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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第7章 メルを配信者にしよう

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第215話 ちゃんと話をしよう 2

「それじゃ私の話からするね」


 メルはぽすんとベッドに腰掛けて、じっと僕を見つめる。


「私が何故ひーくんを支援するのか」


 どくんと不安で心臓が跳ねる。

 そうか、ただこれを聞くだけで不安になるほど、僕はメルの気持ちから逃げ続けていたんだ。


「支援者、って言い続けるのもなんだか変だけど、つまりひーくんを援助しようってなったタイミングは今のパーティメンバーが揃ったころだったかな」


 それは僕が思っていたよりもずっと遅い。

 メルは一番最初からまるで支援者のように僕のことを支えてくれていたからだ。


「ひーくんが私のためにお金も時間もかけてくれている。ううん、私のためにそうしてくれる人は他にもいると思う。だけどひーくんは私がしたい、なんの意味もないことに、すべてを費やしてくれた。だからひーくんの力になりたいと思った。そんな感じ」


「じゃあそれ以前はなんだったの?」


「あはは、本当のことを言うと最初は拾ってきた小動物の世話をしてるような気持ちだったね」


「……そりゃそうかあ」


 僕が金を稼ぎ始めるまでは、僕の存在はメルにとって保護する対象でしかなかったということだ。

 当然のことだと思う。

 レベル40の今では同レベル帯の人と変わらない値だけど、当時の僕は他人よりずっとステータスが低かった。


「ごめんね。やっぱりこういうことを知るのは嫌かと思ってずっと言わなかったんだ」


「気を遣わせてしまっていたんだね。こちらこそごめん。それとありがとう。メルのお陰で僕は今こうしていられる」


「どうしたしまして。さあ、ひーくんの番だよ」


「そう、だね。……僕の場合はもしかしたら最初から、だった」


「最初って、東の森で倒れてた時?」


「そう、目が覚めて、メルがいて、その時から」


 僕は君に恋をしてしまったから。


 だけどそれを言葉にするには僕には勇気が足りていなかった。


「そう言えばひーくんって最初から私の言うことに、弱気なことは言っても、絶対にやり遂げようとはしてくれてたね」


「はは、以前の僕なら考えられないことだよ。何でもステータスの低さを理由にして逃げてたから。鍛えたら強くなる。勉強したら結果が出る。考えたこともなかった」


「じゃあ、尚のことどうしてあんなに頑張れたの? 正直言うとね、製材所は初日で辞めちゃうかなって思ってた。あそこは賃金の割りにはキツいことで有名だし」


 それはもっと早く知りたかったなあ。


「当時の僕みたいな人間でも、できるギリギリまで頑張ればあそこの人たちは受け入れてくれたからかも。初日なんて仕事量が賃金に見合うようなものではなかったよ」


「薪作りはアーリアの冬の支えだから領主様から支援金が入っているんだけど、それでもできた薪の値段も定められているから、どうしても賃金が低くなっちゃうんだ」


「ああ、なるほど」


 生活必需物資である薪の値段を自由にしてしまうと、利益を乗せるために値が上がってしまい、生活が苦しい人が冬を越せなくなってしまうということか。


「じゃあパンや風呂の値段なんかも決まってるのかな?」


「そうだね。洗濯もだよ」


「その割には僕らはパン食が少なかったような」


「パンはねえ。日本のと違ってそのまま食べると美味しくないんだよね」


「そう言えば黒パンだった」


 あれって堅い上に美味しくないんだよね。

 雑味が強いというか、食べ慣れたらそうでもないのかなって思ってたけど、アーリア人のメルでもダメなんだ。


「調味料が家にあればパンのほうが安く済むんだけど、宿屋暮らしだと荷物が増やせないから、どうしても外食になっちゃうよね」


「人頭税を払っていても定住者でなければ恩恵が受けられないようにかな」


「そこまでは分からないけど、屋台ってあんまり高くすると人がこないから、パンの値段固定ってそれほど恩恵は無いかな」


「ああ、調理後って長持ちしないから、値段上げて売れ残っても困るもんなあ」


「ねえ、話が逸れてない? ひーくんが最初から私の支援者だったのは分かったけど、理由がわかんないよ。なんで最初から支援者だったの?」


 うっ、自覚は無かったけど、深いところまで言いたくなかったから、つい他の話題に持って行ってしまっていたかも知れない。


 伝えるべきか、伝えるべきでないか、それが問題だ。

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