表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第7章 メルを配信者にしよう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

230/549

第227話 僕はようやく君を見つける 10

「お金、それは」


「違いませんよ。その人がいくら稼げるかというのはとても重要な評価基準です。アーリア住民のほとんどが銀貨で支払いを受けます。私の針子として1日の報酬をご存じですか?」


「銀貨で5枚くらいでしょうか?」


「4枚ですね。私という人間の1日の価値は銀貨4枚なんです」


「それは……」


 その言い方はあまりにも冒涜的だと思った。

 人の価値を金に換算するなんて。


「悪いことでしょうか? お金というのは何より平等に人の価値を浮き彫りにします。自分で見ても、他人が見ても、まったく同一の評価を下せる、とても大事な判断基準です。生きていくのに必要なお金が、どうして人の価値を決める基準として悪いのでしょう? きっとお金のほうが人の命より大事だ、と思っている人もいますよ。商人でもあるカズヤさんなら自分の値付けはすでに終えているものだと思っていました」


「僕の商品価値を金額で出す、ということですか」


「カズヤさん、貴方の1日をいくらで売りますか?」


 それはこう考えることもできるだろう。

 僕が自分で望まない用件で拘束されるとして、それによって発生する機会損失はいくらになるか。


 冒険者として考えるのであればロージアさんにも分かる。

 一応、ダンジョンで得た報酬はそれぞれの経費を引いてパーティ資金に入れた分以外は均等分配ということになっているからだ。

 そのロージアさんからの質問ということは、これは商人としての数値が問われているのだろう。


 鏡の取引は縮小させているけど、他の商品も運び続けている。

 現在の取引規模で1回の取引は金貨ではなく、主に白金貨が出てくる。

 白金貨は貴族や商人の大取引に使う貨幣で、一般には出てこないのだが、金貨だと運びきれないのでこうなっている。

 僕はそれをギルドの窓口にビクビクしながら持って行って、口座に入金し、受け取るときは金貨や銀貨に両替してもらったということにして引き出している。

 交換レートは時期によって異なるけど、今だと白金貨1枚が金貨220枚分くらいだったはずだ。それがじゃらんと5枚くらい出てくる。

 単純計算で金貨1100枚。とは言っても、仕入れにも時間をかけているし、日本円も使っている。この稼ぎを得るためにかかった時間や経費を考えるとある程度減算が必要だ。

 とは言っても仕入れ値は、日本で古物商にアーリア金貨を売ればいいわけで、ほぼゼロに近い。

 仕入れにかかるのも1日で済む。

 とは言え、この稼ぎは週に1回だから、という側面もある。


 ロージアさんの質問は僕の1日をいくらで売るか、という話だ。


 アーリアでは週という概念が無いから、1週間や7日での額に変更と言ってもロージアさんを混乱させるだけだろう。

 ここは素直に7で割るかな。


 7日で1100枚の金貨を僕は稼いでいる。

 だから日当にすれば150枚ちょいくらいかな?

 地味に暗算しにくい数字だな。


 じゃあ、僕の1日を金貨150枚で買えるのか、僕は売るのか、と言われると、うーん、その日によるとしか言い様がない。


「えっと、大体平均というか、均した数値でいいんですよね?」


「カズヤさんの感覚、思ったことで構いません。それで実際に買ったりするわけではありませんし」


「そうですね。状況もあるとは思うのですけど、空いている時間であれば1日金貨100枚くらいでしょうか。外せない用事のある日にどうしてもということであれば、1000枚くらいにはなるかも知れません」


 ロージアさんはクスッと笑った。


「いまカズヤさんは自分に値付けしたんですよ。自分の1日には最低でも金貨100枚の価値がある、と」


「まあ、確かにそういう側面もあるかもしれません」


「そういう話なんです。カズヤさんには1日に100枚の価値があります。これは最低価格です。カズヤさん自身が認めたことです。いいですか。私の針子としての価値は銀貨4枚です。私を1日拘束するのに銀貨4枚の価値だと思われているわけですし、私自身も納得してこの仕事をしています。もちろん今の私にもっと価値はあるんでしょう。他のパーティからも誘われていますし、毎日ダンジョンに入るようなパーティに参加したほうが稼げる総額は上がるに違いありません」


 初耳だ。

 いや、ホント初耳だよ!!


「あの、今ロージアさんに抜けられたら!」


「ああ、心配をかけさせてしまって申し訳ありません。ここまで投資していただいたのに、不義理な真似はしませんよ。少なくともメルさんとカズヤさんが双方合意でパーティの解散とならない限りは」


 良かった。


「良かったぁ……」


 ロージアさんは目を瞬いて、僕を見つめる。


「正直な話をすれば、パーティ内では私が一番価値が低いと思っていましたけれども、そうやって必要とされるのは嬉しいものですね」


「それを言うなら僕のほうが」


「総合的な話です。カズヤさんはダンジョンの外でも金貨100枚、私は銀貨4枚です。そういうことも含めた話です」


「ロージアさんにはとても助けられています。生命線と言っても過言じゃない。水魔法は、ほとんどの人が湧水の魔術を使えるせいで過小評価されがちですが、僕はそう思っていません。湧水の魔術はせいぜい自分の喉を潤せる程度ですが、今のロージアさんは小型の相手なら押し流せるくらいの水流を生み出せるじゃないですか。大型の相手でも足止めくらいはできるでしょう?」


 いや、マジで強ない?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ