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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第7章 メルを配信者にしよう

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第245話 僕らはお互いを知る

「はぁぁぁ、だるい~」


 ポーターの男性がラウンジから去ったかと思うと、咲良社長は肩を下ろして天井を見上げ、そう呟いた。

 いや、気を抜きすぎでしょ。


「服装と雰囲気に当てられちゃったわ。はいはい、肩肘だる~ん」


「演技……、その、女優さんだったんですか?」


「まあ、それもやってたわね。Vシネでヤクザの情婦役とかでこういう格好もしてたし」


「そう、なんですね」


 神妙に頷いてはみたけど、ぶいしねってなんだろう?


「まあ、さっきまでのは遊びみたいなもんよ。他の客を見ても、ちょっとお高くて、歴史があるけど、普通の海外観光客も受け入れてるみたいだし、そんな緊張しなくてもだいじょぶだいじょぶ」


 今なんでダブルピースした?


「予定とは違っちゃったけど、せっかくこうして同じ席に着いたわけだし、軽い自己紹介でもしておきましょ。名刺とか出すのはお母様が合流してからね」


「僕らは名刺なんて持ってませんけどね」


「準備はしておくといいわよ。あと君はちゃんと芸名考えときなさい」


「あ、はい、すみません」


 僕は別に表に顔を出すわけじゃないんですけど。


「あの、オリヴィアです。はじめまして! 今日はありがとうございます!」


 メルが仰々しく先手を打った。

 誰にでもいきなり親しくするメルにしてはずいぶんと堅苦しい。

 やっぱり緊張しているんだ。


「オリヴィアちゃんね。本名じゃない、わよね?」


「はい。仮名です」


「つまり芸名です」


 異世界言語翻訳さんは時々微妙にニュアンス外すから、全幅の信頼をおいてはいけない。


「オーケー。私は芸能事務所ブリギットの代表をしている花伝咲良です。東雲ひなって芸名で女優やらアイドルやら、まあ色々やってたけど、どれも芽が出なかったし、検索したら色々悪評が出てくるけれど、まあ、それは東雲ひなで、花伝咲良とは切り離して考えてもらえたら嬉しいわ」


「分かりました。その、検索しないという選択肢はありますか?」


 僕がそう言うと咲良社長はきょとんとした顔をする。

 鳩が豆鉄砲を食らったような、という形容詞のお手本みたいだった。


 いちいちリアクションが大きいんだよな。この人。

 芸能人としての習性が抜けきっていない感じだ。

 だから割と最近まで活動していたのかな?


「検索してもいいですか? って聞いてくる人はよくいるけど、しなくていいか聞いてきたのは君が初めてね」


「ええと、つまり咲良社長は前歴を知られていることを前提でお話するのに慣れていらっしゃるのではないかと思って。でも僕は相手が詮索されたくないことを暴きたいとは思いません。目に入ることはあるかも知れませんが、幸い僕は東雲ひなという芸能人のことを知りませんし、このまま調べないでいるのも選択肢のひとつかな、と。いえ、根本的に知ってなくて申し訳ないですし、前提条件として調べておくべきだというのであれば、調べますけど」


 自分の気持ちを言語化するのは難しいけど、結局のところ伝えたいのは、僕が興味を持っているのは咲良社長の持つ影響力やコネであって、彼女の過去ではないということだ。


 だけどこれをそのまま言うのも感じが悪くない?


 と、思った結果、なんかものすごく回りくどくなってしまった。

 上手く伝わっているといいのだけれど。


 他人と関わることを意識するようになって思うのは、人に自分の気持ちを伝えることの難しさだ。

 言葉というのは実はとても不便なツールなのではないかと思い始めている。


「あっはは、変わった子だ。ニャロが気に入るわけだわ。私も好きよ。君みたいな子」


「あ、えっと、ありがとうございまいだっ!」


 メルの肘打ちが僕の脇腹に突き刺さっている。

 死んでないから手加減してくれてはいるんだろうけど、小回復魔術を練習で持続させてなかったら悶絶してたと思うよ。


 そんな僕らの様子を咲良社長はニヤニヤと見ている。

 僕がDVされてるのはそんなに面白いですかね?


「オリヴィアちゃんは?」


「ええと、私はその、まず、スマホ?の使い方もよく分からないので」


 僕のダメージについてはなかったこととして話が進んでいる。


「オリヴィアちゃんってタイムスリッパーか、なにか?」


 タイム……スリッパ? なんで急に履き物が?


 僕は首を傾げる。


「違います。ひーくんが調べないのなら、私も同じです」


「ひーくん?」


「ああ、僕のあだ名みたいなものです」


 僕は慌てて説明する。

 メルはどうしても僕をそう呼ぶのが直らないな。


「ふむ。ひーくんね。……ね、君の芸名、ヒロでいいんじゃないかしら? 本名はカズヤだから違うわよね?」


「ええ、ヒロ、ですか?」


「アルファベットで、H、E、R、Oで、Hero」


 咲良社長がそう言うとメルが目を輝かせた。


「それいいです! すごくいいです!」


「つまり英雄ってことですか? 名前に負けちゃいません? 僕が」


 流石にヒーローの器では無いと思うんだよな。


「聞いてる感じだと、オリヴィアちゃんは自然とひーくんって呼んじゃうみたいだし、ヒロなら誤魔化しが利くわ。どうせ苗字に『ひ』の字が入ってるんでしょ」


「それは、まあ、確かにそうなんですが」


 僕は乾いた喉を潤すためにアイスコーヒーをストローで吸い上げる。


 ……?


 いつの間に提供されてたこれ!!!!????

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― 新着の感想 ―
奈良にはニンジャが居るんだなぁ…
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