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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第7章 メルを配信者にしよう

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第229話 僕はようやく君を見つける 12

 はい。全部話しました。

 もちろんキャラクターデータコンバートや、あっちの世界のことは話していないけれど、僕とメルの間にあった気持ちのすれ違いについては全部説明したと思う。


「で、今に至るという感じです」


「ん~~~~」


 流石のロージアさんも思案顔だ。

 背景のお花もちょっと萎れているように見える(幻覚)。


「カズヤさんは、今はメルさんのことをどう思っているのかしら? つまり本物の、存在する、女の子としてのメルさんのこと」


「それが問題であるのは分かっているつもりです。ただ僕は本当のメルのことを何も知らないんです。ずっと理想の女の子だと思ってきたので……」


 僕は知ろうとすらしてこなかったんではないだろうか。

 メルという女の子の上に、理想の女の子像を貼り付けて、その表層しか見てこなかったんじゃないか?

 それはとても失礼だし、自分勝手で、愚かな振る舞いだ。


「それもどうかしらね……」


 ロージアさんは難しい顔で呟く。

 それから肩を竦めて、苦笑した。


「これくらいは言ってもいいかしらね。カズヤさん。貴方が見てきたメルさんという女の子は確かに本物のメルさんとは違ったかも知れない。でも何もかもが違ったということもないんじゃないかしら? 貴方は今こう考えてはいない? 本物のメルさんは自分が理想としてきた女の子とは全く違う、かすりもしない女の子だと」


「違うんですか?」


「なんというか、エリスさんから聞いた話が今ようやく腑に落ちたわ。カズヤさんはダンジョンにいるときより、町にいるときのほうが危なっかしいわね」


 ロージアさんにも言ってたんかい!


「まずカズヤさんが一旦自分に言い聞かせなくてはいけないのは、メルさんは意図的にそうしていたわけじゃないってこと。貴方が一方的にメルさんを理想の女の子だとして崇めていた。そうよね?」


「そうだと思います」


「私もそう思う。だからね、メルさんはいつだって貴方に素の自分を見せていたはずなの。本当のメルさん自身を見せていた。演技をしたり、隠していたわけじゃないわ。カズヤさんが見てきたメルさんは、確かに本物のメルさんなのよ」


「じゃあ僕の知っているメルは」


「カズヤさん自身が自分にかけた魔法さえ解けば、そこにはちゃんと血の通った1人の女の子としてのメルさんがいるはずよ。さあ、思い出してみて。貴方が好きになった女の子は全部が全部カズヤさんが作り上げた幻影だったの?」


 ああ、ロージアさんはまるで魔法使いだ。

 いいや、本物の魔法使いだった。


 でも今かけられた魔法はスキルじゃない。

 人としての優しさだ。


「メルはちゃんとそこにいたんですね……」


「すれ違った部分はあったでしょうね。間違えたこともあるでしょう。もちろん失敗だってする。相手の表面的な部分しか見えてないなんて、人間関係ではよくあることよ。ただ相手に対してさらに踏み込んでいくのなら、その表層をちゃんと取り払って、中身を見ようとする必要があると私は思う。忘れがちだけど自分がそうであるように、他人もちゃんと複雑な存在なの」


「ロージアさんも」


「カズヤさんもね」


「あの、一応聞いておきたいんですけど、ロージアさんはメルのことをどんな風に思ってるんですか? その、それこそ表層的な印象の話でもいいんですけど」


「あの2人に聞いたから一応流れでって感じかしら。そうね、悪いけど私もメルさんが特別に変わったところのある子だとは思わないわね。とてもいい子だと思う。でも誰から見てもいい子してる子ってどうなのかしらね?」


「いい子だと思ってるのに印象はあまり良くないんでしょうか?」


「そういうわけではないのよ。ただちょっと思うのは、あんなに取り繕ってて、疲れないのかな? って。てっきり私はカズヤさんの前では思いっきり甘えてるのかな、って思ってたのだけど、聞いている感じそうでもないみたいだし、そこが心配かな」


「なんだかすみません。僕がしっかりしてなかったばっかりに」


「謝る相手が違うでしょ。カズヤくんがいま謝らないといけない相手は別にいるじゃないの」


「そうですね。でもニーナちゃんのところへも先に顔を出しておこうと思います。なんていうか他のメンバーには話を聞いたのにニーナちゃんだけすっ飛ばすと仲間はずれにしちゃったみたいに思われるかもしれないので」


「そういうところは気が利くのにね……」


 あ、はい。ごめんなさい。

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