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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第7章 メルを配信者にしよう

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第228話 僕はようやく君を見つける 11

 僕らのステータスに発現するスキルというものはゲームシステム的なものなので、比較的横並びの性能をしている場合がある。

 例えば火魔法、水魔法、風魔法、土魔法などの基本となる攻撃魔法は大体同じくらいの威力として発動する。

 するのだけど、どうも運営はその副次効果というものにはあまり気を払っていないように思える。


 例えば火魔法には延焼効果があり、相手の衣類などに着火する。

 顔付近を火で覆うと、相手は呼吸ができなくなる。

 火傷による追加効果が考慮されていない、などだ。


 よって魔法を持っていても、その使い方に習熟しなければ、より高い効果を発揮しない。


 創作物において弱いとか地味扱いされる土魔法だが、この世界ではかなり有用で、実際強い。

 攻撃魔法は重量を持つ石つぶてが相手を襲うもので、ダメージ調整のためかつぶては小さく、地味だ。

 これ自体に追加効果のようなものがないのが土魔法の印象を悪くしていると思うのだが、その本質は土操作だ。

 硬くて平たい地面を作ることができるというだけで、安定した足場の戦場を作り出すことができるし、よくあるように壁を迫り上げて防御に使うこともできる。

 修練を積んだ土魔法使いは、撤退時に自分たちの足下を平坦にして、通り過ぎるとギザギザのデコボコに変えるのだという。

 相手が空でも飛んでいない限りは逃げ切れる。

 これだけでもパーティに欲しい能力だよね。


 そしてロージアさんの持つ水魔法スキルは水の塊を標的にぶつけるというのが基本の攻撃魔法だ。

 当然水の塊は石のつぶてより脆く、当たったこと自体で与えられるダメージは少ない。

 だが同じダメージ量にしなければならない関係上、水魔法使いが生み出す攻撃魔法の水球はデカくて速い。

 同じダメージになるまで質量と速さを上げればいいだろう、という適当調整のせいだ。

 そしてその結果、水魔法使いの生み出せる水の量は膨大だ。


 つまり小柄な敵なら単純に押し流せるというほどに。


 ぶっちゃけ戦力を単純に数値化するのであれば、パーティ内でもぶっちぎりに強いのがロージアさんだ。

 シャノンさんとエリスさんで何匹かの魔物を攻撃している間、残りの何十体という魔物の足止めや押し流しができてしまう。


 ただ攻撃力という点においては、どうしても決定力に欠ける。

 水を相手の顔にまとわりつかせて窒息させるにしても、相手が大きく身動きすれば振り払われてしまうし、致命的な攻撃である対象の体液操作にしても直接触れて、相手の魔法抵抗を上回るという条件が付く。

 小さく弱い相手であればまとめて相手ができるけれど、大きくて強い敵相手になると邪魔くらいしかできないという感じだ。


「戦闘時に限ればそうかも知れませんね。ダンジョン内のような環境における生存を手助けもできると思います。でも水魔法使いに換えはいます。私より熟練の水魔法使いだってアーリアにはいるでしょう。でもカズヤさんと同じ事ができる人はアーリアに何人いますか?」


「多分、いないと思います」


 僕は正直に答えた。

 これは自意識過剰ではないはずだ。


「換えが利かない。それはその人の価値を跳ね上げます。カズヤさんはいま自分の金銭的価値と、またその特別さに気付きました。それでもまだ足りませんか?」


「理解はしたつもりです。でも感情が、なんというか、付いてこなくて」


「謙遜は美徳ですが、過ぎれば傲慢ですよ。おそらくそういうところが喧嘩の原因だったのでは?」


 僕がメルを神聖視していたのが喧嘩の原因だったのは間違いない。

 まあ、喧嘩というか振られたんだけど。


「……あの、僕にそれだけの価値があるとして、ですよ」


「ええ、どうぞ」


「より価値のある人間と一緒にいるというのは利益があるものですよね?」


「……」


 ロージアさんはニッコリとした顔のまま、動かなくなった。

 フリーズしちゃった?


「……カズヤさんは、メルさんにもそんな物言いを?」


「いえ、そうではないんですが……」


 僕に価値があるなら、どうしてメルは離れていってしまったんだろう?

 そう思ったのだ。


「客観的に見た価値と、その人と一緒にいる価値はまったく別物です。影響はありますが、むしろ逆に作用することもありますよ」


「逆に? 価値の無い人と一緒にいるほうが得をするようなことが?」


「まずその損得で考えるのを止めたほうがいいとは思いますけど、商人の性分なんでしょうかね? カズヤさんの考えに沿ってお答えするのであれば……」


 ロージアさんはそこで言葉を切って少しだけ考えた。


「自分より価値が低い相手といれば自尊心が満たされ、自分より価値のある相手といると劣等感を刺激される。そういうことはよくありますよね」


「ああ、そうですね」


 常に劣等感を抱き続けてきた僕としては納得しかない。

 自分より優秀な人と一緒にいると、常に自分が比較されているようで、とても辛いのだ。


「分かってきました。カズヤさんは自分に価値が無いようなことをメルさんに言ったんですね。それは怒られて当然だと思います。最低です」


 なんかロージアさんに最低って言われるとシュンとしちゃうな。

 実は僕とほとんど年は変わらないんだけど、お姉さん感がスゴイ。


「確かにそういう意味合いのことは言ったかもしれません。でもそれが2度と会わないというほどのことに思えなくて……」


「ええと、文脈の前後を聞いておかないと誤解をしてしまいそうですね。どういうことがあったのかをちゃんと聞いてもいいですか?」


「それは、なんというか、その」


 それって僕がメルのことを好きで、告白して振られたことまで全部ってことかな?

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