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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第7章 メルを配信者にしよう

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第239話 社長は事前に確かめて!

『思ったより早く着きそうなのだけど、現地でどこか時間を潰せるところはあるかしら?』


 Discordにそんな連絡が来たのは15時過ぎのことだった。


 いや、早すぎない?


 乗り換え案内のアプリを見る限り12時くらいには東京駅を出てそう。

 グループでチャットをしていたのは午前だけど、これ絶対会議を途中で抜け出してきてるよな。

 ついでに言うなら、多分着の身着のままで来ている。


『宿にチェックインしてきたらどうですか?』


 泊りの色々を買う時間も必要だろうし。


『分かりやすかったから奈良ホテルっていうところを予約したのだけど、駅から近いのかしら?』


 奈良の迎賓館やんけ!

 本当の迎賓館ではないけれど、皇族や国賓が奈良に宿泊する際に使われる由緒正しいホテルだ。

 お値段もそれ相応だったはず……。


 この人、絶対【奈良 ホテル】で検索したんだろうなあ。


『歩いて行くところじゃないですよ。近鉄奈良駅からタクシー使ってください』


 歩いて行くのも無理じゃないけど、あの入り口を徒歩で入っていくのは雰囲気が壊れるよ!

 入り口から建物見えないから、画像とか映像でしか知らないんだよな。奈良ホテル。1回泊まってみたいまである。


 というか、当日で取れるもんなのか。まあ、確かに今日は木曜日で宿泊客は少ないかも知れないけれども。


 あ、そうか、仕事で来るから経費で落ちるのか。

 経費強い。


『そうね。それなら間違いないわ。それで時間は大丈夫かしら?』


『大和西大寺駅から奈良駅は近いですし、ホテルも駅からそんなに遠くはないです』


『じゃあ歩いて行こうかしら』


『徒歩で入る作りじゃないんですよ。あのホテル』


 よく分かってない人が泊まっていい品格のホテルじゃないでしょ!!!


 まあ、奈良は行くところで泊まるところじゃないというのはよく言われる。

 観光客もほとんどが京都か大阪に宿を取って、奈良には昼間に観光だけして戻ってしまうので、奈良は宿泊施設自体が少ない。

 寺社仏閣に興味が無いと、奈良公園で野生の鹿見て満足なのが奈良だからなあ。


 そういう理由で奈良県民以外が奈良の宿泊施設に詳しくないのは仕方がないと思う。


 だけどさ。だけどさあ。そうならホテル日航奈良とかでいいじゃん。JR奈良駅直結だよ!!

 まあ、近鉄大和西大寺駅を指定してしまったからJR奈良駅は行きにくいか。


 奈良は近鉄に支配されているので、つい近鉄沿線でものを考えてしまう。


 なにせかつての都、奈良の象徴、平城宮跡の上を近鉄の線路が走ってるからね。

 世界遺産やぞ!!!!


『タクシーか、送迎バスを使ってください。荷物は無いんですか?』


『いつでもどこにでも行けるわよ。ビジネスバッグに入らないものは現地調達すればいいんだから。増えた荷物は郵送か、廃棄すればいいし、日本は便利よね。海外だとこうは行かないわ』


 お金持ってる人の発想!

 なんというか庶民とは全然思考回路が違うんだな。

 アーリアでは僕もお金持ちだけど、日本円はそれほどでもないから、こっちでその感覚はちょっと付いていけない。


『ちなみに今はどの辺りなんですか?』


『京都で乗り換えたところよ。なんだか座席が妙に広い特急が取れたからそれに乗ってるわ』


『それもしかして座席が窓のほうに斜め向いてません?』


『よく分かるわね』


 あをによしだ! 近鉄の特別料金が別途必要な観光特急!


 いや、観光特急で特別料金とは言うけれど、実は京都―大和西大寺間なら通常特急料金に追加わずか210円で、めちゃ広シートに座れちゃうので、時間さえあえば取るとめちゃくちゃコスパいいんだけど、いかんせん国内知名度が無いやつだ!


 何故かインバウンド客の間で有名で、乗客ほとんど外国人なのに、歴史を感じさせる日本人向け特急という仕様だから車内放送が日本語だけという、意味分からないことになってるものである。


 ちなみに僕は鉄オタではない。


『あっという間に大和西大寺に着きますよ。乗り換えて奈良駅方面に乗ってください。駅前で必要なものを買って、タクシーで移動がオススメです』


『ねえ、ついでに聞きたいのだけど』


『なんですか?』


『鹿がいるのって奈良駅から近いのかしら?』


『駅から出て東に行けばすぐに会えます。もし鹿せんべいを買って鹿に追いかけ回されたら、絶対に持ったまま逃げないでください。ばら撒いて両手を広げ、もう無いことをアピールしながらゆっくりと立ち去るのがオススメです。いいですか、あの鹿は野生です。野生の獣です。絶対ですよ』


 もう完全に観光気分じゃねーか!

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