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第182話 撮影しよう

 僕たちはアーリアにある僕の借りている部屋へとキャラクターデータコンバートする。

 時間はまだお昼前だが、アーリアの朝は早い。

 部屋の中にいても町からは活気を感じる。


 水琴はさっそく窓に飛びついて外の景色をしげしげと眺めた。


「ふおおおおお、これが異世界!」


 まあ、夜の異世界酒場はかなり特殊な環境だからな。

 こっちが平常運転だ。


「いこくじょーちょだ」


 覚えたてかな?


「ここで踊ると周りの部屋に迷惑だし、せっかくだから外で撮りたいな」


 どうせ誰もアーリアという町には辿り着けないのだ。逆に思いっきり情報過多にしてやろう。


「だったら広場かなあ。街路だと迷惑かけそうだし」


「この時間だったら子どもが遊んでるくらいか。でも……」


 アーリアには娯楽があんまり無いから、吟遊詩人とかは庶民の貴重な娯楽だし、町中で誰かが楽器を鳴らせば、勝手に歌を合わせて人々が踊り出す。

 下手な時間にダンスの撮影なんか始めようものなら、大騒ぎだ。


 そもそもどこから音が鳴ってるのかと人々が集まってくるのが予想できる。


「人が集まってきたら面倒だな。占有できる良い場所があればいいけど」


「うーん、人がいないところとなると治安があんまりね」


「そうだよね」


 貸しスタジオみたいなところがあればいいんだけど、アーリアにはそういう場所は無いだろうな。


「いっそ一軒家を借りちゃうか」


 短期契約ならそんなにお金もかからないだろうし、現状アーリアのお金には困っていない。幸い賃貸は月契約のようだし、家族が来ているという名目もある。


「不動産屋のところに、いや、水琴の身分証明書が無いな。下手にバレると捕まるか」


「えっ」


「あっ」


 今から入市許可証をもらいに行くのもおかしいだろう。水琴はすでにアーリアの酒場に顔を出している。

 いや、そんな細かいことに気がつく人はいないか。


 アーリアでの人の管理はかなり大雑把だからな。


「水琴はいったん日本に戻して、町の外でもう一回こっちに連れてきて、門から入って入市許可証、市民登録の流れがいいか」


「そうだね。それなら外で撮影もしちゃえるんじゃない?」


「確かに門から出てすぐに水琴連れて戻ってくるのも不自然か」


 異国情緒溢れる家を背景にしたかった感もあるが、アーリアの大自然を背景にというのも趣がある。


 というわけで、水琴を日本の家においてアーリアの門から外へ。

 少し歩いたところにあるちょうど収穫時期を迎えた黄金色の小麦畑が良さそうだ。

 農家の方に許可を得てから、水琴を連れてきて、いざ撮影タイムに入る。


 水琴が音源を再生し、メルが踊り、僕が撮影する。


 念のため2回撮影したが、動画をチェックした水琴からノーが出た。


「メルさんは凄いんだけど、お兄ちゃんの服がダサい」


 それは体格や体型に合ってないからじゃないかな?

 でないと水琴、お前、母さんのセンスを否定したことになるぞ。


「たはは」


 メルは笑って否定も肯定もしなかった。


「ちょっと着替えてくるねー」


 そう言ってメルはダッシュでこの場を去って行く。

 レベル41のガチダッシュだ。

 世界で金が狙える。


 ちょっとして戻ってきたメルは、僕が最初に買ってあげたあの服だった。


「メルさん、ナイス! そっか。バズった時の服装なら、みんなメルさんがあの時の美少女だって気付きやすい!」


「ええと、単にお披露目するならこの服がいいかなって思っただけなんだ」


 走ってきたのに汗一つかいていないメルは、そのまま撮影に臨み、これまでで一番キレのあるダンスを踊って見せた。


「2回目は必要ないか」


「そうだね。どっちがいいかで訳が分かんなくなっちゃいそう。変に弄ったりしないでこのままがいいかも」


「私もイメージ通りに踊れたからいいよ」


 全員の同意が取れたので、僕らのチャンネルでの最初の動画はこの踊ってみたに決まった。

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