第188話 待ち合わせ場所に行こう
『条件って?』
僕は今村さんに返信する。
『柊っちは今どこ? あの子と一緒?』
『家だよ。一緒にいるけど』
『八木駅の改札出たところね。14時で』
時計を見ると13時を回ったところだ。
間に合うかは電車の時間次第な感じ。
多分今すぐ出れば間に合うけど、普段電車に乗らないから時刻表はうろ覚えなんだよね。
『15時。妹も連れてっていい? 一応関わってるから』
『(OKのスタンプ)』
「どうなったの?」
水琴が聞いてくる。
「八木駅の改札出たところに来いって。水琴も来てくれ」
「ええー、仕方ないなあ。着替えるから30分待って」
「了解」
そうは言ったものの、僕も着替えなければならない。
メルも着替えたほうがいいな。
この服は目立ちすぎる。
「メルも変装モードで着替えてくれる?」
「うん。分かった」
とは言え、メルの着替えはアーリアのメルの宿屋だ。
僕はメルと手を繋いでキャラクターデータコンバートする。
パーティを組むよりこっちのほうが早いからだ。
アーリアの僕の部屋からメルを見送って、僕自身は日本へ移動。
手早く着替える。
藍色のカーゴパンツに、上は白Tでいいか。
作業員っぽいか? まあいいか。
むしろ髪のセットのほうが時間がかかる。
自分の支度を終えてアーリアに移動したが、メルはまだ戻ってきていなかった。
少し待つと、変装スタイルのメルがやってくる。
縦に皺のできた淡いオレンジ色のキャミソールの上から白のサマーカーディガン、ボトムは白いワイドパンツ。黒のキャップ帽を深めに被って一応顔を隠している。
ちょっとストリートっぽい感じ。
アーリアの風景には合わないが、日本的ではあるだろう。たぶん。
僕のセンスだから自信は無いけど。
「似合ってるよ」
「嬉しいけど、それって変装できてるのかなあ?」
「大丈夫だと思う。……たぶん」
メルの可愛さは服装では隠し切れないから仕方ない。
野暮ったい格好させたくもないし。
メルを連れて日本に戻ってくると水琴も準備を終えていた。
如何にも女子中学生の私服って感じの服装(適当)だ。
「よし、行こうか」
「なんだろう。分からないけどなんか不当な扱いを受けてる気がする」
「気のせい気のせい」
僕らは家を出て駅まで徒歩で向かう。
今日も青天で直射日光が僕らを焼くので、水琴とメルは日傘装備だ。
僕は、服装に合わないのでパス。
日傘男子肯定派だけど、服装との兼ね合いはどうしてもある。
日差しを我慢している僕を気遣ってか、メルがぐいっと日傘を持ち上げて僕を入れてくれようとするので、日傘を取った。
メルができるだけ陰に入るように日傘を持つ。
「え、暑い? 涼しい? なにこの感情」
水琴がなんか言ってるが無視しよう。
無事に駅に着くと、時刻表は記憶通りだった。
これなら15時前には到着する。
お昼過ぎということもあってか電車は比較的空いていて涼しい。
弱冷車ってなんのためにあるんだ?
まあ、いいか。
15時の10分前くらいに近鉄大和八木駅に到着する。
京都橿原路線と、大阪名古屋路線が交わる奈良では主要な乗り換え駅のひとつだけど、改札は1か所で人もそんなにいないので待ち合わせには案外便利だ。
まあ、駅前がそんなに賑わってもないということでもあるんだけど。
改札から出る前から今村さんの姿は見えていた。
予想はしていたけど永井さんも一緒だ。
小野さんは案外一緒に行動してないんだな。
まあ、ギャル系2人と、清楚系の小野さんではお出かけ先が異なるのかも知れない。
「お待たせ。早いね」
「おっす。柊っちじゃん。がっことイメージ違うね」
「確かに。良い感じ」
「そうかな。ありがとう」
「……」
「……」
「……褒めろや!」
「そういうとこだぞ。柊っち」
理不尽、でもないか。
モテる人って多分そういう褒め言葉がさらっと出てくるのだろう。
今村さんはレースのついたキャミソールに、デニムのショートパンツ。透けるほど薄いぶかぶかのリネンシャツを肩から引っかけている。厚底のサンダルに、アンクレットがキラリと光る。肩から大きめのバッグを提げている。
だいじょうぶ? そのトップス下着じゃない?
永井さんはスケスケのアウターの下はパステルなイエローのチューブトップ、タイトなミニスカートはビビッドイエローだ。厚底のスニーカーに、チェック柄の女子っぽい小さなバッグ。
スケスケアウターのせいで、露出はしてないのに肌色面積が大きくて目に毒すぎる。
2人ともアーリアで歩いていたら捕まるレベルである。
というか、なんでそろってアウタースケスケなん?
似合ってはいる。似合ってはいるが、どうやって褒めるんだ、これ?
「2人ともギャルって感じで似合ってるよ……」
「赤点だわー」
「ダメ寄りのダメ」
やっぱり理不尽だ。