候職に近いスキル構成になるんじゃ、っていうか忍者って斥候みたいなもんだな。


「どしたの? ひーくん」


「えっと、僕らに飲み物を提供した人はどんな人だったか分かる?」


「え? あれ? いつの間に!?」


 メルもびっくりしている。

 僕はともかくメルが気付かないというのは相当だ。(僕の方が斥候職であるというのはおいておく)


「一流ホテルじゃ良くあることよ~」


「そういうもんなんですか」


「そそ、お金のあるところに希少なスキル持ちが集まるのは当然でしょ」


「それは確かに」


 スキルは後天的に得る場合のほか、先天的に得ている場合もある。

 確率は種類を限定しないのであれば、30人に1人くらいでいるとされる。

 僕の感覚からするとクラスメイトに1人いるかいないか。


 スキルには熟練度があるから、鍛えなければ強くならないけれど、レベルとは違い敵を倒す必要は無く、スキルに関連する行動をするだけでいい。

 なんならスキルを使わなくとも、関連行動のみで熟練度を稼ぐこともできる。

 だからダンジョンに入ったことがなくても、先天的に得たスキルを鍛えて強くなる場合もありうるのだ。


 例えばだけど、何が分かりやすいかな?

 調理スキルは、料理をしていたらそのうち覚えるので比較的持っている人の多いスキルだけど、習得まで時間は結構かかる。

 だけど先天的に調理スキルを持っていたら、その時間をスキップできるわけで、それまで料理の経験がなくともスキルの力で初期状態で作れる料理は作れてしまう。

 なんというか、先天的にスキルを持っていると基礎を学ぶ時間が必要ないのだ。


 中には習得条件の分かっていないスキルなんかもあって、そういう中でも有用なスキルを先天習得していると、もうその業界からは引く手数多になるらしい。


「先天スキル持ちはいいわよねぇ」


「ですよねえ」


 多分、咲良社長も先天スキルを持たないのだろう。

 僕もそうだから、そう思うのは凄く良く分かる。


 先天スキルとは人生に標ができるようなものだ。

 その道に進めば他の人より先行できる分、アドバンテージを得られる。

 もちろん、別の道に進む人もいるのだけど、回復魔法持ちなんかは医療救急軍隊などなど、選びたい放題だ。

 なんなら治療行為が関係ない職種でも、御社で働きたいです。ちな回復魔法スキルあります。で採用されたりするらしいからな。

 なにかあったときに即座に治療ができるという人材がいるという安心感は大きい。


 相田がやんちゃやってるのも、学校での内申点なんて怖くもなんともないからだろう。

 回復魔法スキルは本当に回復するだけなので悪いことには一切使えない。

 まあ、僕にやってたみたいに暴力の証拠隠滅には使えるけど。

 でもちょっと素行が悪いくらい、スキルの有用性の前には個性で済まされる。


「でも先天スキルは伸びが悪いから、微妙じゃない?」


「「はい!?」」


 僕と咲良社長の声が被る。


「え? だって後天習得のスキルのほうが熟練度上限がたばば――」


 僕は慌てて手でメルの口を塞ぐ。

 こっちの世界はまだゲーム化10年ちょいで、スキル熟練度に上限があることすら知られていないんだ!

 というか、アーリアでも聞いたことがなかった。

 多分、一般常識すぎて誰も教えてくれなかったパターンだな。


「ごめんなさい。この子ちょっと妄想癖が」


「……まあ、一旦そういうことにしておくわ」


 咲良社長は明らかに疑いの眼差しだけど、とりあえず胸の内に留めておいてくれるようだ。


 そういう世界間情報格差は当然ある。

 魔術とかは釘を刺してあるけど、まさか先天スキルにそんな罠があるとは知らなかった。

 となると、先天スキルを持っていないほうが将来性がある。

 先天スキルを持っていない道に進むのが正解ってことになる。


 うわあ、とんでもない罠だぞ、これ。

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