第201話 父さんから話を聞こう
食事の後、皆がソファでテレビを見ながらまったりしている中、僕はノートパソコンと向き合っていた。
できない、と言うのはもう止めだ。
少なくとも挑戦をする前に諦めたくはない。
サムネの作成も、画作りも、可能かつ必要な範囲で人に頼りつつ、自分のスキルを伸ばしていきたい。
「ねえ、母さん。知り合いに人の目を引くデザインとか、動画の専門家とかいない?」
「デザイナーさんとか、カメラマンみたいな感じ?」
「あー、カメラマンというよりは動画の監督かも」
「うーん、会社にはデザイナーさんもいるけど、個人的に親交があるわけでもないしねえ」
部署も違うし、と母さん。
まあ、そうだよね。
そんな簡単に見つかるとは思っていない。
やっぱり動画を作ってる人とかに直接聞いてみるしかないか?
無謀だと思うが、やる前に無理とは言えなくなったので、これも選択肢に入ってくる。
Youtubeの画面を開いて、サムネを見ていく。
僕の目を引くサムネもあるけど、再生数が必ずいいというわけではなかった。
うーん、自分の感性を疑うべきだな。
つまり僕がいいと思ったからといって、大衆がいいと思っているとは限らない。
特にYoutubeやTikTokみたいなオススメが画面を埋め尽くすようなタイプのサイトを見ていると、エコーチェンバーを起こして、自分のお気に入りの動画ジャンルが、世間でも大人気なんだと誤認するのはよくあることだ。
というわけでホーム画面ではなく、人気ランキング的なものを見ていこう。
芸能、お笑い、バラエティ、人気アーティストの音楽、うーん、馴染みの無いものばかりが並んでいるなあ。
こちらが世間的によく見られている動画なのだから、参考にするのはこっちのほうだ。
とりあえず求めているのはサムネなので、画面をざーっとスクロールしていって、傾向をエクセルに打ち込んでいった。
こういうのも地味に感覚と実測値が異なるものだ。
実写にせよ、イラストにせよ、人が大きく映っているサムネの割合がトップ。
全身が映るほどに引いたサムネはあまりない。
でもダンス動画だから、サムネも全身を出したいんだよな。
とはいえ、顔面アップを使ってメルの可愛さで視聴者を釣りたい気持ちもある。
割合は多くないとは言え、カメラの位置を高く、あるいは低くして、俯瞰またはあおりで撮るというのはどうだろうか?
あおりはちょっとなんというか足が見えすぎていかがわしい感じがするので無しとして、俯瞰かな。
調べてみると俯瞰での撮影は足が短く見えやすいとかあったけど、メルのスタイルなら大丈夫だろ。(慢心)
参考画像を見てるけど、魚眼レンズで俯瞰撮影した写真がなんかいい。
こういう写真から構図を利用するのはありなんだろうか?
しかしこうしてると本格的なカメラが欲しくなってくるな。
流石に経済状況が許さないけど。
一応、魚眼レンズっぽく撮れるアプリがあるのか。
まあ詳しい人が見れば違いがあるんだろうけど、僕の目では違いは分からない。
「おう、やってるな」
顔を上げるとスーツ姿の父さんがいた。
「おかえり」
「着替えてくるから、昼の話をしよう」
父さんは自分の部屋に引っ込み、母さんが食事を温めなおす。
部屋着に着替えた父さんが戻ってきて、キッチンで自分の夕食を受け取ってテーブルに着いた。
「結論から先に言おう。音源の著作権は気にするな」
「え? でも色々と問題にならない?」
「そうだな。法的には完全にアウトだ。訴えられたら負ける」
そう言って父さんは夕食に手を付け始める。
こんな話してて飯が喉を通るの凄いな。
「そうなったときに失うものが多すぎない? アカウントは父さんのものだから、子どもがしたことって言い訳もできないし」
「ん~、ちょっと話は変わるが、去年、お前がダンジョンで行方不明になったとき、まるで世界が終わったようだった。ダンジョンでの未帰還、行方不明から助かった例はほとんど無いからな」
「その節は本当に――」
「いや、責めてるんじゃない。俺たちは反省しているんだ。お前たちとちゃんと向き合っていなかったんじゃないかって。結果がどうだったとかそういうことは関係なく、俺たち親子には問題があった」
「でも、なんというか、悪く扱われていたのは僕自身の問題で」
「それだ。まさしくそれなんだ。和也。確かに親子でもそれぞれは違う人格を持った個だ。それは尊重しなければならない。だけどな、子どもの問題は親も一緒に背負うものなんだよ。それは親の責任であり、そして権利なんだ」
「箸で人を指差さない」
母さんのチョップが父さんの頭に入った。
うーん、良いこと言ってる風なんだけど、締まんないなあ。




