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第2話 荷物持ちでしかない

 週末になったが檜山たちから逃れることはできない。


 僕は檜山たちに呼び出されて橿原かしはらダンジョンの第2層にいた。もちろん戦闘要員として呼び出されたわけではない。ただの荷物持ちだ。


 ゲーム化によって世界中に発生したダンジョンは、放置しておくと第1層のモンスターが外に溢れ出してしまう、ということもあって政府が探索を一般市民にも推奨している。


 自衛のために銃刀法も改正され、一般市民でも刃物や銃器を携帯しているのが当たり前なのが現代だ。


 もちろん檜山たちも刃物で武装している。


 そしてもちろん僕は武器を持たされていない。

 大きめのリュックサックだけが僕の装備品だ。

 ステータスの劣る者が運び屋(ポーター)をやるのは一般的なことなので、入り口で何か言われることも特に無かった。


「おっしゃ! レベルが上がった!」


 レッサーゴブリンに止めを刺した久瀬くぜがガッツポーズで報告する。

 このクソゲーはレベル=強さではないが、レベルは確実に強さを底上げする。

 経験値は可視化されていないが、モンスターと戦うことでレベルが上がるのは間違いない。


 僕が戦わされないのも、戦闘に使えないほど弱いということもあるだろうが、経験値を与えてレベルを上げさせたくないという檜山たちの考えがあるのだろう。でなければ一番前で肉盾でもやらされているはずだ。


 僕はレッサーゴブリンの死体が黒い靄になって消えていった後に残された魔石を拾い、リュックサックに入れた。


 パーティには入れてもらっていないものの、一応こうして檜山たちの運び屋をやっているだけでも経験値は取得できるようで、僕のレベルはモンスターと戦った経験の無いという同級生よりは高い。それでもなおステータスは彼らの半分くらいだけれども。


「俺らもう2層は余裕っしょ」


「3層行ってもいいんじゃね? ヤバそうなら2層に戻ればいいんだし」


 檜山たちの言葉には十分な説得力がある。第2層で檜山たちの相手になるようなモンスターはいない。相田の回復魔法もまだ一度も使用されていないくらいだ。


「でも3層には4層のモンスターがいることもあるし……」


 基本的に各層で出てくるモンスターは決まっているが、間引きが足りないと1層先の階層のモンスターが溢れ出してくることもある。探索者はそれを踏まえて安全マージンを取るものだ。


「あぁ? レッサーゴブリン以下のお前が意見を言えるとでも思ってんの?」


 そう言われると返す言葉が無い。スモールスライムならともかく、レッサーゴブリンと戦えと言われても御免だ。武器を貸してくれるというのならともかく、素手で第2層のモンスターに立ち向かう気にはなれない。


 意気揚々と第3層へのポータルに向けて歩き出した檜山たちの後ろを僕は追いかけた。

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