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第189話 条件に応えよう

「まぁ、柊っちには最初からそんな期待してないし? 安心していいよー! で、こっちが妹ちゃんで、そっちがあの子?」


 今村さんがメルに近寄ってキャップの下から顔を覗き込む。


「やばっ!ビジュ強すぎじゃん!」


「うちらレベルじゃ褒めるの追いつかないって感じ?」


「えと、こんにちは」


 ぐいぐい来る2人組にちょっと引いてるっぽいメルが挨拶する。

 まあ、この2人も見た目、服装込みで、なんというか強いからね。

 アーリアでは絶対ありえない服装なので、メルが引くのも仕方がない。


「やっほー!今村恵だよー!今村でも恵でも、好きに呼んじゃってOK!」


「うちは永井沙喜。呼び方はなんでもアリだから、好きに呼んでいいよー」


「メルシアです。皆にはメルって呼ばれてます」


 流石のメルもこの2人の勢いには負けたのか、敬語になっている。


「やっぱ外人さんだよね! 日本語めっちゃ上手~!」


「とりま、ここじゃアレだし、カラオケ行こーか」


 外人という言葉はいい意味で使われないこともあるけど、この2人は外国人という言い方が長いから略してるだけみたいだ。

 そういう悪意のあるタイプではない。


「カラオケは割高じゃない?」


「これからする話、他の人に聞かれてもいいワケ? って話じゃん!」


「カラオケでお願いします」


「ヤバいんだけど、柊っち~、もっと気ぃつけなよ」


 そして見た目に反して気が使えるのだ。

 さすがクラスカーストトップ。


 駅前から程近くにあるカラオケ屋に入った僕らは、男性店員から微妙な視線を受けながら部屋に入った。

 確かになんで冴えない僕がギャルやらなんやら女の子ばかり4人とカラオケ来てんだ?って話ですよね。わかる~。


「とりあえず、メルちゃん、メルさん? 帽子取って顔見せてよ~」


「うっわ、めっちゃ可愛い~!この生き物なんなの、飾りたすぎるんだけど!」


 繰り返して言うが悪意があるわけではないはずだ。


「お2人はひーくんと同い年なんですか?」


「そだよー、クラスメイトだよ。クラスメイトって分かる?」


「馬っ鹿じゃん、クラスメイトって英語だし!分かるに決まってんじゃん!」


 なんで英語分かるって前提なんだろう?

 いや、メルは地球の言語全部いけるんだけど。

 そもそも日本語で会話してるんだし、日本語通じるって分かるだろうに。


「じゃあ私は年下です。よろしくお願いします。恵さん、沙喜さん」


「え? そうだったの?」


 驚いたのは水琴だ。

 そういやメルの年を教えてなかった。

 というか、今でも教えたくないな。


「じゃあ、メルちゃんっていくつなの~?」


「15です」


「えー!全然見えないんだけど!やっぱ外人さんって大人っぽくない?」


「同い年じゃん!」


 水琴がすんごい目で僕を睨み付けてくる。

 なんで教えてくれなかったの+このロリコン!って辺りだろうなあ。


「へ~、妹ちゃんも15才なんだ。お名前は?」


「水琴です!」


「おっけー、水琴ちゃんもよろしくね」


 一通り自己紹介が終わったところで、本題に入ろうとしたが、ギャル2人組がメルのメイクについて聞きまくっていて止まらない。

 まあ、メルの美容品はこの前イオンモールで買ったばかりだから、幸い日本で入手できるものばかりだ。


 メルがややしどろもどろになるのを水琴がフォローしてなんとかという感じ。

 僕はこれっぽっちも分かりません。


「で、メルちゃんが動画配信するんだよね?」


 突然話が本筋に入った。

 僕は背筋を伸ばして対応する。


「そう。ちょっと理由があってね。バズりを狙わないといけなくなったんだ」


「ふーん、事情は聞かないけど、それで柊っちの私生活をぐちゃぐちゃにされたくないってことね」


「端的に言うとそんな感じ」


「じゃあ、条件としては~」


 ええ? こうしてメルを連れてくることが条件じゃなかったの?


「あたしたちも動画に登場させてほしいな!」


 そう来たか。これはもちろん難しい条件だ。


「そこ関わりを見せると、バズった場合に今村さんたちに迷惑がかかるかも知れないよ」


「むしろあたしら有名になりたいし、有名税ってやつでしょ? 仕方ないよね~」


 バズりたい人がここにもいた。


「例えばどんな感じで?」


「それを言うなら、どんな動画を配信するのか教えてよ!」


「あー、今撮ってあるのはダンスだけだね。歌とか、あとは観光地とかで外国人の方に話しかける企画とか考えてるけど」


「とりあえず、それ見して」


「オーケー」


 僕はスマホでメルのダンス映像を再生する。スマホをテーブルの上に置いて誰でも見られるようにした。


「え?ヤバい、これどんだけ練習したの?!」


「30分くらい?」


「は?」


「いや、分かる。僕らもそう思ってる。でも事実なんだ」


「音、ちょっとヤバくない?」


 このヤバいは悪いほうの意味だ。

 まあ、水琴のスマホから流れてる音源を僕のスマホが取り込んだものだしね。


「音は後から差し替えるつもり。問題はダンスにぴったり合わせられるかかな」


「ふむふむ。で、どんな名前で活動すんの?」


「今は柊メルって名前を予定してます」


 メルがそう答えた瞬間、今村さんと永井さんは眉と眉の間に峡谷のような深いシワを作った。


「ええ?あんたたち、身バレ避けるために相談してきてんだよね?」


「うん」


「で、活動名が柊メル?」


 今村さんが立ち上がると、永井さんが流れるようにマイクのスイッチを入れて手渡した。


「どっちなんじゃい!!!」


 絶叫だった。

誰もが思ったであろうことを突っ込んでくれる2人であった

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