第224話 僕はようやく君を見つける 7
「僕については分かりました。考えてみます。それでメルについてなんですが」
「メルについてならお前のほうが詳しいだろ。何が聞きてーんだ?」
「実はそれがおかしいな、と思って。確かお2人ともアーリアの出身ですよね?」
「そうだぜ。他所の町に行ったこともあるが、基本はアーリアだな」
「僕はアーリアはそんなに長くありませんし、ずっと住んでいるわけでもありません。それでもすれ違う人ですら見覚えがある人ばかりです。名前は知らないですけど、毎日この時間にここを通ってるな、とか、そういうことは覚えます」
「ああ、あるな。そういうの」
「僕の知るメルであれば、お2人にもっと認知されてていいはずなんです。アーリアの門番たちと仲が良くて、通るときに挨拶だけして検査もなにもされませんし、酒場でも人気者でした。彼女は行く先々で記憶されています。だからお2人がメルのことを知らなかった、というのが不思議なんですよね」
「そんな不思議なことか?」
「不思議だと思わないことが不思議です。なぜ不思議じゃないんです?」
「なぜ、って言われてもな……」
「そんなもんだよな」
シャノンさんとエリスさんが周りの客に水を向けるが、他の冒険者たちもピンと来ていないらしい。
「アーリアは都市だし、知らないヤツがいたってちっともおかしくないだろ」
「それは……、そうかもしれませんが」
僕の思う都市という言葉とアーリアは一致しないけど、こっちの世界ではアーリアは栄えている方なのだろう。
まあ実際、僕が日本で住んでいる地域よりは都市部だ。
あっちが田舎なんだけどさ。
「まあ、お前と違ってメルは普通だしな。お前のほうが有名人だと思うぜ」
「普通?」
ニャロさんも言っていた。
あの子は普通だ、と。
僕が特別で、メルは普通。
それが外から見た世界なのか?
僕は足下が崩れ落ちたような感覚を味わう。
椅子に座っていなければ立っていられなかっただろう。
「ダンジョンで両親を亡くした子どもなんてわんさといる。聖女ギルドでお世話になって、いずれ自分の生き方を見つける。親の跡を継いで冒険者になろうとするヤツも少なくない。まあ、普通は荷物持ちから始めて、大体は冒険者になる前に死ぬ。だからといってそうしないヤツだって多い。他の職で金を貯めてから冒険者って堅実なタイプだな。メルが他のヤツと違ったのは、お前と出会ったことだけだ」
「彼女の人柄は? 戦う力は? あの見た目は?」
「どれも平均より良いけどな、飛び抜けて良いというほどでもない。なんというか、メルは平たいんだよ。さっきアタシはお前に特別を叩いて平たくするなみたいなことを言ったと思うけど、メルは叩くところがねーんだ。アイツは最初から平たいんだよ」
「そこが逆に不気味でもあったけど、20層で取り乱すのを見て腑に落ちた。あいつは必死に取り繕ってるだけの普通の子どもだ。大人を観察して、彼らに気に入られるために外面を作った、どこにでもいる、ちょっとだけ他の子どもより早く大人にならなければならなかっただけの、普通の子どもだな」
「もちろんアタシらがこの短期間に抱いた印象でしかない。付き合いはお前のほうが長いんだし、お前にしか見せない姿だってあるだろう。単にアタシらが背伸びした子どもだな、と感じただけで、お前はお前の感想があっていいだろ」
「人間関係なんてそんなもんだ。特別な人間も、平凡な人間もいるけどな、それがお互いの人間関係を決めるわけじゃない。特別なヤツが特別なヤツとしか関わらないなんてことないし、世界に1人きりのとびっきり特別なヤツにとって、どこにでもいる平凡なヤツが特別だったりするんだ。平凡か、特別かなんて、他人の目から見た評価でしかない。出会って関わりを持てば、誰だって特別な誰かになるんだ。そうだろ。カズヤ。こいつなんてどこにでもいる、どころか性格に難がある女戦士だけど、他の誰かと交換しても気付かないなんてことがあるか?」
「自己紹介か?」
「ああん? やるか?」
正直、この2人が中身入れ替わってても気付かない自信あるなあ。




